| 「ただいまー」 リビングのドアが開いた。 丁度ドアの前に居た黒子が驚いて見上げる。 「はははー。ただいまー、さん」 目の前の、彼にとっては『小さい人』を持ちあげて高い高いをした。 「違います」 黒子が応える。少しむっとしている。 「...あれ?」 彼が首を傾げた。 「わー、娘とその友達を間違うとか。父親失格ー。しかも性別も違うってのにね」 笑いながらの母親が言う。 「あ、あれ?え、っと...」 ゆっくり黒子を降ろし、 「こんばんは」 と挨拶をする。 「こんばんは、お邪魔しています」 黒子は律儀に挨拶を返した。 「ほらほら、テツヤ君に『ごめんなさい』はー?」 「...ごめんなさい」 言われるままに頭を下げた彼に「いいえ」と黒子はやっぱり不機嫌に返した。 そして、彼はリビングを見渡した。 「いない!」 「いるよ!おかえり」 彼の真横に立つが返事をした。 「わ、ボクの天使」 「次言ったら家出する」 真顔で冷ややかな声音でが言う。 「え、何で!さんはボクの天使なのに」 「さようなら」 「外は寒いからコート着ていくのよー」 「はーい」 「待って!待って...!!」 ((((((ああ、この人か...)))))) 黄瀬を除く皆が思った。 先ほど、の母親が黄瀬が誰に似ているか分かったと言っていた。 そして、の普段の見事なスルーっぷりは家庭で培われたものだったらしい。 「ダメだよ、こんなに小さいんだから、暗い夜道を歩いてたら誘拐されちゃうじゃないか!」 まだ何か言われている。 「小さくない!」 が反論する。 「そうそう、旦那ー」 「あ、ただいま。ボクの女神」 「女王様でも可って何度言ったら分かるのー?」 寧ろそう言えと言っているような口ぶりだ。 「さん、今日は何たらカップで優勝したんですってよー」 「ウィンターカップ!」 が言う。 「へー、バスケ。ふーん、おめでとー」 突然のクールダウンに皆は戸惑った。 あのテンションなら 「さすがボクの天使!優勝だなんて凄いじゃないか!!」 と言いそうなのに。 黄瀬なら、たぶん言う。 「お義父さんって、バスケ嫌いなんスか?」 こっそりの母親に黄瀬が聞く。 「うん、大嫌いなんだって」 真顔で返された。 「な、何で...」 「中学から大学まで、友達にしつこく誘われてうんざりした思い出しかないから。ほら、あの背の高さでしょ?運動神経も悪くないし、是非ともって。あまりにしつこいからバレーをしてたらしいけどね」 「何でバレー...」 「背が高い人が求められるスポーツって、バスケとバレーが代表じゃない?旦那、190以上あるはずだから」 (確かに...) だからってそんなに嫌いになるのだろうか... まあ、そういうのは人それぞれだと皆は納得した。がバスケ部に所属しているのを辞めさせようとまでしていないのでそれはそれで良いと思ったのだ。 「ところで、君達は?」 見たところ、みんなバラバラのジャージだ。 「中学のときの友達」 が言う。 『友達』という単語にへこんでみた者もいるが、そこは何とか隠した。 この父親、ちょっとめんどくさそうだ。 「ふーん。じゃあ...君が、青峰」 青峰を指差していう。 「お、おう...」 「で、いちばんでっかいのが紫原で、えーと、黄瀬。緑間..赤司と黒子。で、さつきちゃん。どーだ」 皆はコクリと頷いた。 桃井だけは面識があったので間違えようがない。 「そうかそうか。あれ?これって、部室でAV見てたメンバーじゃないっけ?」 「忘れてください」 すかさず赤司が訴えた。 「そんなことあったわねー。やー、そうか。勇者様たちだ」 そう言っての母親が拍手を打つ。 「さつきちゃんがうちに来たとき、丁度ボクが出張帰りの日で早く家に居て、奥さんも直帰だったから珍しく早い時間に家族揃ってた日だったんだよね。インパクトがあったもんなー」 うんうんと頷く。 「みんな当分この2人の酒の肴だったから」 知らないうちに楽しまれていたようだ。 「ところで、さん」 「おにぎりなら、たぶん、2〜3個かな?」 父親が何か言う前には応え、そのままキッチンに向かう。 「オレも食べたい」 「うん、ない」 間髪入れずにが返す。 「えー...」 「敦、さっきアレだけ食べたのにまだ足りないのか...」 赤司が呆れながら呟く。 「紫原くん、みかんなら食べていいから」 「みかんじゃなくておにぎり食べたい」 「それはダメだ。ボクのためにさんが握ってくれるおにぎりなんだから」 「ズルイ」 紫原が訴える。 「ずるくない」 胸を張って父親が応える。 「...高校生と同じレベルで会話してどうするのよ」 呆れながらの母親が言うが 「アレは、高校生のレベルの会話なのか?」 緑間は心からの疑問を口に出していた。 |
桜風
12.11.26
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