| (宮地?誰だろう...) 電話を切って黄瀬は首を傾げた。 彼女が昨年の夏に高校生に絡まれて、そしてその同校の上級生が助けてくれたという話は聞いたことがある。 彼女はしっかりしていて抜けているところがあり、そして、抜けていそうでしっかりしている。 だから、なんというか、総じて危なっかしいというのが幼馴染としての黄瀬の評価だった。 中学を一緒に受験する予定だったが、彼女は受験日当日風邪をひいて寝込んで試験を受けられなかった。 インフルエンザなら追試の可能性があったが、運が悪かったことに彼女は普通の風邪だった。 そのため、中学から彼女と通う学校は別れてしまった。 しかし、家が近所でお互い時間があれば行き来していたので、離れ離れになったという感覚はさほどなかったが。 さすがに神奈川と東京となると離れ離れだ。 心配だなーと思っていたら、彼女は恩人を見つけたという。 「益々心配するでしょ」 ため息交じりに黄瀬が言う。 その先輩が悪い人だったらどうするんだ。 黄瀬に恩人を見かけた報告をした翌日、はおは朝を見ていた。 占いにさほど興味はないが、話のきっかけになるなら、と見ていた。 「今日のかに座は..7位。微妙ねぇ」 ラッキーアイテムは、電話帳。 (これまた嵩張るものを...) 「ー、遅れるよ」 母親に声をかけられて「はーい」と返事をして身だしなみを整えて学校に向かう。 朝練を済ませて教室に戻ると一足早く緑間が教室にいた。 「おはよう」 声をかけてみる。 彼はこちらをちらと見て「おはようなのだよ」と返してきた。 (『なのだよ』?!) 語尾が非常に気になったがそこは表情に出さずに彼の手元をみる。 電話帳がある。しかも分厚い方の。もうちょっと薄いのがあるはずなのに。 「今日の、かに座のラッキーアイテムだよね、それ」 そう言うと彼は思い切り興味を持った。 「ああ。おは朝を見ているのか?」 「...今日から」 あまり適当なことを言うのはなんか拙いことになりそうな気がして彼女は正直に言った。 「そうか。あれは当たるから参考にするといいのだよ」 「う、うん...」 凄く真剣に言われた。 「ところで...」 「ん?」 「あー...」 「んん??」 「さん、だよ。真ちゃん」 「あ、ああ。知っていたのだよ」 眼鏡のブリッジをあげながら緑間が言う。 (あ、名前...) 彼がすごく言いにくそうにしていた理由がわかった。 「まだ入学してそんなに日が経ってないからクラスメイトでも名前を憶えてない人いるよね」 「あ、いや。すまなかったのだよ」 「さんは良い人だねー」 「高尾くんと緑間くんって幼馴染か何か?」 「違うのだよ」 眉間にしわを寄せて緑間が言う。 「ん?」 「どうしてそう思ったの?」 苦笑しながら高尾が言う。 「あ、だって。『真ちゃん』って...」 「何度もそう呼ぶなと言ってるのだが、全然聞かないのだよ」 「いいじゃん。呼び名くらいで目くじら立てるんじゃないのだよ」 「あはっ」 2人のやり取りがテンポよく、面白かったので思わず笑いをこぼしてしまったは慌てて口元を手で押さえる。 「ご、ごめん」 「いいよ。なー、真ちゃん」 「構わないのだよ」 ため息交じりにそう言われた。 「ごめんね」 「いいって」 チャイムが鳴る。 「あ、やべっ」 教室のドアが開いて担任が入ってきた。 慌ててと高尾は自分の席に戻った。 (聞きそびれちゃった...) 自分の席に着いたが肩を落とす。 それを後ろから見ていた高尾は首を傾げた。 |
桜風
13.9.16
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