| 久々の再会だというのに自然と彼女の名を口にして、そして、 「やっぱり、涼太くんじゃん」 と間違っていなかったことにオレは驚いた。 「わ、どうしたの?もう日が沈んじゃうよ」 そう言うと彼女は笑った。 「子供じゃないのよ」 そうだった。二番目の姉ちゃんと同じ年ってことは、今は19歳..くらい?高校は卒業した年になっているんだ。 「しっかし、伸びたねー。何食べたらそうなるの?」 そう言いながら彼女が腕を伸ばしてくる。 背伸びをしてやっとオレの頭に手を載せた彼女は昔みたいにオレの頭を撫でてくれた。 「子供じゃないよ」と口では言いつつも、避けることをしなかった。 この手は、すごく好きだから。 オレが家に帰ってかけっこで一番になったと報告しても、姉ちゃんは「ふーん」て一言で終わらせてたけど、ちゃんは「すごいね、涼太くん」って今みたいに頭を撫でてくれてたんだ。 あの時と違うのは、オレの頭の位置が、ちゃんが背伸びをしてやっと届くくらいになっていること。 「ちゃん、こんなところで何やってんの?」 「うん、バイトというか。ちょっと待ち人..ん?黄瀬..涼太くん」 突然フルネームを口にされた。 「ん?何?」 「モデル、さん?」 何だか突然余所余所しいって言うか。 「何?そうだよ?」 「今日、ロケ撮影??」 「え、ちゃんってオレのファンだったわけ?追っかけはちょっと...」 そう返すと 「お待たせしました」 と彼女が深々と頭を下げた。 「へ?何??」 「迎えが来るとか聞いていませんでしたか?」 「聞いてた。てか、敬語辞めてよ」 「私が黄瀬さんを迎えに来ましたアシスタントのです」 「え?!」 今度はオレが驚く番。 「ちゃん、カメラアシスタント?」 「まあ..ね。移動始めてもいい?さすがに結構押しちゃってる。涼太くんの頭を撫でてる場合じゃなかった」 「ちょっとそれ酷いっ!」 オレが抗議すると彼女は笑う。 昔みたいに笑う彼女の顔を見れて、正直ほっとした。 「......ちゃんは、元気?」 隣を歩くちゃんから微かに届いた言葉にオレはうまく返せる自信がなくて、聞こえなかったふりをして話題を振った。 ズキンと胸が痛んだ。 「オレ、バスケ始めたんだよ」 「バスケ?へー、涼太くんってバスケはしたことなかったっけ?」 ちゃんはオレが話を流したのを察しているかわからない。でも、オレには無理だったから、許してほしい。 ちゃんに、姉ちゃんの話、どこまで、どんな風にしていいかわからないんだ。 学校の話をしていると彼女がぴたりと口をつぐんだ。 「ちゃん?」 「黄瀬さん、あの洋館が今回の現場です」 そう言った彼女の声はさっきと同じどこか距離があって他人行儀な、寂しくなるそれだった。 現場では、ちゃんはたくさん怒鳴られていた。 そんなに言わなくてもいいでしょと言いたくなることもたくさんあったけど、でも、大人の世界なのだろうと思って我慢した。 何より、そこまで理不尽な話じゃなさそうだと思ったし。 オレの待ちの時間に彼女は怒られていたから、できるだけ待ちの時間を少なくしようと思って、いつも以上に頑張った。 カメラを向けられている途中で、ちらっと彼女を探すと、少し顔色がよくない気がする。 再会して数時間だけど、これはちょっと自信がある。 撮影が終わると、またちゃんはバタバタし始めた。 連絡先の交換とか、と思ったけどどうもそれは難しそうだ。 今どこに住んでるの?カメラアシスタントってことは将来ちゃんもその道に進みたいの? たくさんたくさん話をしたい。 会えなかった間の話。 取り敢えず、現場にいたらきっと迷惑だろうから 「お先に失礼しまーす」 現場を後にすることにした。 |
桜風
14.1.13
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