| と約束した祇園祭の日。 玲央が迎えに行くといったが、彼女は待ち合わせを提案してきた。 無理に迎えに行くのもなんだかおかしいと思った玲央は彼女の提案に応じた。 待ち合わせ時間になっても彼女がやってこない。 これだけ顔を合わせているのに、携帯の番号の交換をしていない。 待ち合わせにするといったときに聞こうと思ったのだが、そのタイミングで急患がやってきた。 彼女の職場にやってきているのだから、仕事優先が当然で。 だから、玲央は仕方なく番号の交換をあきらめた。 「昔の人はすごいわよねぇ」 携帯電話の普及前は、これが当たり前だったのだ。 相手が来るかどうかわからず、期待しながら待ち、遅れている場合は、何かあったのかと心配になる。 「お待たせ」 やってきた彼女はあまりにもいつも通りで 「何かあったのかって心配したじゃない」 と玲央が少しだけ鋭い声音で言う。 「ごめんごめん。昔の知り合いがいてね」 苦笑して彼女が返した。 その表情を見て、玲央はそれ以上何も言えなかった。 「相変わらずの人混みだね、祇園さん」 「昔はよく来てたの?」 玲央に問われて 「んー、ちょくちょく来ていた時期はあった」 と少しだけ懐かしそうに彼女が言う。 「デート?」 思わずそう問うて、玲央は後悔する。 玲央のその心情を察したらしい彼女は苦笑した。 「と、世間では言うかもね」 (まったく...) 玲央は、少し落ち着けばいいのに、と自分に対して呆れてため息を吐く。 「聞きたい?」 彼女が顔を覗き込んで問う。 「正直、聞きたくないけど、聞きたい」 「どっち」 「興味本位ではないのよ。でも、何かしらね。落ち着かないっていうか...」 「面白い話でもないんだけど?」 「さんが話したくないなら..って。ただ、ひとつだけ確認させて」 「はい?」 「今、彼氏いる?」 「いないわね」 「結婚は?」 「今はしてない。確認2つ目になってるよ」 「じゃあ、2つ。する予定は?」 「彼氏いないのに?3つ目」 「顔も見たことない親同士が勝手に決めた婚約者、っていうテレビでありそうなものもいないってことね?」 「うち、そこまで裕福な家じゃないもの。いたとしても、知らされていない以上、『いない』で間違いないと思ってるけど?全部で4つの質問に答えました」 彼女は肩を竦めていう。 「...じゃあ、いいわ。4つも質問に答えてくれてありがとう」 「どうしたしましてー。んで、もういいの?」 彼女の問いに玲央は苦笑した。 「少しは格好つけさせてよ。こう見えても男の子なんだから」 「知ってるよ」と彼女はつぶやく。 「ん?さん何か言った?」 「いいえー。んで、祇園さんで何するの?山鉾みたいの??」 「そうねぇ」 そういって玲央が彼女の手を取る。 「デート、かしら」 「おおせのままにー。お姉さんが何かおごってあげるよー」 適当に彼女に返されて 「あら、嬉しい」 とその厚意を素直に受け取る。 「玲央くんのそういうところは、大人だなと思うよ」 彼女が言うと玲央は首をかしげる? 「そうかしら?」 「変に意地を張らないところ?自分の身の丈を知ってるところっていうか」 「格好つけさせてってさっき言ったばかりなのに」 くすりと笑って玲央が言う。 「言われてみれば、そうね。じゃあ、子供だ」 「あら、少し見直してくれたままでいいのよ?」 そういった玲央の言葉に彼女は笑った。 しばらく歩いているとの携帯が鳴る。 (ああ、タイムアップね...) 「わかった」 緊急とわかる声音で彼女は電話に応じて通話を切った。 「玲央くん、ごめん」 「はい。約束だもの、仕方ないわ」 「気を付けて帰るのよ。変なのにからまれたら、その自慢の脚を使ってダッシュで逃げて。いいわね」 「ええ。さんも、気を付けてね」 玲央の言葉に頷いた彼女はそのまま人込みの中へと溶けていった。 |
桜風
13.8.19
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