| あまり早く行くと物凄く楽しみにしているみたいだ。なんだかちょっとカッコ悪い。 だが、遅れるのは言語道断。 何より、彼女のほうが先に来ている場合、早めに行くとそれだけ早く入場できてたくさん遊べる可能性がある。 そんなことを悶々と考えながら、一応約束の時間より少し早く待ち合わせ場所に着いた。 「チケットは高尾が持ってて」 先日、体育館で約束をしたとき彼女に言われた。 「何で?いいっすけど」 「私、チケットとの縁がないからね」 肩を竦めて彼女が言った。 何のことか少し考え、思い至ったことがある。 「今年、オレもそれ逃してるんだけど...」 「高尾にはまだ未来がある!何より、秋には別のチケットをかけて試合があるじゃない」 「...ま、いいっすよ」 と、そんな会話をしているのでチケットは高尾が持っている。 「高尾!」 声を掛けられてそちらを見た。 (...ちょっとは期待したんだけど) 本日もはスポーティな服装だった。 足元はスニーカーだし、ボトムはデニム。七分丈と少しだけ短めではあるが、色気と言うのが少し足りない気がしないでもない。 そして、上はプリントTシャツ。 はっきり言って、『動きやすさ』というのがテーマだろう。どう見てもそうだ。 遊び倒す気満々のようである。 「高尾、その足元で大丈夫?」 「あー、平気平気。心配いらねーすから」 軽く返す。 なんだか自分のほうが物凄く気合が入っている気がする。 (ま、いっか...) 彼女らしいとえば、彼女らしいのだ。 「んじゃ、行こっか。ちゃん」 「高尾、そろそろ突っ込んでもいいかしら?」 「何が?」 「どんどん私の呼び名が気安くなってるんだけど...」 「じゃあ、さん?」 「あんま変わってない」 「まあ、良いじゃん。今日だけ、今日だけ」 軽くそう言って彼女手を引いてゲートに向かった。 入場してすぐに彼女はショップに入った。 「え、今入るの?荷物増えるっすよ。遊び倒すなら、身軽の方がいいんじゃねーすか?」 高尾が言うが彼女はそれを気にせずに買い物を始める。 レジで精算を済ませてきた彼女が 「はい、高尾の」 とキャラクターの耳が付いたカチューシャをポスッと彼の頭に挿した。 「へ?」 「あはっ、似合う似合う」 笑う彼女を見て高尾は苦笑した。 かなり浮かれている。彼女も相当楽しみにしていたということなのだろう。 「さんは?」 「私?いいよ」 ここでなぜか遠慮する。 「ダメっしょ。オレだけ浮かれてるみたいだし。浮かれるならいっしょじゃねーと」 そう言って高尾もレジに向かった。 2人揃ってカチューシャを頭に挿して園内を歩く。 時々園内を歩いているキャラクターを見つけては彼女は駆け寄っていた。 (いーなー) 遠慮なくキャラクターに抱きついている彼女を見て高尾は心の中で呟く。 これまでのの言動から察するに、どうやら自分は小さくないから可愛くないらしい。 だが、先ほどからが抱きついているキャラクターだって、彼女より大きい。 なのに、可愛いと彼女は喜んで抱きついているのだ。 (っかしーよな...) 「高尾!」 弾んだ声で彼女が名前を呼ぶ。 「せめて『和成君』って呼んでくれたら、オレは拗ねなくて済んだのになー...」 そう独り言を零して「へいへい」と返事をする。 デジカメを持ってきている高尾は彼女のリクエストに答えて写真を撮っている。 現役バスケ部のは体力がある。そして、絶叫系、ホラー系なんでもござれで、本当に園内を遊びつくすつもりのようだ。 走りやすいスニーカーで来たのはその気合の表れのようだ。 「高尾、足大丈夫?」 「うん、平気っすよ」 (ちょい痛いけど) それに対して自分はサンダルでやってきた。ちょっと後悔の真っ最中なのだ。 「...場所取りしようか」 不意に彼女が言う。 「場所取り?」 「パレード」 「へ?けど、さんってオレくらいタッパあるんだから、ちょっと後ろの方でも全然見えるっしょ。目も良いって...」 「いいじゃん。大人気なく、最前列で見たいんだもん」 そう言って彼女が微笑んだ。 (あ...) 高尾は肩を落とす。これは自分への気遣いだ。 確かにサンダルで歩きまくったから足が痛い。 「さん、カッコ良すぎ」 ポツリと呟く高尾の声はに届いたが、気付かない振りをした。 |
桜風
13.5.27
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