| 4月の下旬のある日の放課後。 その日の部活は連絡事項から始まった。 練習メニューが変更があるときに連絡事項として練習前にキャプテンか監督から話しがある。 今回は、今週末の練習についての話だった。 「女子部が練習試合をすることになったからウチは練習を休みとする」 その言葉に体育館は少しざわついた。 なぜ女子部のために、という雰囲気だ。 「どうも向こうの体育館での練習試合がブッキングしたらしい。ウチもそろそろオフも必要だと思っていたから監督と相談してその日をオフにした。ちょうどいい。自主練習がしたければ女子部の練習試合の後にしてくれ」 大坪の言葉に皆は返事をし、練習が始まる。 「オフねー...」 全体練習後の自主練まで終わらせて更衣室から出て呟く。 「真ちゃんは自主練にくるの?」 「当然だ。毎日練習をしてこそ、人事を尽くしたといえるのだよ」 「体を休めることも人事を尽くすに入るんじゃねーの?」 そう言いながらリアカーとそれを牽引している自転車をおいている駐輪場に向かった。 ふと、体育館に明かりがついているのを目にする。 「まーだ、どっか練習してんだ」 「練習試合が週末にあるのだ。練習に力が入るというものなのだろう」 緑間が素っ気なく言う。 「かもなー。あの体育館って女子部以外に何部だっけ?」 「卓球、バレー..バドミントンもなかったか?」 「は?マジで??」 そんな中だと練習を十分にすることは出来なのではないだろうか。 「女子部って弱くねーよな?」 「都内ではトップクラスらしいな。男子に比べると評価はやはり劣るが」 「ちょっと覗いてみようぜ」 そう言いながら体育館に足を向ける高尾に緑間は盛大にため息を吐いた。 ボールの弾む音がする。残っているのはバスケ部のようだ。 ただし、その音はひとつ。ボールを回しているような声もしない。 つまり、今の時間残っているのは一人と言うことになる。 そっと体育館の中を覗いてみた。 「イメトレ...」 高尾が呟く。 緑間のようなシュート練習ではなく、ドリブルからシュートまでの流れを復習しているようだった。 「巧い..よな?」 「そうだな」 彼女は高尾たちに気づく様子がなく、淡々と練習をしていた。 「うおっ、フェードアウェイ!」 高尾が思わず声を漏らした。 彼女のシュートはゴールのネットを揺らす。 息を吐いて彼女は振り返った。 「あ、ども」 高尾が挨拶をし、緑間は軽く会釈をした。 「どうもー」 彼女はにこりとほほえんだ。 「どうしたの?」 タオルで汗を拭いながら彼女が問う。 「あ、いや。遅くまで精がでますねー」 高尾が言う。 「そうねー。男子部の練習を邪魔ましてまで試合組んじゃったから負けらんないでしょ?緑間君と高尾君」 「知ってるんですか?」 緑間がにわかに驚きの声を上げた。 「あなた、自分が有名人という自覚を」 「オレは?」 「いつも一緒にいるって大坪君に聞いてるからね」 彼女が苦笑した。 「なんだー、オレは真ちゃんのオマケ?」 不満そうに高尾がこぼした。 「自力ではいあがりなさい」 彼女が笑う。 「センパイは、キャプテンと同じクラスとか?」 「うん、同じクラスよ。だから、今日の昼休憩に拝み倒してみたわ」 「ブッキングのことっすよね?」 「うん。バドが、ウチが練習試合入れた日を1週間後だと勘違いしてたみたいで」 彼女が苦笑した。 「ん?て、ことは。センパイがキャプテンを拝み倒す必要ねーじゃねーすか」 高尾が言うと 「お願いしやすいのはこっちだったからね。同じバスケ部として。クラスメイトとして」 肩を竦めて彼女が言う。 「悪いわね、迷惑かけて」 彼女が両手を合わせた。 「いえ」 と緑間が言い、 「だから、センパイ悪くねーじゃねーすか」 と高尾が言う。 「ありがとー。大坪君、いい後輩持ってるじゃない」 彼女が笑った。 「ところで、センパイ。ちょっと聞いてみていいっすか?」 「なに?」 「身長、いくつっすか?」 「176よ」 (オレと同じじゃん...) この体育館の入り口から彼女をみていて、大きいなとは思っていたが... 「高尾、帰るのだよ。先輩の練習の邪魔をしているのだよ」 「あ、そか。あと1個いいっすかー?」 「なに?」 高尾の横で緑間がため息を吐き、それをみて彼女は笑っている。 「センパイの名前」 「」 「んじゃ、センパイ。ガンバッテくださいねー」 「失礼します」 高尾たちが背を向けるとすぐにボールの弾む音が聞こえ始める。 本当に邪魔をしていたようだ。 「練習熱心な人だなー」 「キャプテンを拝み倒したということは、やはり女子部のキャプテンなのだろう」 緑間の言葉に「だろうねー」と高尾は頷いた。 |
桜風
13.4.15
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