友達以上 8






 夏休みが明けて久々の登校をした。

教室に行く前に生徒会室に寄って土産を置く。

海外、どこにでもある『名物』のマカデミアナッツチョコだ。

ハワイだろうと、ヨーロッパだろうと当たり前のように特産品のように鎮座しているそれはある意味世界最強だと思う。


教室に着くと、久々にクラスメイトの顔を見て、心の中で名前の確認をする。

ひと月近く顔を合わせていなければ忘れてしまっても致し方ないことだ。

特に仲の良い友人にはこっそりと土産を渡して、夏休み中の話や課題などの情報交換を行った。


昼休憩はいつも弁当持参で、今日は飲み物だけ買おうと思って食堂に向かってみた。

先輩」

声をかけられて振り返ると黒子がいた。

「久しぶり」

「お久しぶりです」

そう返した黒子の背後をきょろきょろとみる。

「どうかしたんですか?」

「黒子くんと言えば、火神くんかなって」

そう言うと彼は苦笑し、「食堂に直行しましたよ」という。

「黒子くんは?」

「ちょっと寄りたいところがあったので。さっきの授業はちょっと早めに終わったんです」

なるほど、とは頷く。

先輩も食堂ですか?」

「うん。飲み物を買いにね。お昼はお弁当だから」

「そうだったんですね」

そんな会話を交わしながら2人は食堂へと足を向ける。

「黒子くんはそんなに日焼けしてないね」

ふと思って口にした。

「そうですか?ちょっと焼けましたけど...」

左腕の袖をちらっと捲って彼が言う。

「あんま変わんないじゃない」

が笑うと少しだけむっとした表情を浮かべた黒子だが、気持ちを切り替えたようでそれ以上は何も言わなかった。

「そう言えば、犬を飼い始めたんだって?バスケ部で」

「ええ、そうです」

「黒子くんに似てるって聞いた」

「んー、自覚はないです」

少し悩んだように黒子が言う。

「今日の放課後見に行こうかと思ってる」

「来てください」

「あ、じゃあ。自販機あっちだから」

「そうですね。では、放課後」

食堂入口でそう別れて、黒子は本日の昼食にうどんを選んで食堂内の火神の姿を探した。

彼は体が大きいのですぐに見つけられる。

「お待たせしました」

トレイを置きながら火神が取っておいてくれた席に着く。

「おう。さっき先輩と一緒に居なかったか?」

聞かれて首を傾げる。

先輩ですか?」

「そう」

火神が頷く。

「先輩は自動販売機に用事があったらしいです。お弁当の人らしいですよ。火神くん、先輩に用事があったんですか?」

「あ、いや。別に...」

特に用事はない。

用があれば帰宅してから隣の家のインターホンを押せば済む話なのだ。

触れて回る理由がないので、この事実を知っている者はいない。少なくとも、自分の友人やチームメイトには。

「あ、でも。今日の放課後バスケ部に来るみたいですよ」

「へー」

少し満更でもない声で相槌を打つ火神に黒子は驚いたように眉を上げた。

普段から人間観察をしており、その観察対象である火神の見せる違和感なら小さくても逃すことはない。

「オレ、足りねぇからパンも買ってくるわ」

そう言って席を空けた火神に黒子は嘆息を吐く。

黒子だけだと席が空いていると思われるのだ。これだけ混んでいる食堂で空席が見逃されることはないだろう。

出来うる限りはやく食べ終わることを目標に掲げた黒子は箸を動かし始めた。









桜風
14.9.8


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