| 顔良し、スポーツはオッケー。勉強も、まあ..オッケー。 大抵のことは苦労せずにできてしまうのは、昔からだった。 だから、世の中が詰まらない。 「生意気ねー!」 世の中が詰まらないと思うと必ず再生される明るいこの声。 ちゃん。 2番目の姉ちゃんの幼馴染で、オレも小さいころはよく遊んでもらった。 オレを面倒くさがっていた姉ちゃんとは対照的に、結構遊んでもらった記憶がある。 姉ちゃんとめちゃくちゃ仲が良くて、高校に一緒に進学して、彼女はその年のうちに学校を辞めた。 家が会社をしていたらしいけど、その会社が倒産したらしい。 不況とかそう言うのではなく、お父さんが友人の借金の保証人になっていたそうだ。そして、その友人がトンズラした。 ちゃんちの会社は、堅実で手堅く、とても信頼されていた。 そのはずだった。 彼女のお父さんが友達の借金を背負ったと聞くや否や、債権者は家財道具もまとめて奪い取り、彼女たちは住む家を失くしたと聞く。 あっという間の転落劇として近所では口さがない大人たちの格好の噂の的になり、そして、彼女たちはある日いなくなった。 所謂夜逃げみたいなものだと思う。 それを知った姉ちゃんは彼女のことを口悪く言った。 今思えばさみしさから来た言葉かもしれないけど、でも、当時のオレはむかついて姉ちゃんにたてついて、いじめられた。 凄く仲良くて、凄く優しくて、オレはたぶん、彼女が初恋の人なんだと思う。 初恋は実らないってよく聞くけど、こんな終わり方は酷いって神様への文句が胸に浮かんでいた。 まあ、実らない恋ということなら、確かに彼女は適任だっただろうな... 彼女が近所から姿を消して、2年後、オレは中学生になり、姉ちゃんは高校3年になっていた。 中学に上がる前に姉ちゃんがどこかの芸能事務所にオレの履歴書を送ったらしい。 そこから連絡が入って、オレはどうしようかと考えた。 何をやってもきっと何も楽しくない。 だったら、何をやってもいいか。 適当にこなしてバイト代をもらえばそれでいい。 学校は、芸能活動ならバイトは禁止ではないということもわかったし、スタジオに向かった。 想像通り、オレはそこでも卒なくこなしていた。 だから、やっぱり世界が詰まらなくて。 いつかオレが心から楽しい、打ち込める何かにであるなんてその時は全く思ってもみなかった。 中学2年になって、オレはバスケに出会った。 運命の出会いと言ってもいいと思う。 初めは、バスケットボールがぶつかってきて、青峰っちがそれを取りに来て。 それが、オレがバスケには手を出したことがないということに気づいたきっかけ。 ひょっこり覗いた体育館で凄いプレイを目の当たりにした。 青峰っちのプレイを見たオレは震えた。 胸が高鳴って、そして、憧れた。 すぐにバスケ部に入部して、あっという間の一軍。 ウチの学校のバスケ部って、全国区で部員数も多くて三軍まである。 だから、スタートは二軍か三軍から。そして、昇進試験を経て一軍になっていくって言うことらしいけど、オレは試験を受けた記憶もない。 それは、バスケが楽しくなった頃。つまり、オレがモデルのバイトを少し面倒に思えてきたころだった。 「ったく。何なんだよ」 思わず毒づく。 事務所からの連絡があって、練習のない日だったから仕方なくバイトに向かった。 今日はロケだと聞いたことも、まあ、今日のバイトを承諾した理由の一つでもある。 でも... 「ここってどこだよ」 事務所から連絡があったのはここらへん。 現地まではスタッフが案内してくれるとのことで、待てど暮らせど誰も来ない。 「涼太くん?」 馴れ馴れしいとは思わなかった。 オレは思わずその声に反応して振り返り、 「ちゃん!」 と自然と彼女の名を口にしたのだった。 |
桜風
14.1.6
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