二度目の初恋 15





 夏休みが明けて、少し経ったある日。部活が終わった後に森山センパイがオレの肩を組んだ。

「な、何スか?」

何かある。

合コンのセッティング..か?

「この間の店長さんの店に案内してくれないか?」

この間の店長さん?

「ほら、インターハイの地区予選の時に会った。貰ったカードの」

「え?!な、なんでっスか?!」

あそこにはちゃんがいる。森山センパイが確実にちょっかい出す!

「実は、中村のクラスが喫茶店をするらしいんだ」

喫茶店...

「ああ、文化祭」

「そ。んで、あのお店なら、あのカードももらったことだし、黄瀬の知り合いもいるみたいだし、割引してくれないかなって思って」

「知り合い?!」

「...は?店長さんと知り合いなんだろう?」

思わずちゃんのことかと思い、さらに森山センパイがちゃん狙いなのかと思って慌てたけど、店に行ったことがない森山センパイがちゃんのことを知っているはずがない。

森山センパイがあの店を訪ねたら、オレの知り合いだって言いそうだし。そしたら、ちゃんからその情報は入りそうなものだし。

そんなことを考えていると、勝手に約束をつけられて、オレが不本意にもちゃんのいる店を案内することになった。


部活からの帰りだから、少し遅い時間。それこそ閉店間際。

店のドアを開けると、それなりに聞きなれたドアチャイムが鳴る。

店の奥の方で店番をしている店長さんが「いらっしゃいませー」と例の裏声に近い声を出す。

そして、オレたちを見て一瞬だけ目を眇めた。

「いらっしゃいませ」

「あ、店長さん。お久しぶりです」

そう言って森山センパイが店長さんに近づいた。

森山センパイが店長さんを口説き始め、店長さんは冷ややかな視線をオレに向ける。

「どうにかしろ、これ」と顔に書いてある。

オレはそれを見なかったふりをして、店内を見る。

そんなに大きな店舗じゃないけど、奥にも人の気配がしないし、ちゃんは今日はいないのかな。


安心したところでドアチャイムが鳴る。

「あら、いらっしゃいませ」

外にいたらしいちゃんが戻ってきてそう言った。

「海常高校さん?」

オレを見ながら言う。

「部活の先輩たち。中村先輩が文化祭で喫茶店するから、その相談もかねてって言うか」

「まあ!そうでしたか」

今がチャンスとばかりに店長さんが森山センパイから離れてオレがちゃんに紹介した中村先輩に足を向ける。

「どういったコンセプトですか?」

店長さんが離すまいと中村先輩を捕まえ、ちゃんは肩を竦めて店の奥に引っ込んでいった。

「ああ、あの人もきれいだ...」

「森山センパイ...」

ちゃんに手を出したら先輩でも許さないっス!


少ししてちゃんが戻ってきた。

試飲用のお茶を用意してきてくれたのだ。

「どうぞ」とお盆に小さな紙コップを載せたまま彼女が言う。

「いただきます」とみんなで手に取った。

「これ、紅茶ですか?」

「いいえ、烏龍茶ですよ」

「香りが...」

「茶葉に桃の花がブレンドされているんです」

そうやってお茶の説明をするちゃんを眺めているとまたドアチャイムが鳴った。

「あら」

そう言って彼女は笑う。

というか、入ってきたのは外国人。しかも、結構なイケメン。あ、オレのがイケメンだけどね。

すると、その外国人は外国語で話し始める。

オレは慌てて店長さんに視線を向けるが、店長さんは中村先輩と話をしている。

どうすんの?!

そう思っているとちゃんが流暢な外国語で話を始めた。

これ、多分英語でもなさそうなんだよね。馴染みがないし。

ということは、ちゃんは英語以外の外国語も話せるって事??

外国人は

店で何かを買おうとしていたわけではなく、話が終わったら出て行った。

「今の、何語?...ですか?」

取ってつけた敬語にちゃんは苦笑して

「ドイツ」

という。

「留学されていたとか?」

森山センパイがすぐさま反応して返す。

「いいえ、独学ですよ」

「すごっ!」

思わず声が漏れ、ちゃんは苦笑する。

、110番と123番。あと..227番もいいかも」

「はーい」

そう返事をしてちゃんは店の奥に向かった。たぶん、在庫確認かな?

「素敵だ...」

女の人だったら誰にでもそう思うはずの森山センパイがそう呟く。

「そうそう、お客様。当店のスタッフをナンパするのはおやめくださいね」

じわじわと殺気らしきものを放ちながら店長さんが言うと、森山センパイはビクリと肩を竦める。

「はい...」

取り敢えず、この場でのオレの心とちゃんの平和は守られることとなったのだった。









桜風
14.4.14


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