グラデーション 117





青峰が向かったのはコートがある公園だった。

しかし、そこには先客がいた。

「テスト勉強はどうしたー!」

思わずが声を上げる。

先客は火神と黒子だった。

「うお、やべ!」

「あれ、さん...」

「テツくーん!!」

桃井が突進した。

「やー、相変わらずっスねー...」

黄瀬が苦笑するが、

(や、おまえも同じようなもんだろう...)

と高尾がつっこみを入れる。

「何でここにいるのよ」

が火神に言う。

「あー、息抜き?」

「息抜きしなきゃならないほど勉強したんだー、すごいねー」

「うっせ!おまえこそ、こんなところでなにやってんだよ」

火神が返す。

「オレとデートしてたらみんなにあって、こんなことになったんス」

黄瀬が言う。

「デート?へー、ふーん...」

つきまとっていたの間違いだろうと思いながらもいちいちつっこみを入れるのが、面倒くさいので流すことにした火神。

それに対して黒子は、

「黄瀬君。妄想ですか?」

はっきりとつっこみを入れた。

「ヒドっ!ちゃん、黒子っちが酷いっス!」

「まあ、前から結構切れ味鋭いつっこみ入れてたじゃん」

が返す。

「それで、さんはなぜここに?」

「鞄質を取られて...」

「鞄質?」

黒子が問い返す。

「ほい、返すぜ」

そう言って青峰がのバッグを投げてよこした。

「大ちゃん!」

桃井がたしなめ、

「もっと言っちゃってー」

が背中を押す。


「よーし、いい感じに人数揃ったから3on3出来んじゃん」

上着を脱ぎながら青峰が言う。

「テスト勉強しろ」

が言うと、

「ばーか。テストなんてのは赤点取って、その後の課題の方が楽なんだよ」

と慣れたことのように青峰が言った。

「...だから、青峰くんはIHに出れたんだね」

がつぶやくと、

「しかも、その課題は殆ど今吉さんたちがやってくれたの」

桃井は心底申し訳なさそうに言う。

「けど、若松さんって青峰くんと仲良くないでしょ?結構まじめな感じ」

「うん。だから、もうあの手は使えない...」

心底困ったように桃井が言う。

「まあ、そっちはバスケ部に力入れてるからなんとしても全国大会に出られるように配慮しそうだけどね。うちは...」

そう言って火神をみた。

「んだよ...」

の視線に気づいた火神が睨んでくる。

「うちの場合、学校がバスケ部に力入れてくれていないから、落第するときは余裕で落第だね」

真顔でが言う。

「な、何とかしてやらぁ」

「がんばれー」

他人事のようにが適当に言う。彼女にとっては他人事だ。

エースがダブっていても公式戦に出られれば問題ない。


冬は昼の時間が短い。

あっと言う間に周囲は暗くなり、一応公園の外灯が点くがそれも心許ない明かりで、バスケをするには難しい明るさだ。

「そろそろやめたらー?」

結局はつき合った。

鞄を返してもらったのだから帰っても良かったのだが、つき合うことにした。

なにより、桃井がひとりで寂しそうだった。

桃井は、目の前に黒子がいるのだから帰るという選択肢はなかったようだ。

「そうですね、ボールも見えにくいですし」

「てか、この暗さだと黒子、よけいに存在感ねーなー」

「このまま帰ったら風邪引きそうじゃね?」

汗をかいている。

「だから、やめときゃよかったのに」

が言うが、誰もその意見に賛同しない。

結局かなり楽しかったらしい。

とりあえず、上着を着てコートをもって。

青峰はのバッグを再び取り上げた。

「腹減ったし、どっかよって帰るぞ」

「わたしは帰るー。返せー!!」

ぴょんぴょんと跳ねるを笑って、

「いいからお前もつき合えって。さつきひとりじゃ心細いだろ」

という。

はちらと桃井をみた。

彼女は申し訳なさそうにしていた。

「...わかった。だから、鞄返せ」

そう言ってが手を出し、

「おっし、行くぞー」

と鞄を返すことなく青峰が歩き始める。


行った先は黒子御用達のハンバーガーショップ。

「何でこんなカオスなんだろう...」

がつぶやく。

「先に席取っとけ」

そう言われて桃井とは2階にあがって席を確保した。

「そういえば、さん。カントクが言ってたんですけど、来年度予算、増額もぎ取ったらしいですね」

は緑間と黄瀬に挟まれて、圧迫感がハンパない。

「あー、うん。予算って一応12月に決まるのね。で、ウチはWC出場決めてたのに、あの予算とか舐めてるってカントクと話してね。ただ、出場くらいじゃねーってあの校長が鼻で笑ったから」

「どうやったの?」

桃井が問う。

「この間の合宿の後に、「どうやら他校の予算はうちの1.5倍くらいついてるとかついていないとか。WC優勝したチームの予算がアレだと鼻で笑われますよ?だから、せめてうちも3割アップしてはどうでしょうか」と。プレ合宿には都内の強豪校の選手もいたって話したの」

「へー、うちの予算。そっちの1.5倍なんだ?」

高尾が言う。

「そうなの?」

は真顔で返した。

「え、だって今...」

「嘘はいってない。全部主観と憶測で話したんだし。あとは、校長が勝手に勘違いしてくれたの」

がなんでもないことのように返した。

「え、ペテン?」

「あ、それは得意」

そういっては苦笑した。


「次は3月っスよね」

黄瀬が言う。

「うん、一応高校生だから学業優先で、学年末テストは全員受けるようにって。終わったら結果見ずに合宿にはいることになってたね」

桃井がうなずく。

「ま、皆さんがんばってください」

が言うと

「なにを他人事みたいに言っているのだよ」

と緑間がため息混じりに言った。

「ああ、わたし召集されないと思うから」

「なんで!」

桃井が声をあげた。珍しい...

「スタッフに邪魔扱いされてたからー」

何でもないことのように言う。

ちゃんが?!」

黄瀬が声を漏らす。

「でも、赤司君がキャプテンを引き受ける条件に、自分の選んだスタッフを召集するっていうのを出したと聞いてますよ。さんと、桃井さんを召集するって」

「したでしょ。この間の合宿」

が言う。

「え、でも。あれはプレ合宿...」

黒子が反論した。

「プレ合宿で呼んで、お荷物だった。これは遊びじゃない。だから、必要のないスタッフを呼ぶ必要はない」

「は?!」

黄瀬がの言葉に声を上げた。

「って、理屈になってるはず」

はそれでいいのか?」

緑間がいう。

「頭を下げて呼んでくださーいって言う気はない。みんなが困るのは気の毒だけど、決定権者が困るのは、正直、まあ...おもしろそう?」

「でも、赤司君が黙ってないんじゃない?」

「赤司くんこそ動かないよ。彼はもう言っていた。必要だって。それを黙殺した彼らに彼が手を差し伸べると思う?ま、いなくても困らないでしょ。不便かもしれないけど」

(どーゆーこった。なんで自分が必要とされるって自信満々なんだ?)

高尾が首を傾げる。

(今日の帰りに真ちゃんに聞いてみるしかないってことだよな?)

同じく桜井も不思議そうな顔をしていた。

「えー、がいると思ったからまだデータの整理を始めてなかったのにー」

桃井が眉間にしわを寄せて嘆く。

「がんばれー。米国と中国の、結構もらえるみたいだから、合宿所に送るねー」

笑いながらが言った。









桜風
12.12.19


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