| 当分ちゃんがアシスタントをしているカメラマンとの仕事になることはなく、オレ自身も全国大会だとかそう言うのでモデルのバイトを減らしていた。 そして、楽しかったバスケがどこか空虚になって、そして、昔のような気持ちになった。 昂ぶっていた、あのワクワクしていた毎日が嘘のように、冷めきっていて、つまらない。 そんなある日、事務所から電話がかかってきた。 モデルのバイトの話だ。 その日は練習が入っていた。練習が入っている日は、基本的にバイト入れない。 だけど、なんとなくその仕事は入れた。 バスケが詰まらなくなったし... 現場についてオレは周囲を見渡した。 「あれ?」 「どうかした?」 メイクさんが声をかけてきた。 「あ、あの。カメラアシスタントのさんは?」 「ああ、あの子?噂だと、先月くらいに仕事辞めたらしいわよ?」 「...え?」 零れた言葉。 「何かあったんですか?」 「ごめんね、よく知らないの。あの子、自分の事あまり話さないし。でも、ほら」 そう言って彼女は声を潜める。 「結構カメラマンとかほかのアシスタントとは上手くいってなさそうだったじゃない?」 それはちゃんを批判するような声音だった。 「そうっスか?」 「ちょっと、こう..なんとなくなんだけどね」 何か別のことを言おうとしたのだろう。でも、オレの表情をみて彼女は言葉を諦めた。 たぶん、オレ。今凄く不機嫌だということが顔に出てるんだろうな... 何もかもが詰まらなくなった。 バスケも、バイトも。 何となくバスケを続けてなんとなくバイトも入れて。 『楽しい』って何だっけ? バスケは、全中三連覇を果たした。といっても、オレは二年からの入部だから二連覇だけど。 でも、その大会の途中、オレの親友は姿を消した。 何でみんなオレの前からいなくなるんだろう。 今なら、姉ちゃんの気持ちがわかると思った。 いてほしい時に、いてほしい人がいない。 理不尽だとわかっていても、その人を悪く思ってしまう。 ああ、そうか。姉ちゃんはやっぱりちゃんのことが好きだったんだなって、安心した。 これだけは、ちゃんと黒子っちに感謝だ。 あの時、姉ちゃんにたてついた自分は間違っていないと思うけど、姉ちゃんも仕方なかったんだろう。 ちゃんの悪口を言うことで、きっと自分の中のぐちゃぐちゃになった気持ちとかを誤魔化していたんだと思う。 だって、今のオレがそうだから。 上手に気持ちを整理できないまま、オレは進路を決めた。 家を出て神奈川にある海常高校へと進学する。 高校が結構熱心にオレを買ってくれてるし、別に、どこに行ってもオレが凄いことには変わりない。 どうせ、入部してすぐにレギュラーだろうし。 ...ホント、なんてつまらない世の中なんだろう。 家を出る日、駅のホームまで下の姉ちゃんが見送りに来てくれた。 車を出してくれたんだ。 「姉ちゃん」 「んー?」 電車がホームに入ってくるのを一緒に待っている。姉ちゃんは手持無沙汰なのか、携帯をいじっていた。 「ごめんね」 「何がー?あんたが家を出るのは凄くいい事よー。でっかくて邪魔なのが家からいなくなる」 「ひどいなー」 オレがこぼすと姉ちゃんが携帯から顔を上げた。 「どうした?」 「ちゃんがいなくなったとき、姉ちゃん、ちゃんの事悪く言ったじゃん。その時、オレ、姉ちゃんにムカついてたてついたことがあったでしょ?」 そう言うと姉ちゃんは驚いたように目を見開いて、でも、すぐにいつもの表情に戻った。 「アンタがあたしにたてつくとかしょっちゅうだったから、どれか分かんない」 「そうかなー?いっつも姉ちゃんに意地悪されてたから、なるべくたてつかないようにしてたんだけど」 そう返すと「ウソばっか」と返された。 「んで?」 姉ちゃんが話を促す。 「寂しかったんだなって、オレ、わかったから」 「バッカじゃないの!」 そう言って返してきた姉ちゃんは顔を真っ赤にして言う。だから、図星だってわかった。 丁度電車がホームに入ってきた。 何となく気まずくなったオレと姉ちゃんには願ってもないタイミング。 「じゃあね」 「お腹冷やすんじゃないよ」 姉ちゃんがそう言う。 「え?」 「あんた、しょっちゅうお腹冷やしちゃ、『痛い痛い』って泣いてたでしょ」 そんなことを言われる。 「子供じゃないから」 「子供でしょ」 このやり取りはよくちゃんとしていた。少し前のことなのに、凄く懐かしく感じる。 「うん、じゃあね」 そう言ってオレは電車に乗って神奈川に向かった。 |
桜風
14.2.3
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