二度目の初恋 19





 クリスマス目前から始まるウィンターカップのために、東京に移動した。

自宅ではなく、みんなと同じでホテル。

トーナメント表について、軽い解説付きでメールを送ったら、「同窓会だね」と返された。

...うん、そうだね。


トーナメントを順当に勝ち上がり、そして、明日が黒子っちとの試合の日。

ちゃんに毎日メールをして勝利報告をしていたけど、彼女はやっぱり忙しいのか、こっちに来ない。

定休日とかぶっていないにしても、ちょっとくらい抜けられないのかなぁ...

「明日、黒子っちとの試合なんだよ」

ちゃんに電話で報告すると

『ああ、中学時代の大親友ね』

と返される。

適当に聞いているようで、結構しっかり聞いていてくれたらしく、これまでもみんなの名前を出したら一応誰のことかと認識していた。

「ねえ、ちゃん」

『なに?』

「優勝したら、お願い聞いてくれる?」

そう言うと電話の向こうで彼女が黙る。

『内容は?』

「ご飯作ってよ」

そう言うと

『オニオングラタンスープ?』

と聞かれてびっくりした。

「え、なんで?」

『違ったっけ?涼太くんの好物』

「そう!それ!!」

嬉しい。なんで覚えてたんだろう。

『モデルさんがそんなにカロリーの高いメニューに行っちゃってもいいのかしら?』

からかうように彼女が言う。

「大丈夫!その分きちんと消費してるし。じゃあ、良いの?」

『頑張ったご褒美に作ってあげましょう』

そう言ってちゃんが笑った。

わ、嬉しい。ダメもとで言ったことだし、それこそ甘える口実でしかない。

もちろん、優勝するつもりだし、絶対するけど。



その次の日、オレはちゃんに連絡を入れることができなかった。

そして、多分彼女はそれでオレの状況を察したと思う。彼女は大人で、賢いから。



そのまま年末を地元で過ごした。

何せ、年末年始は寮が閉まっているから実家に帰るしかないのだ。

親や親せきからお年玉をもらう。

姉ちゃんが「子供は良いねー」と言った。

二十歳超えたから姉ちゃんはもうもらえないんだって。

オレもあと数年...



ちゃんにとっても地元だから、と思っていたけど結局何か口実がないとちゃんちにいけないことに気づいたオレは、東京土産を持って彼女の家に向かった。

インターホンのないこの家はドアをノックするしかない。

「はーい」

前もって行くことを知らせていたから、今回は外で待ちぼうけということにはならなかった。

「いらっしゃい」と言いながらドアを開けてくれた。その部屋の中からいい香りがする。

「入って。寒い」

そう言われて慌てて部屋に足を踏み入れた。

「なん..で」

呆然と声が漏れる。

「ん?頑張ったご褒美って言ったじゃない?」

「だって、オレ負けたんだよ!3位決定戦も...」

言ってて悔しくなる。大会の中で2回も負けたんだ。

「もしかして、知らなかった?」

そういえば、ちゃんちはパソコンが置かれていない。

店のは使いづらいだろうし、3位すら逃したウチを取り上げる新聞だってないだろう。

「私は涼太くんが話してくれてたバスケしか知らないけどね。でも、見てて感動したよ。凄いって思った。涼太くん、大きくなったな、って思った」

「見て、て?」

どういうこと?

「店長にお願いして準決勝見に行ったの。結構遅い時間スタートだったから、店長も『弟が出るんじゃ仕方ないね』って許してくれて」

「...じゃあ、なんでご褒美って。オレ、優勝してないじゃん!嫌味?結果知っててこれって、嫌味じゃないの?!」

どうしよう、当り散らしてる。くそっ!

「私、優勝したら作ってあげるって言ったかしら?」

ちゃんがいう。

「確かに、涼太くんは、優勝したらって言ったけど、私は『頑張ったご褒美に』としか言ってないはずよ?...頑張ったね、涼太くん」

優しい声音でそう言われた。

あ、もう...

視界がぼやけて、そして、自分が泣いていると自覚した。

あやすようにオレを抱きしめてくれたちゃんにすがるようにして、声を上げて泣いた。









桜風
14.5.12


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