| 「嫌です」 きっぱりとした声が聞こえた。 宮地はそちらに足を向けてみる。 数人の女子が一人の女子を囲んでいた。 (うっわ、女子のコレ...) こういうの嫌い、と思いながら少し拙そうだと思い、様子を見ることにした。 「だから、あんたは今度のオーディションの日、腹痛起こして帰るの。それだけでいいのよ。先輩の言うことを聞きなさい」 「嫌です」 (はっきり返すなぁ...) 感心した。 複数に囲まれているのに、彼女は物怖じしていない。 しかし、彼女たちが口にしていた『オーディション』の単語に首を傾げた。 最近聞いた気がする。 メディア関係ではなく... (ああ、ブラバン) おそらく、彼女たちは部活のレギュラー争いに負けそうなのだ。だから、後輩を脅して自分が有利になるように仕組んでいるつもりなのだろう。 だが... (これじゃあ、自分が負けるから手を抜いてくださいって情けねぇお願いしてるだけって気づけないんだろうなぁ...) 宮地はため息を吐いた。 (ま、言われっぱなしじゃないみたいだし大丈夫だろう) くるりとその場に背を向けるとパンと音がして、宮地はそのまま回れ右をして歩き出す。 「それは、ルール違反だろう」 右頬が赤くなっている女子の前に立ってそう言った。 「え、あ...」 「オーディションがあるなら、それで勝負つけるべきじゃねーの?」 (あーあー...) 自分でも余計なお世話をしているのはわかっている。 自分がこの子を庇えば、彼女はまた別の場所でこんな目に遭うかもしれない。 だが、放っておけない性分だったのだ。仕方ない。 (後で謝っとくか...) 「な、何よ!?」 「あんたら、ブラバンだろ?」 あてずっぽう。オーディションならほかの部にもあるだろう。 だが、アタリだった。 彼女たちは狼狽して、そして暴言を吐いて逃げていく。 「...たく」 ため息をついて宮地は自分が背後に庇った女子を見下ろした。 彼女は固まっていた。 「あー、大丈夫か?」 彼女の赤くなっている頬に触れようとすると、彼女は顔を覆った。 「あ、わるい」 首を横に振る。 「あり、が...とう。ござ、い、ま...」 途切れ途切れに音を発した彼女はそのままずるずるとその場に崩れた。 さっきの女子たちが戻ってきたらまたこの子が嫌な目に遭うかもしれないが、この場に一緒にいるのもなんだか居心地が悪い。 「ほっぺ、冷やした方がいいぞ」 宮地がそう声をかけると彼女はコクコクと何度も頷いた 「じゃあ、な」 そう言って宮地が背を向けた。 少し歩くと後輩たちの姿が見えた。 「何してんだ?」 「宮地さんの男前に惚れそうになりました!」 敬礼をして高尾が言う。 「うるせ。見てたんなら、お前らが何とかしろ」 「やー。相手はお姉さんたちだったし。男が出てったらまた拗れるかと思って」 「悪かったな、拗れさせたかもしれねぇよ」 ガシガシと頭を掻く。 自分だってそう思った。でも、理不尽すぎたから見過ごせなかったんだ。 「あの子、宮地さんに惚れるかもしれませんよ」 「おい」 緑間が高尾を止める。 これまでの情報を統合すれば、すでにその状態である可能性があると高尾自身が緑間に話していたのだ。つい先ほどまで。 「俺だったら確実に惚れたね!」 「気持ちわりぃ。迷惑なんだよ」 宮地がそう返した。 ガスッと緑間が高尾を肘でつついた。かなり強めに。 「いてっ!何すんだよ、真ちゃ...」 緑間の視線を辿った高尾もさすがに言葉を無くした。 目の前の後輩たちの様子を不思議に思った宮地が振り返ると先ほどの女子が立っていた。 「おー、もう大丈夫か?」 「はい。さっきはどうもありがとうございました」 彼女はぺこりとお辞儀をした。 「さっきも言ったけど、ここ、冷やせよ。結構腫れてるぞ」 そう言いながら宮地は自分の右頬を押さえていう。 「はい、ありがとうございます」 そう微笑んだ彼女は高尾と緑間を見上げた。 「チャイムなるよ」 「あ、うん。そ、そーだよな」 「ああ、行くのだよ」 自分たちの横を歩いて行った彼女に罪悪感を感じて唾をのむ。 「じゃあ、宮地さん」 「失礼します」 そんな挨拶をして2人は教室も向っていった。 「何だ、知り合いか...」 宮地も教室に向かっていった。 |
桜風
13.10.14
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