| 放課後、バスケ部が体育館に集まるとリコからインカムを渡された。 「これ、どうしたんだよ」 「アマチュア無線部に借りたの。一応、2人1組で行動ね。私は、ここから指示を出すわ」 そう言って校内図を広げた。 「...本格的だな」 「当然!あそこまで虚仮にされて、黙ってらんないっての!」 時間が来てバスケ部員達は体育館を出て行く。 相田リコ指揮官の下、誠凛高校敷地内では『捕獲大作戦』が展開されている。 しかし、そもそもに彼女が見つからない。 「黒子君、心当たりはない?」 リコは、全ての班から彼女が見つけられないという報告を受けて少しだけ苛立たしそうに黒子に問う。 「高いところとか、人が普通長時間いることが出来ないところとかですかね」 「...なんだそりゃ?」 黒子のコメントに小金井が呟く。 「いた!」 見つけたのは伊月で、指差した先に、確かにがいた。 「どこ?!」 地図に視線を走らせてリコが返す。既に時間の半分以上、彼女を探すのに使ってしまっている。 「渡り廊下の..上。1年教室棟と特別棟の間の渡り廊下」 「上ぇ?!」 リコが思わず声を上げる。 「あの子、どうしてそんなに高いところが好きなの?!」 「人が来ないからだそうです。あと、今回姿を見せてくれたのも、たぶん、そろそろ10分経つからこちらに同情してくれたのかと...」 (は ら た つーーー!!) リコは心の中で地団駄を踏み、「A班が1年教室棟、B班が特別棟で挟み撃ち!」と指示をする。 しかし、「もう遅いと思います」と黒子が言う。 「あー、消えた」と伊月が言う。 「へ?カントクー。さん、消えました」 「はあ?!忍者の末裔か!!」 吐き捨てるようにリコが呟く。 「面白くない...」 逃げながらは呟く。 中々見つけてくれないから姿を見せたのに、次への行動が遅すぎる。 逃げ足の速さには自信がある。 何せ、中学2年から全力で逃げまくっていたのだ。 元々脚には自信があったし、苦手な種目はとことん苦手だが、運動神経も悪い方ではない。 廊下を走っていると、聞いた声を耳にする。 ついでに、記憶力も頗る良い。 は進路を変えて、あえてそちらに向かって走り出した。 「いた!」 日向が声を上げる。 そして、彼女がなぜか自分に向かって駆けてきていることに驚いた。 普通、逃げているなら、掴まえようとしている人物を目にしたら進路を変えるだろうに... (気付いてねぇってのなら、チャンスだな) 彼女を捕まえるために部活の時間を割いているのだ。カントク命令と言っても、正直面倒だと心から思っていたのだ。 今掴まえて、あと3分くらい拘束していれば、時間になる。 「悪いな、さん」 そう言って手を伸ばしたが、彼女は軽く跳び、日向の背中をポンと押して彼の頭上を飛び越えた。 彼女に背中を押されたことでバランスを崩した日向は咄嗟に手を着いて転倒は免れたが、すぐさま彼女を追いかけることは出来なかった。 2人1組と指示されていたが、既に時間もないので独断で水戸部と別れたのが災いとなった。 「くっそ!本部、1年教室棟でと遭遇したけど、逃げられた」 「何やってんのよ!」 リコは当然日向を責める。 彼女は時計を見た。あと2分を切っている。こんなことなら30分にすればよかった。 「1年教室棟の出口封鎖!」 部員達に指示をした。 「よ!」 2階の窓から正面の木には飛び移った。 あと72秒。 あのカントクは無茶は言いそうだが、ルールは破らないだろう。 ルール内でギリギリのことはするだろうが... 「ー!」 すぐそばを火神が彼女の名を呼びながらウロウロしている。 「やっば...」 今は木の上だから逃げるのが至難の業だ。だから、この時間までここに逃げてこなかったと言うのに... あと10秒。 息を潜めてカウントダウンをする。 5...4...3 「掴まえました」 「わあ!」 ズルッと足を滑らせる。 はしっと彼がの手を掴む。 「時間よ」 インカムにリコの諦めたような声が届いた。 「さん、捕まえています」 黒子が返した。 「マジで?!」 「どこだ!!」 「1年教室棟裏のクスノキの上です」 「でかした!今すぐ迎えに行くから、首を洗って待ってなさいってさんに伝えておいてー」 鼻歌交じりにリコがそういう。 「首を洗って待ってなさい、だそうです」 「じゃあ、今から洗いに行くから、手を離して」 黒子が手を離せば落ちるが、落ちるとわかって落ちるのだから怪我をしない落ち方が出来える。 「いやです」 「わたしは負けたんだから逃げる気はないよ。黒子くんに捕まっちゃうとはなー...」 「僕だから捕まえられたんですよ」 黒子が言う。 「そっか。そうだよねー。2年間、苦楽を共にした仲間だもんね。中学時代、わたしが逃げまくってる様子を見てたもんねー...」 溜息混じりにがそういい、 「黒子くん、手を離して。でないと、あなたの腕がイカれる」 黒子は、あまり筋力のあるほうではない。を無理な体勢で支えていたら体を故障する虞がある。 「黒子、手を離せ」 ふっと黒子に掛かっていた負荷が軽くなる。 下から火神がの体を支えているのだ。 「...わかりました」 そう言って黒子はそっと彼女を掴んでいた腕を離す。 代わりに火神が彼女の背中を押して体勢を整えさせた。 「ちょっとどいて」 がそう言い、火神は数歩下がる。 「よっ!」 そう声を漏らしたは木から飛び降りた。 それに続いて黒子が木から降りてくる。 「さー!さん。ほら、入部届。特別に本入部届けだからね!」 バインダーに挟まれている紙をリコが意気揚々と差し出してきた。 「首は洗ってこなくて良いんですか?」 が言うと 「気にしないから、ちゃっちゃと書いて」 とリコが笑顔を顔に貼り付けて言う。 は部活動名とクラスと名前を記入した。 「さん、誠凛高校バスケ部にようこそ!」 リコが手を差し出す。 「よろしくお願いします」 その手をは握り返した。 |
桜風
12.6.10
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