グラデーション 104





が朝食の支度をしていると青峰と赤司も起きて来て、彼女の両親もリビングに集合した。

「何だよ、あとはさつきだけか」

大きく欠伸をして青峰が呟いた。


「お父さん!」

「何でしょうか」

「この子、4日まで面倒見ていいですか」

そう言ってが抱えていたテツヤ2号を父親の前に出した。

「ん?犬か...どうし...」

言葉を止め、父は偶々傍に居た黒子を見た。

テツヤ2号を見た。

黒子を見た。

テツヤ2号を見た。

黒子を見た。

「お子さん?」

「違います」

むっとしたように黒子が返す。

「お父さん!」と娘にも叱られた。

「やーん、可愛いじゃない。置いてもいいでしょ」

からテツヤ2号を受け取って母が言う。

「まあ、奥さんが良いといっているし。ボクも4日までは日本にいるし、大丈夫だよ」

そう言って父が頷く。

「あれ?ちゃんちって、動物ダメじゃなかったっスか?」

黄瀬が問う。

昔、金魚を断られた。

「ううん。あ、生き物はダメって話したことあるんだったよね。わたしかお父さんがいたら大丈夫なんだけど、揃って空けるようなことがあったらいけないから」

「どういうことっスか?」

「自分の食べるものをロクに調達できない人が、自分以外の生き物の命を守れるとは思えない」

が言うと

「なによ!最近はコンビニなんていう素敵なストアがあるんだから!」

と母親がムキになるが、

「まあ、1回金魚を任せて殺されてるからね...ちょっと、もう任せられないかな...」

と父が苦笑した。

かくして、テツヤ2号は年末年始を家で過ごすこととなった。



キッチンではと彼女の父親が朝食のために色々と手の込んだことをしている。

「ねえ、少年達」

の母が言う。

「何でしょうか」

赤司が返事をした。

「君たち、良い体してるね」

「「「「は?!」」」」

皆は頓狂な声を上げた。

「何、おばちゃん。おっちゃんじゃ足りねーの?」

「ははは、青峰。切り身になって東京湾を泳ぐか?」

包丁を持ったの父親が笑顔で言う。

は半眼で父親を見上げ、青峰を見た。

「んー、そうではなくてね。君達の若さを買っているのよ」

の母が言う。

「なにー?どーゆーこと??」

紫原がつまみ食いをしながら言う。

緑間に窘められているが、止める気は無いらしい。

「餅つきをしてみたくないかね?」

「お母さん!」

が声を上げた。それは重労働だ。気軽に声を掛けるものではない。

「え、餅つき機があるんスか?」

「おバカ。電動式だったら君達の若さなんて必要ないでしょ」

「あ、すんません...」

しょんぼりした黄瀬に

「黄瀬くん、気にしちゃだめよ。お母さん、基本的に言葉がストレートすぎるから」

がフォロー入れている。

「大丈夫っス!」

の一声ですぐに復活する黄瀬は凄いと皆は思った。

「じゃあ、アレか。臼とかで?」

青峰が問うと

「その通り!ど?日本文化の継承をしてみたいと思わない?」

の母親が皆の顔を見渡して言う。

「お母さん。皆もいい加減実家に帰ったほうがいいって。これだけタッパがあるんだよ。絶対に重宝されてるって!」

(((そこ!?)))

何だか自分たちがどんな目で見られているかが良く分かった一言だった。


「オレ、やってみたいっス!」
(家に帰るよりもちゃんといるほうが有意義だし)

「そうだな、俺もやったことがないから経験してみたいのだよ」
(家に帰ったら絶対にこき使われる)

「おもしろそーじゃねーかー」
(家の手伝いなんてめんどーだしな)

「やってみたい」
(搗き立てのお餅食べたいし...)

「興味あるな」
(家に帰って親の相手をするのが面倒だ)

「僕もやります」
(僕だって力仕事できるって証明したい)

「あら、皆いいい子ね!」
(心の声がダダ漏れ...)

「年末年始くらい家の手伝いしなよー」

は呆れて言い、「おー、今年は楽だな」と彼女の父親は苦笑していた。


朝食の支度が終わり、が桃井を起こしに行こうとしたら母親に止められた。

「野菜ジュース作っててー」

そう言って彼女が起こしに行ったのだ。

「いいけど」と呟きながら彼女は準備をする。

君、僕も飲みたい。頼めるだろうか」

赤司が手を挙げ、

「いいよ」

と返した。

ミキサーに材料を突っ込んでいると「きゃー!」と桃井の悲鳴が上がった。

「さつき?!」

青峰が驚いたように声を上げた。

「あーあー...」

は父親にミキサーを任せて自室に向かう。


「こら、セクハラですよ」

部屋のドアのところにたってが言う。

「えー、女同士だし」

「警察呼ぶぞ」

が言うと渋々彼女は桃井から離れた。

「大丈夫?」

「う、うん。ビックリした...」

「ごめんねー。さんは反応が薄いから是非ともさつきちゃんで、って思ってたの」

「え、あの...」

「罵っても罰は当たらないよ」

が言うが、さすがに罵るなんてことは出来ない。

「もうやめてくださいね」

そう言うのが精一杯だった。

「はーい」

ニコニコと笑って彼女は部屋を出て行く。

「朝ごはん出来たよ」

に言われて部屋の中の時計を見た。

結構いい時間だ。

「ごめん」

「いいよ、今出来たばっかりだし。行こう」

に促されて桃井は顔を洗って髪を整えていくとだけ告げた。先に食べていてもらいたいと。

(ああ、黒子くんがいるもんねー)

納得しては部屋を後にした。


「あら、さつきちゃんは?」

「身だしなみを整えたいから、先にどうぞって」

「やん、女の子ね!」

嬉しそうにの母親が呟いて朝食が始まった。

先に桃井の朝食だけを取り分けておいて正解だったとは思った。

物凄い勢いで朝食がなくなっていく。

父と相談して結構な量作ったのに、あっという間の出来事だった。

少ししてやってきた桃井は殆ど残っていない食卓に唖然としていた。取り置いておいた朝食を渡すと凄く感謝された。









桜風
12.12.3


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