招き猫 4





 彼女に案内されてついていくと、たくさんの動物がいる部屋に連れて行かれた。

主にやはりペットとして人気のある犬や猫が多いが、それ以外にも初めて見る動物もいた。

彼女が言うには、この部屋にいる動物は施術後の経過観察をしている子が主らしい。

別の部屋には、病気治療中の子もいるとのこと。


とあるケージの前で彼女が足を止めた。

「ほら、この子」

「あら、かわいい」

玲央の記憶にあるのは、血と泥にまみれていたあの姿しかなかった。

だから、こうして元気になってきれいにされている姿を見ると、別の子ではないかと思ってしまう。

「ねえ、さん。本当にこの子?」

「ん?証拠をお見せしましょう」

そういって彼女はケージから三毛猫を取り出し、玲央に向けて「ほれ」と腹側を見せた。

「ついてるっしょ?」

「えっと。オスの三毛猫ならついてるのあたりまえじゃないの?」

そういえば、初対面で彼女はついていることを口にしていたと思いだす。

「うん。三毛猫でオスって珍しいのよ。まあ、小難しい話は面倒だしここでは説明しないからグーグル先生に相談してみて」

「...そうします。でも、そうか。この子か。美人ねぇ」

「でしょ。超イケメン」

そういって彼女は笑う。

「学校卒業する時、連れて帰りたくなったら言ってね」

彼女がそういう。

「え、でも...」

「まあ、そうなると...あと2〜3年後でしょ?この子もご高齢になるからあまり勧めないけどね」

少しだけさみしそうに彼女が笑った。

「そういえば、名前は?」

話題を変えてみることにした。

「ん?キンタ..」

彼女に半眼を向ける。

(まさかとは思うケド...)

「ロー。キンタローですよ?『マ』を期待した?」

「いいえ、期待なんてするわけないじゃない」

呆れたように玲央が言うと彼女は愉快そうに笑う。

その笑顔を見て玲央も笑ってしまった。

「キンタロー、命の恩人の玲央くんだよ」

玲央の顔の前にキンタローの顔を持っていき、彼女が言う。

玲央は驚いたように彼女を見た。

「ん?股がいい?」

「もうそっちのネタは良いです」

「じゃあ、名前で呼んだこと?嫌だったら今のうちだよ。今なら修正可能だからね」

玲央は首を横に振る。

「なら、玲央くんで固定。けってーい」

「にゃあ」

タイミングよく彼女に抱えられているキンタローも鳴いた。

玲央と彼女は顔を見合わせて吹き出し、「キンタロー、空気読める!」と笑いあった。



「最近やけに楽しそうだな」

チームメイトに声をかけられて玲央は首をかしげる。

「そう?」

「そうそう。レオ姉、最近は休みのたびに出かけてるじゃん。まさか、カレシができた?」

「仮に、恋人がいたとして。それは『カノジョ』よ」

半眼になって返すと適当に笑ってごまかされる。

確かに、ここ最近休みに時間があればあの病院に通っている。

キンタローには会えなくなったが、そこで知り合った動物の経過を見に行くのが楽しいのだ。

みんな元気になって退院していく。

迎えに来た飼い主も嬉しそうで、それを見送る彼女が少しさみしそうでもあり、嬉しそうに笑っている。

それを見るのが好きだった。

キンタローは大人しく彼女の家で留守番をしているそうだ。

一度、これだけ動物がいるのだから連れてこられないのかと聞いてみたらそれは難しいと言われた。

「ここで預かっている子たちって、施術後の経過観察とか病気治療中だからね。キンタを連れて来たら、両方によくない」

つまり、健康なキンタローに何か移る可能性もあるし、健康だからキンタローは特に症状が出ていないが、もしかしたら保菌しているかもしれないから、弱っている動物には発症する可能性がある。

そのため、彼を連れてくることはできないというのだ。

それに納得した玲央はキンタローを連れてくるようにお願いするのはやめたのだった。








桜風
13.7.1


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