| リコがムキになって立てた『捕獲大作戦』は、結局地味な勧誘を交代で行うと言うものだった。 しかし... 「さんいるかな?」 「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」 彼女のクラスを訪ねた日向が、ドア付近にいた女子生徒に声をかける。声を掛けられた生徒が教室の中に向かって「さん!」と名前を呼ぶ。 しかし、返事がない。 「あれ?」 「今日は学校に来てたの?」 「はい、さっきの授業の出欠でも返事してましたし...」 「そっか。トイレかもしれないし、いいよ」 そう言って日向は2年の教室のあるフロアに戻った。 「どうだった?」 待ち構えていたリコに問われて「トイレに行ってたのかも。不在だったぜ」と返す。 「また?!どんだけトイレが近いのよ!!」 始業チャイム前にも小金井が彼女のクラスを尋ね、1時間目が終わると伊月。そして、今は2時間目が終わって日向。 「次は誰にするんだ?」 「...そうねぇ」 顎に手を当ててリコが唸る。 「私が行こうか。トイレだって言うなら、トイレにも追いかけていくことができるし」 「や、それはやめたほうがいいんじゃね?益々遠ざかる気がするんだけど...」 日向の言葉をリコは黙殺し、丁度チャイムも鳴ったので次の授業に臨んだ。 「さん、呼んでくれる?」 「え、はい...」 ドア付近にいたのクラスメイトらしき女子に声をかける。 彼女は既に本日3回、の所在を聞かれているので、訝しげにリコを見て「さん!」と教室の中に向かって彼女の名を呼ぶ。 「またいないよー」 別の女子が言う。 「いないみたいです」 リコも教室の中を覗いてそれを確認する。 「わかったわ。ありがとう」 そう言ってそのまままっすぐ女子トイレに向かう。 トイレに入ってみると談笑している女子が数人いた。 「!」 名を呼んでみた。 ...返事がない。 「さん、トイレには来てませんよ?」 ビクビクしながら談笑していた女子の一人が言う。 「え、そうなの?」 「はい。私がここに来たとき、個室は誰も使ってませんでしたし、それ以降もさん来てません」 同じクラスだと言う彼女がそういうのだ。 「そう..あの子、休憩時間にどこに行ってるか知ってる?」 「いいえ。元々、友達がいない感じの子ですし。入学式から10日してやっと登校して来たんです」 そのことにリコは驚いた。 (どこか、体が悪いのかしら...だから、マネを全力で断ってるのね。...じゃあ、何で帝光中でマネなんてしてたのかしら?) 腕を組んでリコは首を傾げる。 考えを中断させるかのようにチャイムが鳴った。 「やばっ!」 彼女は慌ててトイレを後にした。 そして、のクラスの前に差し掛かったとき、彼女の姿を教室の中に見つけた。 (やっぱり、学校には来てるのね...) 一瞬、と視線を交わした。 彼女はフッと少しからかうように目を細めた。 (腹立つー!次こそ掴まえてやる...!) 心にそう誓ったリコは昼休憩を心待ちにしながら、4時間目の授業は上の空で過ごした。 昼休憩になった。 ドア付近の席に座っている女子の前にが立つ。 「今日はごめんね。変な2年生が入れ替わりで来てるでしょう?」 初めて言葉を交わしたクラスメイトに彼女は少し戸惑っている。 「わたし、これからまた逃げるから。ごめんけど、またいないって言ってくれる?」 「さんは、何で...」 「あの人たち、バスケ部なの。で、マネージャーになってほしいって頼まれてるんだけど。ヤだから、逃げてるところ。迷惑掛けて悪いけど。ごめんね」 そう言って彼女はふらっと教室を後にした。 入れ替わるように、先ほどやってきた2年の先輩がぞろぞろとやってきた。 「さん、逃げるって言って教室を出て行きました」 「何処に逃げるって?!」 ずいとリコに迫られた彼女は首を横に振る。聞いていない。 「逃げるんだから、行き先なんて言うわけないだろう」 「あったま来たーーー!!」 1年の教室の前で吼えるリコを何とか宥めてバスケ部は屋上へと向かった。 |
桜風
12.6.9
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