グラデーション 5





マネージャーが入り、リコの負担が非常に軽くなった。

黒子が言っていたメンタルとフィジカルの支えと言うのは、イマイチ分からないが、が凄く働き者だと言うことは分かった。

何より、相手が求めるものを先に読んで準備している。

それだけでも凄く助かるものだ。

リコはよく「良い奥さんになるわよー」と褒め、「あんま、嬉しくない褒め言葉ですよ、それ」とが返す。

本当に嬉しくなさそうなので、凄く不思議だが、マネージャーとして優秀だし、彼女が少しヘンテコなのは気にならない。


さん」

「んー?」

休憩中に黒子が声をかけてきた。

「あのドリンクは、作らないんですか?」

「...今作っても意味ないと思うし。追々、ね」

苦笑してが返す。

「そうですか...」

「黒子くん、飲みたいの?」

「少し思い出したので」

黒子の言葉には苦笑する。

「まずは、カントクに許可もらわないと。あんな怪しげなドリンクは」



「日向さん、ちょっと買出しに行ってきます。休憩までに戻れなかったらそこにドリンクがあるので、すみません、セルフサービスで」

リコが不在なので、キャプテンの日向に声をかけると「おー、気をつけてけよ」と承諾された。

今日は、確か練習試合の申し込みが何たらかんたらと言うことで、リコは体育館に来るのが遅くなっていると聞いている。

必要なものを買い揃えて学校に戻る。自転車通学だからこういうときは楽で良い。

しかし、正門からここまで女子がウキウキしているのだ。

(何か、懐かしいよねぇ...いやいや、まさか)

この女子の空気は、懐かしい記憶の中で何度も見かけ、そのお陰で非常に苦労したことを思い出した。

苦い思い出である。

「戻りましたー」

そう声をかけて、体育館の中の空気がおかしなことに気づく。

「何かあったんですか?」

リコに声をかける。

「さっき、キセキの世代の一人がうちに来てね」

「黄瀬くんですか?」

が問うと

「会ったの?!」

とリコが聞き返す。

「いいえ。ただ、正門からここまでの女子の空気は、中学時代に面倒くさいまでに味わったのと似ていたので」

黄瀬は中学時代の同学年のチームメイトだった。モデルもしているほどの端正な顔立ちをしている彼は、勿論女子に人気があり、そんな彼と親しくしていれば嫉妬の眼差しを受けるのは自然なことだ。

彼に気に入られていたは、女子のやっかみを受けて逞しく生活をしていた。まさに、王道ともいえる中学生活だ。

自分の逃げ足の速さは彼のおかげと言っても過言ではないとは思っている。

(や、過言だね...)

自分の中で訂正する。

「けど、何で黄瀬くんが?あ、黒子くんに会いに来たんですね」

「何で自分だって思わないの?」

リコが首を傾げる。

「わたしの進路を知ってるのは、担任だけでしたから」

「チームメイトも知らないの?!」

「絶対に教えたくなかったので」

真顔で返すに「そ、そう...」とこれ以上聞いてはならないような気がしてリコはとりあえず頷くだけに留めた。

「あ、今週末の練習試合の件だけど」

「はい。何処とするんですか?会場は...」

「今年、キセキの世代を獲得した神奈川の海常高校よ。ま、新参者のうちが向こうに赴くことになるわね」

「その日、わたし風邪を引きます。ああ、持病の癪がぁ...」

はその場に蹲る。

「え、ちょっと...!」

「ああー、持病の癪が、次は日曜日に...」

「ふざけないで!」

リコが声をあげ、は諦めたように溜息をつく。

「どうしても、行かないとダメですか?」

「ダメに決まってるでしょう?!」

「...わかりましたー」

深い溜息を吐く


ずーんと沈んだは、練習試合のその日までそのテンションだった。









桜風
12.6.10


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