友達以上 9






 放課後になり、生徒会室に鞄を置いてはバスケ部が部活をしているであろう体育館に向かった。

「おー、やってるやってる」

ひょっこり顔を覗かせて呟いた。

「あら、

「どうもー。わんちゃんは?」

リコに軽く挨拶をして体育館の中を見渡す。

「ああ、今は..ほら。あっち」

体育館の向こうのドアにいた。

「あ、ホントだ。触っても大丈夫な子?」

「賢くて、大人しい子よ」

頷きながらリコが言う。

「じゃあ、構ってこよう。あ、名前は?」

「テツヤ2号。長いから『2号』って呼んでる」

「名前の元となった本人に異論は?」

確か、黒子の名前が『テツヤ』だったと思う。

「無いみたい」

苦笑するリコに

「おおらかだねぇ」

そう言っては体育館の外側から反対側のドアに向かって行った。


「2号君」

リズムよく鳴いていた犬が振り返る。

首を傾げるその仕草が可愛い。

「わー、可愛い」

頭を撫でてみると、気持ちよさそうに目をつむる。

「わはは、黒子くんより表情豊かじゃない」

そう言ってさらに撫でている。

「失礼ですね」

少し離れたところに立っていた黒子は、彼女の独り言が耳に入って憮然と呟く。

突然の来客に一瞬足が止まったバスケ部だったが、「ほらー!足を止めない!!」とリコに指摘されて慌てて練習メニューを再開する。

が2号を構っている間にメニューはミニゲーム形式に移った。

「あぶねぇ」

「ワン!」

目の前の犬が吠えた。

振り返ると大きな何かがさっと目の前に現れた。

呆然としていると「大丈夫か?」と声が降ってきた。

見上げると火神で、状況を把握していないに「わりぃ、」と日向が声をかけてきた。

パスのつもりが汗で手が滑り暴投してしまったのだ。

「あ、うん。何?」

「ボールがぶつかるところだったんだよ。そんなところで遊んでんじゃねぇって」

火神が言う。

「あー、うん。ごめん」

「火神!先輩!!生徒会長!!」

降旗が慌てて指摘する。

「です」

取り敢えず、丁寧語の語尾を付けた。

「ああ、ううん。私がぼーっとしてたから」

、大丈夫?」

リコも慌ててやってきた。

「うん。ごめん、練習の手を止めちゃったね。私もそろそろ行くわ」

びっくりした表情のままは立ち上がり、「ごめんなさい」とバスケ部の面々に頭を下げてその場を去っていく。

「あ、えーと。にけがもなかったことだし。ほら、練習再開よ!!」

パンパンと手を叩いてリコが促す。

審判役だった福田が笛を吹き、試合が再開された。

試合が再開されても動きは少しだけ緩慢だった。というのも、彼らも少なからず驚いているのだ。

日向の暴投なんて誰も予想ができていなかったと思う。

しかし、火神はボールの先にいる人物を庇うためにダッシュした。そのスピードが驚くべきほどのもので。

さらにいうと、確かにが危険だったがそこには2号もいて彼は吠えた。

犬の鳴き声でびくびくする火神がそれに怯まなかったのだ。咄嗟のこととはいえ。

というか、咄嗟であればあるほど本能的なものが大きく出てくるはずだ。

黒子は興味深そうに火神を眺めていた。



部活が終わり、片づけを終わらせて部室に向かう。

「あ、」とリコが校舎を見上げる。靴箱が部室と同じ方向にあるため、皆と共に歩いていたのだ。

生徒会室の電気が点いている。

「何かあんのか?」

「何だろう。一応顔を覗かせてくる」

そう言ってリコは皆と別れて校舎に向かった。

ー?」

「んー?」

作業をしていたは名前を呼ばれて振り返る。

「そろそろ下校時刻」

「そんな時間かー」

伸びをしながら応じたは部屋の中の時計を見た。

「ああ、ホントだね。帰ろうっと」

そう言って椅子から立ち上がる。

「何かあったっけ?」

リコが問う。

「ううん。まだ時間があるけど、ギリギリで始めたらバタバタしちゃうでしょ。あんま好きじゃないから」

そういえば、去年もそんなことを言っていたと思い出す。

「私も出てる方がいい?」

「いいよ。私がやりたくてやるだけだから。もうちょっと、ほかのみんなにも声をかけるから、その時にはできるだけ顔を出してね」

「助かる」

の言葉にリコが返す。

「そう言えば」

「何?」

鞄を持って戸締りの確認を終えたにリコが視線を向けた。

「今年、観葉植物は預からなかったけど、大丈夫だったの?」

「うん。去年はありがとうねー。おじさんにも迷惑かけちゃったし」

「それは、別に...」

少しだけ気にしていたのだ。ただ、あまり口を出すのも、と思って頼まれたら引き受けるという話を親にしていた。

「そういえば、2号君はどうするの?」

「どうって?」

リコが首を傾げる。

「学校が閉鎖している期間のお世話」

そう言えば考えていなかったと思ったが、

「まあ、賢い子だし。少しの期間ならうちでも大丈夫かな」

とリコが応じる。

「そっか。じゃあ、一安心だね」

はそういって頷く。

(良かったね、火神くん)

ただし、彼の住環境が知られたらまた別の話になるだろう。

そうなったときは協力をしようとこっそり思っただった。









桜風
14.9.15


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