二度目の初恋 12





 取り合えず、1DKと言ったところか。

玄関入ってすぐに台所で、その先にドアがあって、小ぢんまりとした部屋。

部屋に入って、思わず見たわす。

何ともそっけないというか、飾りっ気のない部屋だな...


「涼太くん、水」

そう言ってちゃんが声をかけてきた。

コップに水を汲んできたちゃんがオレの前でぴたりと足を止めた。

「涼太くん、ごめん!」

わたわたと慌て、彼女は右往左往し始めた。

「なに?」

「シャツ、汚しちゃった...」

そう言ってやっぱり右往左往。

ああ、そうか。ちゃんがさっきしがみついて泣いてたもんな。

そんなに化粧っ気があるわけではないけど、ファンデーションくらいはしていたらしく、本日のオレの白が基調のシャツはほんのり肌色に染まっていた。

「いいよ、大丈夫」

「でも。え、と。しみ抜き?」

色々と対処法を考え始めたちゃんに思わず苦笑が漏れる。

あれだけ怯えて小さくなっていたのに...

少し安心出来たオレは、ちゃんに渡された水を飲む。

ああ、これは...

銘柄を口にするとちゃんは目を丸くした。

「なんでわかったの?」

「オレ、利きミネラルウォーターが得意なんだよ」

「何それ」

「利き酒とか、そう言うのと一緒」

そう返すと「変な特技」と彼女が笑う。

笑えば緊張がほぐれる。

たぶん、きっともう大丈夫だとは思う。

「ありがとう。ごちそう様」

そう言ってオレは玄関に向かう。あんまり長居はしたくない。

「シャツ、今度弁償するから」

ちゃんが言う。

「大丈夫。オレ、ちゃんのタオルになれて嬉しかったし」

「タオル?」

「そう。タオル」

「嬉しい?」

「そう、嬉しい」

「でも、涼太くん。タオルって言ったら」と言って彼女は押入れのふすまに手をかけた。その姿を視線で追っていたら「向こう向いてて!」と言われた。

はいはい...

顔をそらしているとごそごそと物音がして、「涼太くん」と呼ばれる。

「もういいの?」

「うん、いいよ」

了解を得てみてみると、彼女がタオルを掲げていた。

「タオルとは、これです」

「いや、そう言う意味じゃなくてね」

届いていない言葉ってさみしいなー、と思っていると「わかってるよ」と彼女がいたずらっぽく笑った。

その笑顔が可愛くて、うっかり手を出しそうになったら、そのタイミングでポケットに入れていた携帯が震える。

知らない人からの番号だ。

面倒だから一度無視したらしつこくリダイヤルされた。

もしかして、誰かと間違って掛けているのかもしれない。だったら、教えてあげたほうがいいかな、と普段は思わない親切心が出た。

「もしもし」と出ると『もしかして、致してる最中だった?』と電話の向こうの人が言う。

「あの、店長さんは何でそういう話ばっかなんスか」

『はっはー。不健全で結構結構』

愉快そうに彼女が笑う。

『キミ生徒手帳を忘れたでしょ。戻っといで』

そう指摘された。

「...わかったっス。って、なんで番号知ってるんスか」

『愚問だ』

そう言って店長さんが電話を切った。

「店長?」

「忘れ物してるから、戻って来いって」

「大丈夫?ついて行く?」

心配そうにちゃんが言う。

ちゃんが一緒にお店に帰ったら、オレ、またちゃんを贈らなきゃいけなくなるよ。大人しくしてて」

そう言うとちゃんは心配そうにオレを見上げる。

「大丈夫だって」

そう言って玄関に向かう。

「じゃあね。ちゃんと戸締りして、ゆっくり休んでね。オレ、今日凄く楽しかった。ありがとう」

そう言ってドアを開ける。

「うん、気を付けてね。何かあったら電話してね」

そんなことをいうちゃんに軽く手を上げて応え、ドアを閉める。


さて、店長さんは何の用事があってオレを呼び出したのやら...

てか、門限破り、どうしよう...









桜風
14.3.24


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