| 「本当にいない...」 周りを見渡して桃井が呆然と呟いた。選手が減っているのは納得できる。 だが、やはりが呼ばれていないのは納得がいかない。 「なんだ、やっぱりはクビにされたのか」 呆れたように青峰が言う。 「ちょ、ちょっと征ちゃん。どういうこと?」 「スタッフの質が低いと言うことだ」 ため息混じりに赤司が返した。 「えー!ちゃんに会うと思ったから羊羹買ってきたのにー...」 赤司がに送ったことがある羊羹だ。 元々の母親との勝負に負けて罰ゲームで購入するために2時間以上並んだ。それに実渕がつき合ったので、彼もがその店の羊羹を気に入っていることを知っている。 「え、ちんいないの?」 会話が耳に入った紫原が赤司に問う。 「そのようだ」 「、前の合宿の後に自分の召集はないみたいなことを言ってたからなー」 「じゃあ、征ちゃんの条件は...」 「前の合宿で召集したことで果たされたと言うだろうな」 不愉快そうに言って赤司は体育館へと移動した。 合宿2日目に高尾は「なるほどねー」と呟いた。 10日くらい前に緑間に聞いた話を思い出した。 なぜがあれだけ自信満々に自分が役立つといっていたのか。そして、スタッフはそれに気づかないのか。 緑真はこう言った。 「1〜10の過程があったとする。Aはその過程ひとつにつき3掛かり、Bはひとつに5掛かるとする。どっちが良いと思う?」 「ひとつひとつの過程のクオリティが一緒なら少ない方のAじゃね?」 高尾が答えた。 「では、そのBは1と2の過程を両方できたとしたら?両方というか、1をしながら2を始めているという感じか。流れが途切れない。そしてトータル30に変わりないとしたら」 「先を考えて今の作業をしているってこと?」 「そうだな」 緑間が頷いた。 「だったらー、まあ。Bの方だろな」 「はそれなのだよ。おそらくスタッフは前者のAかもしれない。だが、はBなんだ。作業、やることが少ないとそこまで思わないかもしれないし、がいたらそれは気づきにくい。だが、いないと覿面だ」 「そーなの?真ちゃんの恋心ゆえのひいき発言じゃなくて??」 「恋心だと?!」 思わず声が裏返る。 わざとらしい咳払いをひとつして、 「俺が秀徳に入って、まず最初に苦労したのはそれだったのだよ」 は環境を整えることに関して、観察力・洞察力が抜きんでていた。 だからこそ、年末に聞いた帝光中に転入する前に通っていた学校での出来事には驚いた。 まあ彼女の無関心ぶりもわからなくもないから、当時はそっちだったのだろう。 合宿1日目に違和感があった。 そして2日目の本日。たしかに、覿面だった。 スタッフも少し困惑しているようだ。 プレ合宿はあれだけいろいろとスムースに行ったのに、今はなんだかちょっと、変だ。 「ふーん、これが、王様がちゃんを欲しいって言ってるワケかー」 淡々と練習をしている赤司を見て呟いた。 「ねえ、赤ちん」 「なんだ、敦」 赤司が振り返る。 「ちん呼んでよ」 「僕が声を掛けても、もう来ないよ」 赤司が言う。 「どうしてですか?」 黒子が問う。 「僕が君のクビを切ったワケじゃないからね」 赤司が言う。 いまいちわからないという風に皆は首を傾げた。 「彼女は自分のまいた種は自分で刈り取れというタイプだからね。それに、なぜ僕が彼らの尻拭いをしなくてはならない。いい加減気づいているようだし、2〜3日の間には声を掛けるとと思うよ。いや、くんのことだから、直接会いに行かないと戻ってこないだろうな。そこは、彼らにわかるだろうか...」 (無理だろうな...) 赤司は心の中で判じた。 頭を下げることに思い至るくらいなら、最初から呼んでいる。 そして、赤司がその話をした3日後には合流した。 「ちゃん!」 いち早く彼女を見つけた黄瀬が駆け寄った。 「お待たせー」 は笑った。 「ちゃん!」 「抹茶羊羹...!」 は満面の笑みで実渕に言葉を返した。 「せめて名前呼んで。「玲央さん」って呼んで!」 そういって実渕はすねた。 「あれ、でも。何で私が羊羹を持ってきてるの知ってたの?」 首を傾げて言う。 「赤司くんからメールもらってましたから」 「遅かったね。で、なにを条件にしたんだい?」 赤司が声を掛けてきた。 彼の言葉には笑う。 「学校側にはバスケ部の部費のさらに当初予算からの2割り増し!というわけで、当初予算の合計1.5倍!!」 「学校側にもふっかけたのか」 さすがに赤司は驚いた。 「ふっかけたなんて失礼な!この合宿への参加は義務ではないでしょ?それなのに、学校が「行け」って言うんだもん」 (なるほどね...) 「それで、こっちのスタッフには?」 「細かいのはまあ、いろいろ言ったけど。おおむね、わたしの自由を認めてもらったわ」 赤司はぱちぱちと手を叩く。 「さすが、僕の妹だ」 「いや、同じ年の兄弟はいないから」 はそう返して、桃井を捜し始める。黄瀬はそれについていった。 「ねえ、征ちゃん。ちゃんってなんだか、その..凄いわね」 赤司をして「お気に入り」と言わせるのだから、それはそれで凄いのはわかっているが... 実渕は紫原に発見されて持ち上げられているを見ながら呟いた。 「君は、僕が唯一対等と認めている子だからね」 「へ?!」 思わず頓狂な声が漏れた。 驚いた実渕を置いて赤司は体育館へと向かっていく。 「さて、僕はどんな条件をふっかけるか...」 赤司の言を無視した監督とスタッフに何らかのペナルティは欲しいところだ。 そう、自分と対等のを軽んじたことは即ち自分を軽んじたことに繋がるのだから... |
桜風
12.12.21
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