andante 1





 放課後、学校に戻ってきた団体を見て息をのんだ。

ここにいたんだ...


「でね、びっくりしちゃった」

「すごいね」

幼馴染の黄瀬に電話で本日の出来事を話すと、彼も同じように驚いてくれた。



昨年の夏。あれからまだ1年も経っていない。。

が高校生に絡まれていた。

高校生とわかったのは、すべてが収まってからだった。

どうしていいかわからずに半泣きになっていると、助けてくれた人がいた。

名前は、一緒にいた人が呼んだから知っている。

「宮地」

下の名前は知らない。

ただ、に絡んでいたのが彼の通っている学校の下級生、1年生だったらしい。

「悪いな」

と心底そう思っているような声音でに声をかけ、彼女に絡んでいた後輩を連れてその場を去って行った。

男子の制服は、夏服になると意外とわからない。

ワイシャツにパンツ。制服のデザインが凝っている学校ならそれでもわかるだろうが、黒いパンツに白いシャツなんてほとんどノーヒント
だ。

また会ったときにお礼を言いたいと思っていたが、この広い東京でそんな偶然は期待できない。

結局、いつか会えたらお礼を言いたい、と思いながら高校に入学したらそこに彼がいたのだ。

お礼を言おうと思っていたら、後輩をどやしつけていた。

怖くて逃げてしまった。

こんなつもりではなかったのに、と思いつつも、ただ、まだチャンスがあると前向きに考えることにした。



「それで、その宮地先輩って何部だったの?」

「たぶん、バスケ」

「バスケ部?!」

電話の向こうで黄瀬が頓狂な声を上げた。

「え、なに?」

「いや、秀徳のバスケ部なら、緑間っちが行ってるはすだなって」

「緑間っち?帝光のお友達?」

「まあ、友達..だよね。ちょっと抵抗あるけど。見たことない?背が高くて眼鏡。目立つとは思うんだけどね」

目立たないはずがない。

「あ、もしかして同じクラスの緑間くんかも。今日、セロハンテープ持ち歩いてた」

「あー、確か今日のかに座のラッキーアイテムってそれだった気もするね。じゃあ、それだよ」

呆れたような声音で黄瀬が応じる。

「“ラッキーアイテム”?」

「緑間っちって、おは朝占いの信者だから」

「男の子が占いに傾倒するって珍しいね。で、かに座なんだ?」

「かに座のBだよ」

「詳しい!」

笑いながらが言うと

「だから、緑間っちがやたらと占いを出してくるから知ってるだけだって」

と少し嫌そうに黄瀬が返した。

ピピッと部屋の時計が鳴った。

「あ、ごめん。また遅くなっちゃった」

「いいよ」

慌てるに黄瀬は苦笑して応じる。

「いつもありがとね、涼ちゃん」

ちゃんの話、聞くのはオレの特権だから」

おどけたように彼が返す。

「いつもその言葉に甘えてるなー。でも、本当にありがとうね」

「うん」

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

そう言って電話を切った。









桜風
13.9.9


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