| とりあえず黄瀬の視界に入った店を選んだ。 黄瀬自体、そんなに拘りがないからだ。 店の前まで歩いて、黄瀬は 「やっぱり、違う店にしないっスか?」 とに問う。 「なんで?」 は首を傾げて黄瀬を見上げた。 店の入り口にはポスターやタペストリーが掛けてある。そのため、からは店内がよく見えない。 しかし、黄瀬はそのタペストリー越しに店の中が見えた。 「いいじゃん、ここで」 そういってがドアを開ける。 「ああ...」 黄瀬は少しだけ情けない声を漏らした。 「あれ」 がつぶやき、向こうも気づいた。 「よー。何だよ、お前等。こんな色気のないトコでデートかよ」 「違うよ」「そうっスよ」 真逆の返事がある。 「桜井くん、こんにちはー」 店内には青峰と桜井がいた。 「こ、こんにちは...すみません!」 (なぜ謝る?) は首を傾げた。 (そういえば、日向さんは桜井くんのことを「謝りキノコ」って言ってた気がする) なるほど、とは一人で納得していた。 「んで、さつきは?」 「あ?いつもいっしょとか思うなよ」 「桜井くん?」 「あ、遅れてきます」 「お前、なに正直に答えてんだよ」 「すみません!」 「青峰っちー。ふつうにいじめっこみたいスよ」 呆れたように黄瀬が言う。 「ほんとにねー」 も頷いた。 「うるせーよ!」と青峰は苦々しく答える。 「で、どうやって注文するの?」 は黄瀬を見上げた。 「ああ、そうっスね。ちょっと行ってくるっス」 黄瀬は諦めた。 せっかくのとのデートだが、相席は免れないようだ。 荷物を置いてとともに席から離れる。 「あの2人ってつき合ってるんですか?」 桜井が青峰に問う。 「あ?」 聞き返されて「すみません!」と彼は謝った。 (たぶん、ちげーだろ) 中学の時からぜんぜん雰囲気が変わらない。 だから、違うとは思うのだが... 「お待たせ」 遅れてやってきた桃井がおいてあるバッグに首を傾げる。 誠凛と海常の学校指定のバッグだ。 「きーちゃん?」 「あー、と一緒にな」 青峰が言う。 「も?!」 (何か進展でもあったのかなー) 後で聞いてみようと思いながら待っていると 「あ、さつき」 とがやってきた。そのすぐ後ろには黄瀬が2人分の牛丼を持っていた。 「水取ってくるね」 がそういって席を離れようとしたが、 「ああ、いいっスよ。オレが持ってくるっスから」 と黄瀬が制してまた席を離れた。 「相変わらず甲斐甲斐しいというか...」 「自分のことは自分でできるように躾られている身としては、ちょっと窮屈」 がそうこぼすと 「それもそれでかわいげねーよな」 と青峰がつぶやいた。 「お待たせっス」 そういって黄瀬はテーブル全員分の水を持ってきた。 「おー、わりーな」 「すみません...!」 「ありがとう」 「きーちゃん、ありがとう」 それぞれが反応を示す。 「で、2人はデート?」 「そうっス」「ちがうよ」 真逆な言葉が返ってきて桃井は苦笑した。 (まだまだってことかー...) 桃井の考えていることに気づいた黄瀬は苦笑を浮かべた。 「桐皇もテスト期間中っスか?」 すでに丼の中身を平らげている黄瀬が話を振った。 「そう。きーちゃんとこも?」 「そうっスよ。だから、モデルのバイトガンガン入れられて...」 「あー、お前がモデルっての、しょっちゅう忘れちまうなー」 「ヒドっ!」 黄瀬が声を上げて、は笑う。 「のとこも?」 「うん、だから自分の時間がとれて幸せー」 丼の中はまだまだ残っている。 「テツ君は?」 「火神くんのテスト勉強見てる。ほかの1年揃って」 「は..て、そうだったな」 「うん。