グラデーション 105





朝食の片づけをしながら、次は餅の準備を始める。

桃井は青峰から話を聞いて驚き、同時に呆れた。彼が思っていることが分かったのだ。

「ねーねー、ちん」

「はいはい?」

家にこんなにもち米あったんだ、と驚いているところで紫原に声を掛けられた。

「室ちん呼んでもいい?」

「氷室さん?」

「うん。こーゆーの興味あると思うし」

「うーん...お父さん」

『娘ラヴ!!』Tシャツを着ている父親に声を掛ける。

「何だい、さん。てか、ウチはこんなにもち米買ってたんだなー」

「あ、昨日の買い物でたくさん買ってた」

紫原が言う。ついでに、大量に持たされて大変だったと零された。

「そうかそうか、ありがとう」

軽く礼を言われた。全然心が籠もっていないようにも思える。

「それで、さん。なに?」

「人数増えてもいい?」

「力仕事できる?」

は紫原を見上げた。

「だいじょーぶ」

紫原が力強く請け負った。

(いいのかなぁ...)

「じゃあいいぞー」

「なら、ついでに火神君も呼びませんか?火神君ならこの家に一度来たことがありますから、道案内も楽だと思います。氷室さんが火神君の家で一緒にいるなら、ついでに呼んだほうが良いと思うんですけど」

いつの間にか背後にいた黒子が言う。

(カオス...)

この家に集っている今のメンバーだけでもかなり混沌と化しているのに、さらに混沌とした空間となるのか...

「火神って、さんのチームのエースの子だろう?パワー型だったね。いいよ」

「お父さん、その基準はどうかと思うんだけど。あと、火神くん、膝やってるからあんまり勧めたくない。あ、黄瀬くんもだけど」

「ああ、アレは膝よりも腰に来るから大丈夫」

の父親は軽くそう返した。

(何がどう大丈夫なんだろう...)

の胸に疑問が浮かんだ。


火神を呼ぶなら、と黒子が連絡を入れた。氷室も一緒に来てほしいと話をすればいいのだ。

はその間、リコに電話を入れる。あまり早い時間だと迷惑になるといけないと思って電話を控えていたのだ。

「うん、わかった。今日の打ち上げの時には連れてきてね。あの子も誠凛バスケ部だから」

「わかりました」

そんな会話をして電話を切ると黒子も電話が終わったらしく「来るそうです」と言う。


「おー、ヤロー共。手伝え」

の父親がそう言って男子を引き連れていく。

その間にはもち米を蒸しながら餡などの準備を始めた。

「ねえ、

手持ち無沙汰の桃井が声を掛けてきた。

「なに?」

「明日じゃダメなの?」

「本当は、28日までに済まさなきゃいけないんだけど。今年はそうも行かなかったから。大晦日にするのは避けたほうがいいらしいのよね。29日は9がついて『苦』に繋がるからこれも避けるんだって。なので、最悪の30日、今日が準備のリミットなの」

「...何、それ」

呆れたように桃井が言う。

「お正月を迎えるに当たっても、色々とマナーがあるらしいってこと」

「ふーん...」

(この家は、意外とそういう文化を尊重するのねー。あの両親の性格を見てもそんな風には見えないのに...)

臼と杵を出しているとの家に電話があった。

火神からだ。

「ああ、僕が教えておきました。不便だと思ったので」

黒子が言う。

確かに、自宅の電話番号なら知られても気にならないのでは一応黒子に礼を言った。

どうやら迷ったらしい。

「あー...迎えに行くわ。今、誰の家の前?表札読んで」

火神の口にした名前の家は近所にはない。

(こりゃ、読み間違ってるね...)

確認してみると、ご近所さんだった。

「わかった。そこから動いたらダメだからね」

そう言っては自転車の鍵を手にして家を出る。

「あれ、何処に行くんスか?」

「火神くんたちを迎えに行って来る」

はそう言って自転車に跨って出て行った。









桜風
12.12.5


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