| 良く晴れた秋の日。 黄瀬は東京に戻ってきていた。 丁度休養日でよかっと心から思ったのだ。 見上げるは、「秀徳高校」という看板。 本日は、秀徳高校の文化祭なのだ。 「ちゃんとこは、フリマかー」 学校が離れた中学の時から黄瀬は必ず彼女の通う学校の文化祭には顔を出していた。 時間がなくても、ちょっとでも。 だから、今回も文化祭の連絡があり、そして、吹奏楽部の演奏会のチケットも手に入れたのだ。 チケットというものは、基本的にノルマがあるはずだ。 だから、代金を支払うと言ったら、 「どっちかといえば競争率が高いからすぐに捌けるし、大丈夫だよ」と言われた。 そして、文化祭当日の朝、ここに来たのだ。 「緑間っちとも同じクラスって言ってたよなー」 呟きながら校内案内図を見て歩き始める。 教室を覗いてみたら、そこそこ盛況だった。 だが、の姿はない。 「あれ?」 黄瀬に気づいた高尾がニヤニヤ笑っている。 「ちゃん?」 「そうだけど。いないみたいだね」 「そろそろ当番で戻ってくるよ、涼ちゃん」 高尾にそう呼ばれて苦い表情を見せた黄瀬に彼は愉快そうに笑う。 「緑間っちは?」 「真ちゃんは、ほら。あそこ」 「店員側じゃないんだね」 「おは朝グッズをフリマに出した人がいたからね。値段を見て唸ってる」 「ラッキーアイテムだったら金に糸目つけないのに」 「だよなー」 苦笑して高尾もうなずいた。 「お、盛況だな」 そういって教室に入ってきたのは、バスケ部の先輩たち。 「涼ちゃん」 「だから、なんで高尾クンがオレのこと『涼ちゃん』なんて呼ぶの?」 「面白いから」 そう言ってふはっと笑って黄瀬から離れた。 「あれ、黄瀬じゃねーの?」 木村が高尾に聞くと 「そうっすね」 と頷く。 「緑間?と、仲が良いようには思えないな」 大坪が言うと 「たぶん、そんなに気は合わないと思いますね」 と言って、宮地を見上げた。 「んだよ」 「いや、何でもー」 少しだけ敵意を孕んだ視線を黄瀬に向けていた宮地が高尾をにらむ。 教室のもう一つのドアが開いてが戻ってきた。 「あ、」と黄瀬が彼女に近づく。 「早いね」 が黄瀬に声をかけると 「両方みたいと思ったからね」 と黄瀬が応じていた。 「緑間くんと話をした?」 「話すことないよ」 苦笑して黄瀬が応じる。 「友達なのに」 「...オトコノコってそんなもんなの」 そう返した黄瀬に「ふーん」とが適当に頷いた。 「ちゃん、先輩たち来てくれてんだよ」 高尾が声をかけるとが振り返り、一瞬だけ固まった。 「涼ちゃん」 「ん?」 「宮地さんだよ。なんか怒ってるっぽいよ」 「さっきから睨まれてるから知ってる」 どうしようとわたわたしているにため息をつきつつ「どーも」とバスケ部先輩たちに挨拶をしてみることにした。 「ちゃんが怖がるんで睨むのやめてくれませんか?」 宮地に対して言う。 「別に睨んでねーよ。地顔だ地顔」 「涼ちゃん!」 少し挑発的な態度をとる黄瀬にが声を上げた。 「...『涼ちゃん』?」 聞いたことがある単語だ、と宮地は思った。 「あ、幼馴染の...」 が言うと、そう言えばそういう名前だったということを思い出した。 何だか、すっきりした自分に気づいていないふりをしながら「へー」と黄瀬を見た。 「そういや、ブラバン何時から?」 木村に声をかけられて 「午後3時です」 とが答える。 「じゃあ、早めに行って席取っとく?」 そう言う木村に 「でも、前の演劇部もチケット制のはずなので、完全入れ替えですよ?」 とが言った。 「え、チケット要るの?」 高尾が問う。 「うん」 「黄瀬は持ってんの?」 「ちゃんにもらったからね」 そういって黄瀬が頷いた。 高尾が先輩たちを見上げると、彼らも顔を見合わせている。 「もしかして、持ってない?」 高尾の言葉に3人が頷いた。 「ちゃん。チケット、余ってない?」 そう問われては困り、 「部長に聞いてきます」 と言って教室を出ていく。 「涼ちゃん、店番よろしく!」 というある種迷惑な言葉を置いて。 |
桜風
13.12.2
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