andante 3





 「笠松先輩」

「んだよ」

「『宮地』さんって知ってるっスか?東京の秀徳の..今年3年だったかな?」

「あー...」

記憶をたどっていると

「オレよりかっこいいっスか?オレよりもバスケが上手いってのはないと思うんスけど」

と黄瀬が邪魔をする。

「ウルセー!つーか、うぜぇ!!」

「痛いっス!」

足蹴にされた黄瀬が声を上げる。

「つか、なんで宮地の名前が此処で出るんだよ」

「実は、幼馴染が秀徳に通ってるんスけど。1年くらい前にその宮地サンに助けてもらったっていう経緯があって。でも、その宮地サンが良い人とは限らないから心配なんスよー」

「ほっときゃいいだろうが!もう高校生だろ!!」

「なんてこというんスかー」

嘆く黄瀬を黙殺して笠松は練習を再開した。



秀徳高校と言えばバスケ部。

これは体育系の部活のことで、文科系は吹奏楽が有名である。

こちらも全国区で、わざわざこの学校への進学のために都外から入学する生徒もあるほどだ。


「あれ、何部ですかね」

グラウンドをランニングしている部がある。男女混じっている。陸上だろうかと思ったが、その陸上部はグラウンドで練習中だ。

「ブラバンだろう」

宮地が答える。

「ブラバン?吹奏楽ってことっすよね?」

高尾が問い返すと「おー。うちはブラバンも強いらしいぞ」という。

「へー」

相槌を打ってまたその集団を見ると、クラスメイトがいた。

一見体力の世界とは無縁そうな彼女はその集団の前の方にいる。体力はあるようだ。ついでに、足も早いのだろう。

「クラスに何人かいるんじゃないのか?わざわざブラバン目当てでうちに来るやつもいるらしいぞ」

「あー、今見つけたところです」

「あっちもレギュラー争い大変らしいからな」

「文系にそういうイメージなかったんですけどねー」

ちゃんってそういう競争社会には弱そうなイメージがあったなー...)

そんなことを思いながら高尾はランニングを続けた。



部活が終わると外は随分と暗い。

ため息をつきながら帰宅の途についていると

ちゃん」

と声を掛けられて顔を上げた。

「涼ちゃん!」

彼のもとに駆け寄って見上げる。

「久しぶりだね、どうしたの?」

「こっちにちょっと用事があったから」

「モデルの?」

「それもあったけど。黒子っちに会いに」

「帝光のお友達だね」

彼の名前は結構頻繁に聞いている。黒子と青峰。この2人は黄瀬の友人であるとも認識していた。

「そうだよ」

黒子なら胸を張って友人と言える。

黄瀬が手を出すと「大丈夫」とは苦笑する。

「持つよ」

少し強引に彼女の学生鞄を取り上げた。

もう一つ持っているものは、彼女の大切なものだから手は出さない。

「学校はどう?」

「忙しいよー。部活もほら、なんだかんだでみんなライバルでね」

肩を竦めて彼女が言う。

「うん、そっか。あ、で...宮地さんとは?」

「え?あ、うん。お話しできるような距離じゃないし」

苦笑して彼女が言う。

「緑間っちに紹介してもらう..とか?」

「緑間くん?うん、まあ」

言葉を濁すにどこか安堵しながら黄瀬は彼女の横を歩く。

ちゃんと学校帰り一緒になるのって久しぶりだね」

不意に黄瀬が言う。

「うん、そうだね。中学の時もまずなかったもんね」

「帝光とちゃんの学校、方向が真逆だったもんね」

だから、あっても家の前でばったりで「久しぶり―」とかくらいだった。

「そうだ!涼ちゃん、うちのクラスの女子にも大人気だよ。同中だからって、緑間くんがたまに質問攻めにあってる。ものすごく鬱陶しそうにしてるけど」

「今度会ったときに、文句言われそうだね、オレ」

黄瀬が苦笑した。

「うん。だから、その...わたしは、悪いけど涼ちゃんの知り合いじゃないの」

ごめんね、という彼女に「いいよ」と黄瀬は苦く笑った。








桜風
13.9.23


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