| 片づけをしていると黒子が隣に立つ。 「いいよ、ゆっくりしてて」 「さんこそ。さっきのさんのお母さんの言葉、本当なんですよね」 黒子に指摘をされては苦笑を漏らす。 「さあ?」 肩を竦めてそういう彼女に 「さっき、さんのお母さんに言われて..なんか..そうなんだって思いました」 「『そう』って?」 「優勝したんだな、って」 黒子の言葉には「そうだね」と頷きハタと気がついた。 自分はまだそんな報告をしていない。 ということは、彼らの誰かが報告してくれたのだろう。 「ま、いっか」 並んで洗い物をする達の目の前で、今度は赤司がの母親とチェスをしている。チェス盤だけは、以前からもこの家にあったのだ。 先ほど、赤司が提案し、彼女が乗った。 そして、勝負をする前に赤司が賭けを持ち出した。 「いいけど、何を賭けるの?」 「僕が勝ったら君をください」 一瞬の沈黙。そして 「何言ってるんスか!」 「さっき負けたばかりだろう!!」 「えー、赤ちんずるいー」 「赤司君、諦めたって言ってたじゃないですか!」 「めげねーなー」 「ちょ、?!」 と皆が慌てた。 「うーん。それはダメ。だって、征十郎君の『ください』が、さんの人生に掛かることを含めてかどうかまでは、今は深く追求する気がないからしないけど、もし、そうだった場合、親が勝手に子供の人生を決めるとか、あたしの中ではありえないから。そうね...1泊2日。ウチに1泊2日のお泊り権をあげましょう」 「はい?」 赤司が問い返す。 「旦那は海外の単身赴任、あたしは出張が多い。場合によっては2人きりよ」 ぱちんとウィンクをして彼女が言う。 「ちょ、!何か言ったら!!」 桃井が慌てる。 「で、お母さんが勝ったら赤司くんに何してもらうの?」 慌てず彼女がそういった。 「んー、お子様に何かしてもらうってのもねー...」 の問いに彼女は唸る。 「赤司くん、現在京都の高校に通ってます」 が言う。 「ホント!じゃあ、えっと..なんて名前だったっけ。あの羊羹の」 彼女がを見た。が店の名前を口にする。 「そう!そこの羊羹を買って送ってー。送料も含めて代金は払うから。前に同僚が買ってきたんだけど、凄くおいしかったの。でもねー、2時間くらい並ぶらしいのよ。しかも、売り切れ御免なんだって。ちゃんと征十郎君が並ぶのよー。えっとね、小倉と抹茶と..何が美味しかったっけ?」 「栗。栗は季節物かもしれないけど」 が言う。 「そうそう、あれば栗も。1竿ずつねー。お店、知ってる?」 「...いいえ、有名なんですか?」 赤司が首を横に振る。そんなに興味が無いから知らない。 「住所をメールで送るよ。結構老舗らしいけどマイナーなんだって。たぶん、玲央さんなら知ってるんじゃない?」 が言うと「わかった」と赤司が頷いた。 「では、勝負を始めましょう」 の母親はにこりと微笑んだ。 「さん。お母さんは大丈夫なんですか?」 黒子が不安そうに問うた。 「うん」 とが頷く。 「えっと...」 その自信は何処から来るのか、と聞きたいのだが、聞いていいのだろうか。 「ウチの母親は、チェスで負けたことないんだって」 「でも、これが最初になるかもしれません」 「クイーンが負けるはずがないじゃない!だって」 が言う。 「...はい?」 「お母さんがああいう類のボードゲームで唯一やってるのが、このチェスなの。理由は『女王様』がいるから。あの人のチェス、うちの父親曰く、怖くてやりたくないそうよ。気迫が違うんだって」 からからと笑った。 「ねえねえ、ちん。蜜柑食べて良い?」 色々と飽きたらしい紫原が声をかけてきた。 「蜜柑?」 が首を傾げる。 「うん、さっき箱で買って帰ったんだよ」 「あ、そうなの?じゃあ、これに適当に盛ってきて」 そう言って籠を渡す。 「わかったー。たくさん食べて良い?」 「うん...まだ入るんだね」 半ば呆れながらは頷き、紫原は上機嫌にリビングを出て行った。 「黒子くんも、アレくらい食べたらアレくらい大きくなるかもよ」 が真顔で言うと 「あそこまではいいです」 と黒子も真顔で返した。 そして、その1時間後。 「羊羹!」 「...そこはチェックメイトでしょ」 静かな娘からのツッコミを受けつつ、高らかにの母親の勝利宣言がなされたのだった。 |
桜風
12.11.25
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