二度目の初恋 7





 インターハイの予選が始まった頃、みんなで他校の試合を見に行った。所謂県内ライバル校。

その帰り、どこかに寄って帰ろうと話をしていると、見たことのある人が見えてオレは足を止めた。

「店長さん!」

名前は知らない。知らなくても、困らないから聞いていない。

あれ以来お店にも行っていないから、店長さんはオレのことを忘れているかなと思ったけど、覚えていたらしく「ああ、弟」と言われた。

「何だ、あの美人は!」

胸ぐらをつかむ勢いで森山先輩にそう聞かれた。

「性格は結構悪いと思うっスよ」という言葉をのんで「知り合いです」と無難に答えた。

「どこか行くんスか?そんな大きな荷物...」

店長さんは大きなスーツケースをごろごろと転がしていた。

「現地に行っての買い付け」

「ああ、変なものが増える原因って言う...」

「いいのよ。あれも結構人気なんだから」

「てことは、お店は臨時休業っスか?」

「は?がいるじゃん」

真顔で返された。

「え、だって。バイトを一人置いて?」

「誰がバイトよ。あの子、バイト扱いしたら罰が当たるわ」

半眼になって返された。

「え、あ...」

知らなかった。

「何だ、聞いてないんだ」と言った店長さんの声音は、どこか同情の色が含まれていた。

「それはそうと。弟君は、こんなところでどうしたの?」

「バスケの試合を見に行ってたんスよ」

そう返すと「いいなー、高校生は」と言われた。

「チームメイト?」

こっそり聞かれて、「先輩たちっス」と返すと「そ」と彼女は声を漏らした。

「こんにちはー」

再び、どこから出ているかわからない少し高めの声で店長さんが先輩たちに挨拶をした。

「ど、どーも」

「この子のお友達?」

そう言って、オレの頭にポンと手を置いた。なんか、ヤダ。

「だから、先輩って言ったじゃないスか!」

「よかったら、ここに来てみてね。中々素敵な店員さんがいるわよー」

ちょっとやめて!!

本当なら今すぐ店長さんが先輩たちに差し出している名刺大のお店のカードを奪い取りたかったけど、そこは何とか思いとどまった。

「これ、どういう意味ですか?」

店の名前はどこかの国の言葉だ。それにカナを振ってある。

「止まり木。ふらっと寄ってもらうだけで十分って思ってるからね」

そう言った店長さんは腕時計を見て「あら、拙い」と一言。

「ま、紅茶とか男の子は興味ないかもだけど、良かったら覗いてみて。それなりに手ごろなものが揃ってるから」

彼女はそう営業をして駅の改札をくぐった。


その日の晩、ちゃんに電話をしてみた。

なるべく連絡をとならないようにはしていた。だって、彼女はバイトの掛け持ちをしていると思ったから。

でも、そうじゃなかった。

今日、店長さんを見かけた時の話をするとちゃんはすごく驚いていた。

『だって、お店出るときだって、ギリギリでフライト逃すかもねーって言ってたのに。大丈夫だったのかなぁ...』

心配そうに呟くちゃんに聞いてみた。

ちゃんって、バイトじゃないんだって?」

『ん?』

「お店」

『ああ、うん。奇特な人だなって思ったよ。最初は、まあ、バイトだったけど、突然明日から正社員ねって言われて...私、高校中退だから、最終学歴は中学で、中卒なのよね。だから、就職ってまあ無理だと思ってたのよ」

言われてみれば、確かにそうか。高校入学してすぐに学校を辞めなきゃならなくなった人だもんな。

「けど、言ってくれてもよかったのに」

そう零してみたら『そうなの?』と返ってきた。

店長さんが同情するのもわかるって自分で言うものおかしいけど、わかる。

うん...

店長さんがいないのは1週間程度らしいということを聞き出して、邪魔者がいないうちに時間を作ってちゃんのところに行ってみようと思った。

少しくらい、手伝いができるかもしれないし。









桜風
14.2.17