グラデーション 114





ロビーに行ってみると、黄瀬のようにカードゲームを持ってきていた者たちがほかにも居たようで、それなりに人がいた。

「あら、ちゃん」

実渕がやってきてを抱擁しようとしたが、失敗した。

紫原がひょいとを持ち上げたのだ。

「あら、ちゃんを返して」

「オレのだし」

「いやいや、違うでしょ!」

「オレのあげたチョコ食べたじゃん」

「わ、ひどい!あの程度でわたしを餌付けできると思うなよー」

が非難の声を上げる。

「やー、はモテモテだなー」

ロビーにいた木吉が声をかけてくる。

「助けてください、木吉さん」

「いいじゃないかー。平和だなー。あ、でも紫原。はうちの子だから、ちゃんと返してくれよ」

「やだし」

「...木吉さん、何やってるんですか?」

「ん?ババ抜き」

木吉は桜井と向かい合ってトランプをしている。

「ババ抜きを、2人で?」

「おもしろいぞー」

「木吉って実はバカ?」

紫原が呆れたように言う。

「んー、天然ではあるけど...そろそろ降ろそうか?」

「やだ」

紫原に抱えられたままのは困っていた。

「紫原っち!ウノで勝負っス!!ちゃんは渡さないっス!!」

黄瀬が勝負を持ちかけた。

「いいよー」

「オレもやるぜ」青峰が声をかけ、「俺もー」と高尾が入ってくる。

「真ちゃんもやろうぜ」と高尾が誘い、「そうだな」と頷く。

「わたしもやるよ」

が入り、

「赤司もどうだ?」

と青峰が誘った。

「僕はいい」

「あら、征ちゃんはやらないの?じゃあ、仲間に入れて」

実渕が声をかけ、結構な人数でウノが始まった。


「赤司君、何で入らなかったの?」

桃井が聞く。

君が勝つからだよ」

「え?」

「観察力と洞察力は君に負ける気はしないけど、運が加わるとそこは難しくなる。だから、純粋な知的戦略戦以外で君を相手にしたくない」

つまりは、無駄なことはしないと言うのだ。

「ウノ!」

そんなに時間がたたないうちにが声を発する。

「え、ちょっと待って!」

「早くねーか?」

口々に声を漏らし、結局ぶっちぎりで彼女が勝った。

「...ホントだ」

「わたしの自由は守られた」

はそう言いながら桃井と赤司の元へと足を運ぶ。

「そういえば、君。さっき見ていた映像のことだけど」

「うん、なに?」

「桃井、代表候補はあの中の誰だったか」

赤司に聞かれてユニフォームの色と番号を口にする。

「動きとしてはどうだった?」

赤司に問われるままには答える。

たまに表現が素人臭かったりしたが、それでこそだと桃井は思った。


消灯時刻になり、ロビーにいた皆は追い立てられて部屋に帰った。



翌日の練習は、午前中は全体的な練習だったが、午後は紅白に別れての練習試合が2本だった。

「ああ、なるほど...」

氷室がつぶやいた。

「辰也?」

「いいや、何でもないよ」

その試合でがサポートに入ったのは彼の相手チームだった。

昨日、紫原が言っていた言葉を思い出した。

本当に小さなこと、知らなかったら、気づかなかったからわかないことだが、きっとそれが積み重なれば全然違う。

「タイガ」

「んだよ」

「君のチームにはいいスタッフが居るんだね」

「は?」

何度もそのいいスタッフに対して暴言を吐きかけている彼にはそんな自覚がない。

「うん、なるほど」

あの王様の赤司が欲しがる意味が分かった気がした。


紅白試合2本終了し、その日の練習が終わる。

明日の練習は午前のみで、解散になる。

監督と赤司は選手の取捨選択について話をした。

今の段階で確定ではないが、一応ある程度の目星がついたとお互い思っていた。

そして、監督は赤司に何か言いたげにしたが、結局言葉を飲んだ。

赤司は彼が言いたい言葉に気づいていた。

気づいていたが、わざわざこちらから話を振ってやる義理はない。

本合宿の時に、スタッフの質がわかるというものだ。









桜風
12.12.16


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