| 近所のスーパーで買い物をしていると少し陰った。 店内でそれは何だろう、と思って見上げてみると火神の姿があった。 「部活は?」 「禁止」 「何やらかしたの?」 不思議そうに自分を見上げるを見下ろした火神はため息を一つ吐いて 「まあ、怪我..みてーなもん」 とちょっとだけ濁していう。 「大変ねー、体が大きいと」 火神はそんな感想を漏らすの手元を覗き込む。 「自炊してんの?」 「うん。たまにサボってるけど。基本的には」 「へー」 気のない相槌をひとつした火神もスーパーの籠を持っている。 「当番制?」 火神の持っている籠の中は、おかずになりうる食材が入っている。 「あ?ああ。オレ一人暮らしだから」 「え、ホント?」 目を丸くして言うに 「そっちこそ」 と火神が返す。 こちらも食材を買っている。中身からしてカレーかシチューか。はたまた肉じゃがか... 「こっちもお一人様です」 笑ながらが返す。 「あ、そうなのか?」 「うん。高校に上がる年に親の海外赴任が決まったからね」 「どこ?ついて行きゃ良かったんじゃね?」 「でも、3年で帰ってくるって言ってたしね。そんなことを色々と考えての残留よ。あと、親の赴任先はアメリカ」 「アメリカ?マジで?!オレちょっと前までいたぜ」 火神が言うと 「知ってる」 とは苦笑する。 何で知っているのだろう、と思ったがはカントクと仲が良いから色々と聞いているのかもしれない。 「帰国子女であの英語の点数はないわ!って聞いてる」 「カントク...」 唸るように、恨めし気に火神が言う。 「まあまあ。バスケ部は相変わらず色々と賑やかで良いわね」 笑って彼女が言うから「別に、ふつーだろ」とこれ以上カントクへの恨み言を口にすることができなかった。 買い物を済ませて並んで帰る。 「部活の禁止っていつまで?」 「来週」 「火神君タイプは動いてないと落ち着かなさそう」 「まさに今それ。休んでる場合じゃねえってのに」 ぶつぶつと文句を言っている火神にはクスリと笑う。 拗ねて子供のようだ。 「男の子ってホント子供よねぇ」とリコがたまに零しているが、それには深く同意できる。 「なに?」 「ううん。焦っても仕方ないみたいだしさ。これ、持とうか」 そう言って自分の持っている買い物袋を火神に向けた。 数秒沈黙した火神は「別にいいけどよ」とそれを受け取り、歩き出す。 「え、ちょっと。冗談だから」 「別にいいって。少しくらい筋トレの足しになりそうだし」 そう言ってすたすた歩く火神に少し駆け足でがついて行く。 マンション前のオートロックを解除していると、そういえば、と火神が振り返った。 少し離れたところで、体を折ったが膝に手を当てて体を支えている。 「先輩?」 「速いっ、よ!!」 「あー...」 そうか、と思い「すんません」と返す。 肩で息をしている彼女を待って一緒にエレベータに乗る。 「大丈夫、か?」 「私、こんな体力なかったっけ?」 「や、知らねぇけど」 「独り言よ」 が憮然と返すと丁度『チン』とエレベータが目的の階に着いた音を鳴らす。 「ありがとう」 そう言って手を差し出したに買い物袋を渡した。 1時間後。 インターホンが鳴り、火神が応じる。 ドアを開けるとがいて「ちょっと上がらせてね」と言う。 キッチンミトンを両手に嵌めて鍋を持っている。 「お、おお」 突然の来訪に驚いた火神は一応頷いてドアを支えて彼女を玄関に入れ、スタスタと入っていくその背を追った。 鍋からはカレーの匂い。 つまり、おそらく彼女の夕飯はカレーになったのだろう。 「鍋敷きは?」 「あ、そういうのねぇから..これ」 「それ、学校のノートでしょ!勉強しなさい。あ、その雑誌は?」 「あー、うん」 窘められてちょっとしょんぼりしながら彼女が目を向けていたバスケット専門誌をテーブルの上に置く。 その上に彼女は鍋を置いた。 「さっき荷物を持ってもらったお礼。でも、鍋は洗って返してね」 そう言うだけ言って火神の家を後にする。 「お、おう」 ぱたんとドアが閉まった後にやっと火神は頷いた。 |
桜風
14.8.11
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