| 「お!」 思わず弾んだ声が漏れる。 「セーンパイ」 クラスメイトの緑間とともに特別教室から戻っていると知っている人物を見かけ、友人をおいて高尾は駆けていった。 振り返ったセンパイこと、はため息を吐いた。 「わ、いきなりため息っすかー」 「高尾、鏡を見てきなさい」 「え、こんなキュートな高校1年の男子なんていないじゃねーすか」 ぶうぶうと膨れる。 「キュートに謝れ」 真顔で言われた。 「こんにちは、先輩」 追いついた緑間が挨拶をする。 「こんにちは、緑間君。高尾がうるさいわ」 彼女は頷いて挨拶を返した。 「俺にはどうしようもありません」 緑間が返す。 「真ちゃんひでー!」 「はー...高尾。かわいくなったらかわいがってあげるから、とっとと教室に戻りなさい」 はそういってその場を去っていく。 どうやらトイレの帰りだったようだ。 「高尾...」 「ねえ、真ちゃん。俺ってキュートじゃねーの?」 「先輩と同意見だ」 緑間は静かにそういって教室へと足を向ける。 「え、ちょっと待てってー」 すたすたと歩いていく緑間を追いかけるように高尾は駆け出す。 秀徳高校。 男子バスケットボール部は、都内の三大王者と呼ばれる一校だ。 地区予選で必ず決勝リーグに駒を進め、全国大会の常連となっている。 今年は、キセキの世代のナンバーワンシューターを獲得し、全国大会への距離をぐっと縮めた。 そして、秀徳高校バスケットボール部には女子部もある。ただし、こちらは男子部に比べて実力がやや劣り、都内のトップクラスといっても過言ではないが、全国大会の常連とまではいえない。 よって、学校側も力のいれ方が違う。 男子部には専用体育館があるが、女子部にはない。 「大坪君」 クラスメイトに声を掛けられて彼は振り返った。 「。どうした?」 「高尾が懐いて仕方ないんだけど...」 顔に「迷惑だ」と書いてある。 「んー、まあ。適当にあしらってくれ」 困ったように彼が言う。 「もうちょっとかわいかったら、かわいがってあげるのに...」 彼女がため息混じりに言う。 「かわいいじゃねーか。懐いてまとわりついて」 他クラスだというのに、なぜかクラスに来ていた宮地が笑う。 「かわいい?かわいいとはああ言うのを言うのよ?」 真顔で返された。 彼女が指さした先には、確かにこの学年一小さな女子がいた。 顔もまあ、あどけなさがあってかわいいとは思う。 それに対して、は女子の中では背は高い方だし、共学というのに女子からラブレターなるものすらもらえるほどの男前なのだ。 「や、どうだろうな」 (おまえに比べたらふつうの女子はたいてい可愛いんじゃね?) 口に出さずにそうつっこみを入れた。 「宮地君ってホント失礼ねー」 そういった後に「あんなに可愛いのに...」とため息混じりに言った。 「あのさ、ひとつだけ確認していいか?前も聞いたことあるかもしれねーけど」 「たいていの人に確認される事項だと思うけど。はい、どうぞ」 が面倒くさそうに言う。 「おまえ、女子が好きなの?」 「小さくて可愛いものが好きなの。女子でも大きくて可愛くなかったら好きじゃない」 きっぱりという。 「やっぱり、おまえと真逆なのが好きなのな?」 宮地はそう口に出し、にこりとほほえんだ彼女のヘッドバッドを食らう羽目に陥った。 |
桜風
13.4.8
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