二度目の初恋 17





 寒い...めちゃくちゃ寒い...

空から雪がちらついてきている。

ちゃん、どこ行ったの...


今日は学校の創立記念日で学校は休み。

そして、テスト期間だから部活も休み。

さらに、ちゃんも今日は定休日だから休み。

そう思って意を決してちゃんちにきたら、ちゃんがいないという...

すごすごと帰る気にもならず、彼女の家の前に座って待っていた。

お尻が冷たい...


きしむ階段を誰かが上ってくる気配。

視線を向けると、その人と目があって、オレは「ちゃーん」と自分でも呆れるくらいの情けない声を漏らす。

「ちょ、涼太くん?!」

ちゃんは駆けてきてオレの頬に手を当てる。

「どうしたの?!」

「あったかー...」

泣きそう...

そんなことを思っているとちゃんの手は、オレの頬から離れていった。

ああ、寂しい。

ドアを開けて「ほら、入って。炬燵付けて入ってて!」とオレの腕を引く。

立ち上がってちゃんの言うとおりに部屋に上がり、炬燵のスイッチを入れて入り込む。

けど、まだ全然暖かくなくて、寒いままだ。

台所でちゃんが牛乳とか鍋とかいろいろ出して動いている。

炬燵がほんのり暖かくなってきたころに、ちゃんはオレの前にやってきて、コトリとカップを置いた。

「あ、チャイだ」

「そう。飲んであったまって」

そう言ってまだちゃんは腰を下ろさない。

取り敢えず、少し熱そうだからふうふうと吹いて冷まして一口飲む。

じんわりと体が暖かくなった。

「ほら、これも」

そう言って肩にかけられたのは、ブランケット。

ふわふわで軽くて、そして、ちゃんの匂いがする。

そして、ようやくちゃんが炬燵の中に「おじゃましますよ」と足を突っ込んできた。

「うわっ、涼太くん。狭い」

「仕方ないでしょ。オレ、足長いし。何なら、ここに座る?」

そう言ってオレの前を指さすと「生意気ー」と笑われた。


「学校は?」

まずは一番に聞かれるかと思ったことをやっと聞かれた。

「今日は創立記念日で休み。あと、テスト期間中だから部活も」

そう返すと「いい時期に創立記念日があるのね」と笑われた。

「えー、青春真っ只中の子供たちに酷い仕打ちだよ」

そう返すと彼女は笑う。

「で?涼太くんは勉強しなくていいの?普段は部活三昧でどうせやってないんじゃないの?」

そう言われ、オレは鞄を開けた。

「これ。ここで勉強させてよ」

そういって持ってきた教科書を彼女に見せた。

「寮は?」

「漫画とか雑誌とかテレビがあって集中できない」

「図書館は?」

「眠くなる」

「...そう。ま、いいけど」

そう言って彼女はいったん炬燵から出ていく。

そして、戻ってきた彼女が手にしていたものは、何かのテキスト。

「何、それ」

「資格試験の勉強中」

「オレ、しなくてもいい勉強まではする気が起きないんだよねー」

「しなきゃいけない勉強も、でしょ?」

そう指摘された。

ぐうの音も出ない。

そんなオレを見て、ちゃんが笑う。

「まあ、前もいったと思うけど、私の最終学歴が中学卒業だから。学歴を上げるのはちょっと大変だけど、資格試験を取ってそれを補てんしようと思ってね。
店長に、恩返ししたいし」

「恩返し?」

聞き返すと彼女が頷く。

「私、こっちには逃げてきたから」

ポツリと呟くように言った声は、オレの耳には何故か大きく聞こえた。

何から逃げてきたのかはわからない。

でも、それでよかったんじゃないかってオレは思う。

だって、向こうにいた時よりも今のちゃん凄く生き生きしてるから。


暫くは、ペンの走る音だけが部屋の中に響いた。

「涼太くん、それスペルミス」

「へ?あ、え。どれ?」

「これ」

そう言いながら正しいスペルを教えてくれる。

「あー、これややこしいんだよね」

「言い訳しない。ノート1枚ひたすら書いたら覚えるよ」

そう言われた。

そしてまた静寂。

だんだん勉強に飽きて、ちゃんの勉強を眺める。

ノートに視線を落とす横顔がきれいで思わず触れた。

「わっ」と彼女は声を漏らす。

「え、なに?」

「何でもないよ」

「もう!」

そう言ってちゃんはシャーペンを置いた。

「コーヒー、飲む?」

「お茶じゃなくていいの?」

「たまには、ね」

そう言って彼女は炬燵から離れた。

静寂の中、台所からコーヒーを準備する音が聞こえる。

このまま世界が変わらなければいいのに...









桜風
14.4.28


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