けど、教科書とノート貸してって言われたから全部貸したけど...」 「あ、だから鞄がそんなに元気ないのね」 桃井が苦笑した。 なんだか中身が入っていない感じがしていたのだ。 「青峰くんはテスト勉強しなくて大丈夫なの?」 「オレは大丈夫だ」 「なに、その自信...」 「火神っちって勉強が苦手なんスか?」 黄瀬が問う。 「うーん。なんか日本語が難しいって言い訳してた」 「あー、帰国子女だからってことっスか」 「ま、英語もやばいからそれもどうなんだろうね」 が苦笑する。 「そういえば、夏休みの宿題も大変だったスもんねー」 黄瀬が思い出して苦笑を浮かべる。 「何できーちゃんが火神君の夏休みの宿題のことを知ってるの?」 桃井に問われて黄瀬が夏休みの話をする。 もちろん、ナンパの下りは話さない。 「へー...」 (のいるところって、きーちゃんとみどりんの出現率高いよね) 呆れたように桃井が思っているとコンコンと窓がノックされた。 窓際の席なのだ。 窓の外を見て桃井は目を丸くし、黄瀬は心底イヤそうに顔を歪めた。 「、お前GPSがついてんじゃねーの?」 青峰が笑いながら指摘する。 「やだなぁ...」 言葉の通り彼女はイヤそうな顔をした。 「揃って何の悪巧みしてんの?」 高尾が愉快そうにきいてきた。 「オレとちゃんがデートでこの店に入ったら青峰っちたちがいて、合流する流れになったんスよ」 「妄想も甚だしいな」 緑間が眼鏡のブリッジを上げながら言う。 そして、をみた。 「ふふん。声をかけてきたのはちゃんスよ」 自慢げに言う。 「な!?」 緑間が少し動揺した。 「最初声をかけてきたのは黄瀬くんじゃない」 とに訂正される。 「そんなこったろうと思ったのだよ。すぐにバレる嘘を吐くんじゃないのだよ」 「もー、ちゃん!」 黄瀬が抗議の声を上げた。 「だったら、せめてこんな男らしい牛丼とかじゃなくて、ファミレスにしたらいいのにー」 高尾が呆れて言う。 「あ、わたしの希望なの。一度入ってみたかったから」 の言葉に高尾が唖然とした。 「え、もしかして。今まで牛丼食いにきたことないの?!」 「うん。今日が初めまして」 が嬉しそうに頷いた。 「わ、もしかして国宝級じゃねーの?」 高尾の言葉に 「当然なのだよ」 緑間が誇らしげに返し、 (何で真ちゃんがそんなに誇らしげなんだよ...) 高尾はひっそりと呆れた。 が食べ終わるのを待って店を出る。 「どうだった?初牛丼」 「味が濃い。味は足せるんだから初めから濃くしたらどうにもできないじゃない」 「外食は基本濃いめの味付けよ」 桃井が指摘すると、 「たしかに、ハンバーガーも結構濃い目だよね。じゃあ、当分外食はいいや」 は苦笑し、 「よっしゃ、せっかく揃ってるんだし行こうぜ」 と青峰が言う。 「行くってどこにっスか?」 (オレはちゃんとデートの続きがしたいっス) 「いいところだよ」 「じゃーねー」 「「え?!」」 は帰る気満々だった。 彼女の言葉に思わず黄瀬と緑間が声を漏らす。 だが、「お前もつき合えって」と青峰にバッグを取られた。 「かーえーせー」 ぴょんぴょんと青峰の周りを跳ねて彼が高々と持ち上げているバッグを取り返そうとしたが、やはり高さにはかなわない。 (ちゃん、かわいい...!) (がんばるのだよ、) (ちっせーなー...) (...青峰さん!!) 「大ちゃん!」 それぞれ反応を見せ、そしては跳ね疲れ、結局つき合うことになった。 バッグを取られてはそれを放って帰れない。 |
桜風
12.12.19
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