andante 14





 総合文化祭優勝という看板のおかげで、チケットは完売。

ただ、宮地が部長と友人ということもあって、席はないけど、会場、つまり体育館に入ることは良いといわれた。

そのままくっついて高尾と緑間も入れてもらう。

「ラッキーでしたね」

高尾が宮地を見上げていうと

「オレの人望だ」

と彼が返す。

さんのおかげだろう」

部長がこっそり教えてくれたのだが、かなり必死にお願いしてくれたそうだ。

だから、部長も折れたのだという。

ちなみに、彼らも会場に入れるようになったことを聞いて、黄瀬は凄く面白くなさそうにしていた。


優勝した時に演奏した曲のほかに、この文化祭のコンサートのために練習した曲も演奏され、大盛況のうちにコンサートは終わった。

「ブラバンって意外と迫力ありますよね」

高尾が言う。

いつの間にかCDが増えていた宮地も同じことを思っていた。

生演奏は、彼女のクラリネットが初めてで。でも、それはアイドルの楽曲でしかも楽器はひとつ。

迫力は全然違う。

吹奏楽部の片づけが終わるまで黄瀬は学校にとどまった。

元々の客としてきていたので、こちらが追い出すのも、と思っていたのだが、結局女子に黄瀬ということがばれて軽いサイン会が始まり、帰れなくなったのだ。

それを遠巻きに見ていたらは「先に帰るね」と声に出さずに黄瀬に言って本当に彼を放って帰って行った。

「黄瀬、ちゃんに愛されてるねー」

からかい口調で高尾言ったら、黄瀬がぶすくれた。

そして、宮地に視線を向ける。

「あんたが、『宮地さん』スよね」

と視線を鋭くして言う。

「んだよ。轢くぞ」

(くそ生意気な表情しやがって)

「...別に。どんなもんか気になってただけっス。オレんがカッコいい」

黄瀬がいい、

「は?」

と宮地が声を漏らした。

「じゃあ、オレ帰るんで」

そう言って黄瀬は帰って行った。

「何だったんだ」

緑間にいうと

「わかりません。そして、俺に言わないでください」

と返された。

それもそうかと納得した。



文化祭が終わり、祭りの余韻というものが無くなった放課後。

吹奏楽部の部長が帰り支度をしている。

「帰るのか?部活は?」

「オレたち3年だろう?」

そう指摘されて、彼が引退したのだと気付いた

「ああ、そうか」

「バスケ部はまだなのか?」

からかうように彼が言う。

「あー、ウィンターカップあるからな」

がりがりと頭を掻く。

「そうか」

「...お前、音大とか狙ってんの?」

「総文で優勝できたから狙える圏内に入った」

ニヤッと笑って言う。

「ブラバンってみんなそうなのか?」

ふと思って聞くと

「そうでもない。高校でやめる奴もいるし、大学もサークルに入ったりだよ。バスケだってそうだろう?」

と肩を竦めて彼が言う。

「...そーいやそうだな」

「おんなじだよ」

そう言って彼は帰って行った。

塾というか、音楽教室があるのだそうだ。

「大変なー」

彼の背中を見送りながら宮地は呟いた。









桜風
13.12.9


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