| 寄り道 |
| 正門までの道のりは、在校生や新入生でごった返していた。 部活の勧誘に熱心な校風で、それゆえ、今は人口密度が高い。 校風といっても、今年で3年目の新設校なので、これからどうなるかは不明であるが... 「ごめんね、黒子くん」 人の波に逆らって歩いているが言う。 「いえ、大丈夫ですよ」 器用に人込みを縫いながら黒子が言った。 彼女と黒子は、図書委員2年目という仲である。 そして、本日は図書委員のお使いでこれから校外に買い物に行くのだ。 本来、バスケ部として忙しくしている黒子だが、本日部活の勧誘日ということで、部員獲得に躍起になっているカントクがオフと宣言したため、練習は自主練のみとなった。 自主練なら、この買い物の後でも十分だ。 そして、黒子が新入部員の勧誘に駆り出されいないのは、その存在の影の薄さによる。 影が薄けりゃ声をかけても気づかれない。 ほかにも仕事はあったが、図書委員の用事があるといえば、雑用させるよりもそちらだろうとあっさり許可されたのだ。 そして、現在、彼女とともに学校を後にしようとしている。 「黒子くん、部活は大変?」 なんだか一生懸命話題を出さがして落ち着いたところが部活。 ありきたりだ。 「そうですね。でも、楽しいです」 黒子は笑顔で答えた。 「バスケ部ってにぎやかだもんね」 「にぎやかすぎるところはありますよね」 彼は苦笑した。 はそっとまつげを伏せる。 彼は静かに笑う。 ぼんやりと暖かくなる笑顔だ。 「さん?」 「ん?」 「こっち...」 そういいながら彼が曲がり角を指差す。 「あ。え?」 道は間違っていない。 「少し時間もありますし、寄り道しませんか?」 「...うん」 少し悩んで彼女はうなずいた。 時間があるなら、ゆっくりしたい。 黒子の案内に従って歩き始める。 こっちの道は歩いたことがない。 通学しているといっても、大抵同じ道を行って帰るだけだ。 「黒子くんは、よくこの道を歩くの?」 彼女が問うと 「いいえ」 と黒子が振り返った。 「そうなの?」 「はい。でも、この間通ったら..そろそろです」 どこが子供っぽく彼が笑った。 何だろう、は少し歩調が速くなった黒子のそれに合わせて自分も少しだけ早く歩く。 少し開けたところ、公園に出た。 「わ...!」 の口から思わず声がこぼれた。 桜が咲いている。 「凄い...」 「ここの桜、ちょっとだけ遅かったんです」 黒子が言う。 は周囲を見渡した。 「少し高い建物が多いからかな?」 マンションに囲まれているこの公園の、この桜は意外と日当たりがよくないのかもしれない。 この1本だけ遅れている感じがした。 「そうかもしれませんね」 黒子が頷く。 しばらく無言で並んで桜を見上げていた。 さあっと風が走る。 この時期、たまにある強い風。 首を竦めてその風が通り過ぎるのを待つ。 視界にはひらひらと舞う桜の花びら。 「わー」 風が通り過ぎたら一面桜の絨毯ができていた。 「もったいないけど、きれいね」 黒子を見上げて言うと彼はクスリと笑う。 「黒子くん?」 「さんの頭。桜の花びら、ついてますよ」 そういって黒子が彼女の頭にそっと乗っている桜の花びらに手を伸ばす。 「あ、え...」 「ほら」 そういってつまんだ桜の花びらを見せた。 「うん...」 「じゃあ、行きましょうか」 「え?」 「僕たち、図書委員のお使いに来ているんですよ?」 黒子に指摘されては思い出した。 「そうだったね」 「はい。でも、そうですね。また、一緒に出掛けませんか?今度はついでではなくて」 黒子の言葉に一瞬目を見開いただったが、「うん」と静かにうなずいた。 |
桜風
13.5.1
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