| 寒い...めちゃくちゃ寒い... 空から雪がちらついてきている。 ちゃん、どこ行ったの... 今日は学校の創立記念日で学校は休み。 そして、テスト期間だから部活も休み。 さらに、ちゃんも今日は定休日だから休み。 そう思って意を決してちゃんちにきたら、ちゃんがいないという... すごすごと帰る気にもならず、彼女の家の前に座って待っていた。 お尻が冷たい... きしむ階段を誰かが上ってくる気配。 視線を向けると、その人と目があって、オレは「ちゃーん」と自分でも呆れるくらいの情けない声を漏らす。 「ちょ、涼太くん?!」 ちゃんは駆けてきてオレの頬に手を当てる。 「どうしたの?!」 「あったかー...」 泣きそう... そんなことを思っているとちゃんの手は、オレの頬から離れていった。 ああ、寂しい。 ドアを開けて「ほら、入って。炬燵付けて入ってて!」とオレの腕を引く。 立ち上がってちゃんの言うとおりに部屋に上がり、炬燵のスイッチを入れて入り込む。 けど、まだ全然暖かくなくて、寒いままだ。 台所でちゃんが牛乳とか鍋とかいろいろ出して動いている。 炬燵がほんのり暖かくなってきたころに、ちゃんはオレの前にやってきて、コトリとカップを置いた。 「あ、チャイだ」 「そう。飲んであったまって」 そう言ってまだちゃんは腰を下ろさない。 取り敢えず、少し熱そうだからふうふうと吹いて冷まして一口飲む。 じんわりと体が暖かくなった。 「ほら、これも」 そう言って肩にかけられたのは、ブランケット。 ふわふわで軽くて、そして、ちゃんの匂いがする。 そして、ようやくちゃんが炬燵の中に「おじゃましますよ」と足を突っ込んできた。 「うわっ、涼太くん。狭い」 「仕方ないでしょ。オレ、足長いし。何なら、ここに座る?」 そう言ってオレの前を指さすと「生意気ー」と笑われた。 「学校は?」 まずは一番に聞かれるかと思ったことをやっと聞かれた。 「今日は創立記念日で休み。あと、テスト期間中だから部活も」 そう返すと「いい時期に創立記念日があるのね」と笑われた。 「えー、青春真っ只中の子供たちに酷い仕打ちだよ」 そう返すと彼女は笑う。 「で?涼太くんは勉強しなくていいの?普段は部活三昧でどうせやってないんじゃないの?」 そう言われ、オレは鞄を開けた。 「これ。ここで勉強させてよ」 そういって持ってきた教科書を彼女に見せた。 「寮は?」 「漫画とか雑誌とかテレビがあって集中できない」 「図書館は?」 「眠くなる」 「...そう。ま、いいけど」 そう言って彼女はいったん炬燵から出ていく。 そして、戻ってきた彼女が手にしていたものは、何かのテキスト。 「何、それ」 「資格試験の勉強中」 「オレ、しなくてもいい勉強まではする気が起きないんだよねー」 「しなきゃいけない勉強も、でしょ?」 そう指摘された。 ぐうの音も出ない。 そんなオレを見て、ちゃんが笑う。 「まあ、前もいったと思うけど、私の最終学歴が中学卒業だから。学歴を上げるのはちょっと大変だけど、資格試験を取ってそれを補てんしようと思ってね。 店長に、恩返ししたいし」 「恩返し?」 聞き返すと彼女が頷く。 「私、こっちには逃げてきたから」 ポツリと呟くように言った声は、オレの耳には何故か大きく聞こえた。 何から逃げてきたのかはわからない。 でも、それでよかったんじゃないかってオレは思う。 だって、向こうにいた時よりも今のちゃん凄く生き生きしてるから。 暫くは、ペンの走る音だけが部屋の中に響いた。 「涼太くん、それスペルミス」 「へ?あ、え。どれ?」 「これ」 そう言いながら正しいスペルを教えてくれる。 「あー、これややこしいんだよね」 「言い訳しない。ノート1枚ひたすら書いたら覚えるよ」 そう言われた。 そしてまた静寂。 だんだん勉強に飽きて、ちゃんの勉強を眺める。 ノートに視線を落とす横顔がきれいで思わず触れた。 「わっ」と彼女は声を漏らす。 「え、なに?」 「何でもないよ」 「もう!」 そう言ってちゃんはシャーペンを置いた。 「コーヒー、飲む?」 「お茶じゃなくていいの?」 「たまには、ね」 そう言って彼女は炬燵から離れた。 静寂の中、台所からコーヒーを準備する音が聞こえる。 このまま世界が変わらなければいいのに... |
桜風
14.4.28
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