| 海常との練習試合は、誠凛が勝った。 コピーの能力がある黄瀬に苦しめられたが、黒子と火神の連携で何とか巻き返し、点の取り合いとなったこの試合を決めたのは、黒子からのパスで火神決めたアリウープだった。 ブザービーターなら、黄瀬にコピーされることはない。 神奈川と東京という地区の違いがあるため、公式戦で対戦するには全国大会に出場する以外ない。 海常バスケ部監督にかなり舐められていて業腹だったリコも、溜飲を下げて満面の笑みで相手監督に挨拶をして体育館を後にした。 黒子は試合中に負傷したため、海常高校バスケ部に紹介してもらった近くの病院で診てもらったが、脳に異常はなかった。 何か食べて帰りたいという話になったが、交通費を抜いた全員の所持金が21円と言う悲しい現実を目の当たりにして、皆は帰宅を選んだ。 しかし、リコが皆に肉を食べに行こうと満面の笑みで言う。 「その笑顔、あんまりいいことが起きない気がするんですけど」 が言うと 「何言ってんの。私の笑顔にケチつけないでくれる?」 とやっぱりいい笑顔でリコが言う。 リコが連れてきたのはステーキハウス。 そういえば、さっきその宣伝カーが走ってたな、とは納得した。 4キロのステーキを30分以内に完食すれば無料。出来なければ1万円自腹というギャンブルだ。 「カントクがギャンブルを打つとは思いませんでしたー」 が既に辛そうにしている部員達を眺めながら言う。 「そう?カントクってのは確かなデータと、あとは博打で作戦を練るものよ」 「初耳です」 そんな会話をしていると 「すみません」 と黒子が口を開く。 「どうした?」 日向が問うと 「ギブです」 と言ってフォークとナイフを置いた。 4キロのうち、おそらく100グラム食べたかどうかと言う程度の量で彼はギブアップ。 一方でリスみたいにモギュモギュ食べているのが火神で、ギブアップした彼らの残りを全てぺろりと平らげてくれた。 時間内に食べられなかったら食い逃げも視野に入れていた誠凛バスケ部は、彼の胃袋に救われた。 が一足先に店を出ると、さらに一足先に店を後にしていた黒子が黄瀬と共にどこかへ向かっているのを目撃する。 「あら」 遅れて全員が店から出てきた。 「全員いるわね」とリコが言う。 黒子の姿が見えなかったが、皆はどうせいつものように一番後ろにいるだろうと言っていたが、彼の姿がないことに気付いて捜索することになった。 カントクとしての責任があるとリコが言うのだ。 スタスタと迷いなく歩くの姿を目にした火神が追いかけてくる。 「知ってんのか?」 「具体的な場所は知らないけど、黄瀬くんとどっかにいってたのは見たから」 「何で止めねぇんだよ」 「何で止めるのよ。拉致られたならともかく、黒子くんが黒子くんの友達とどこかに行くのに口を挟む必要があると思えないんだけど。まあ、こんなことになったから、せめて何処に行くかくらい聞いておけば良かったとその点に関してのみ、後悔はしてるけどね」 暫く歩いているとストリートバスケが行われているリングを目にする。 「街中のリングって珍しいよね」 「向こうじゃ結構あったけどなー」 の言葉に火神が答え、そのリングの向こうの公園に黒子がいることに気がついた。 「黒子、あんなトコにいた」 「あ、ホントだ。黄瀬くんも一緒かぁ...」 眉間に皺を寄せるに 「ここで待っとくか?」 と火神が問う。彼女は、今日は相当大変な目に遭っていた。出来れば避けたいと思うのも分かる気がするのだ。 「ごめん、そーする」 片手で手刀を作って目の前に軽く掲げた彼女は申し訳なさそうに言った。 暫くなにやら話し込んでいたようだが、ガラの悪い5人組がコートに入っていったのを見て、は嫌な予感がした。 コートの使用権について話をしているようで、バスケでの決着を図るようだ。 元々コートを使っていたのは、3人。ということは、3on3だろう。 だが、後からコートに入ってきた彼らは人数を増やし、暴力も振るう。 「あ、黒子くん」 それに水を差したのは黒子だった。 どうやら喧嘩を売ったようだ。 は仕方なくコートに入った。 「とりあえず、コートから出て」 元々コートを使っていた3人に声をかけて怪我の手当てをする。 「ちゃん」 の存在に気が付いた黄瀬が声を掛けてきた。 「んじゃ、フルボッコで」 ガラの悪い5人組を指差して言うと、 「りょーかい」 自信満々に微笑んで彼は頷いた。 黒子、黄瀬、火神の3人が先ほどの5人組を相手に試合をして、結果、瞬殺だった。 その間、は怪我の手当てを終えて試合観戦をしていた。 試合が終わり、ものの流れで黒子達と共に公園に向かった。 黒子は火神に叱られ、その様子を見守っていた黄瀬が表情を柔らかくする。 「じゃ、オレはもう行くっス」 最後に黒子と一緒にプレーできたことを嬉しそうに口にした。 一方で火神にリベンジを口にする。ついでに彼の呼び名は「火神っち」となった。 「あら、気に入られたねー」 からかうようにが言う。 「何だよ!」 「黄瀬君は気に入った人は『〜っち』って呼ぶんです。さんだけ、特別のようですけど」 「あははー、光栄デース」 乾いた笑いを零してが言う。 「ちゃん!」 少し離れたところで名を呼ばれた。 「また!」 黄瀬が手を上げる。 は困ったように笑って軽く手を挙げ「またね」と返す。 の返事に黄瀬は笑顔で頷いて背中を向けた。 その後、部員達と合流した黒子はリコによる逆エビを食らう。 (まあ、カントクだし。選手の体を壊すようあんことはしないだろうし...) そう思っては黒子を助けることなく皆と共に駅へと向かっていった。 |
桜風
12.6.18
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