| ある日、昼休憩にぷらぷらと中庭を歩いていると校舎の陰から伸びる影に気づく。 そちらに足を向けてみると、先日知り合いになったがしゃがんでいる。 (調子わりーのかな?) 立ちくらみとかでしゃがんでいるのかと思っていたが、 「にゃーにゃー」 と彼女が言ってる。 「ぶっ!」 思わず高尾が吹き出し,彼女は勢いよく振り返る。 「な!?」 「何してんすかー」 クツクツと笑いながら高尾は彼女の隣にしゃがみ込んだ。 「ああ、子猫」 「いつから...」 「ちょい前すよ。まあ、センパイが「にゃーにゃー」言ってたのは聞いてますけど」 彼女は両手を地面につけてうなだれる。 「猫が好きなんですか?」 「『うつくしきもの』が好きなの」 「...は?」 「勉学にいそしみなさい」 彼女はそう言って子猫をなで、立ち上がる。 (やっぱ、でけーなー...) 「高尾君、お昼は?」 「さっき食いました」 「あ、そ」 「でも、おごりなら何か食えそうな気がしてますけど?」 高尾が笑う。 「口封じ..じゃなかった。口止め料は払っておくわ」 はそう言って歩きだし、高尾は彼女に続いた。 「猫好きって内緒なんですか?」 「いいえ。大坪君はわたしがうつくしきものが好きなの、知ってるし」 「だから、そのうつくしきものってなんなんですか」 「だから、勉学にいそしみなさいって言ってるでしょ」 彼女はそう言って笑う。 (あ...) 思わず足を止めた高尾に「なに?」と彼女が問う。 「や、顔が近いってのも、悪くねーなーって思って」 高尾の言葉に彼女は首を傾げた。 「ま、いいわ。何が食べたいの?」 「てか、何の口封じ..じゃねーや。口止めなんすかー?」 「猫と語らってたこと」 「ああ、『にゃーにゃー』のほうっすねー。了解」 「わざわざ口にしない!」 彼女が指摘した。 恥ずかしそうにそう言った彼女の顔は少しだけ赤くなっており、高尾は笑った。 「ねー、大坪さん」 「何だ」 練習の休憩中に高尾が声をかける。 「うつくしきものってなんですか?」 「枕の草子か?」 「枕の草子?出典それなの?!」 高尾が声を上げた。 「どうした、うつくしきものって」 なぜそんなことを問われたのかわからない大坪が問う。 「や。今日の昼間、センパイにあって。猫が好きって」 「ああ、そうか。なるほど。確かに枕草子だな。読んで勉強でもしろ」 苦笑して大坪が言う。 「ねー、真ちゃん。枕草子で『うつくしきもの』って知ってる?」 「まだ習っていないが、教科書に載っているだろう」 緑間が言う。 (仕方ねぇなー...家に帰ってググるか) 高尾はこの場での理解を諦め、練習に気を向けた。 |
桜風
13.4.29
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