| がやってきたことで練習は捗った。 周囲のスタッフ達も、多少納得がいかない様子を見せていたが、それでも環境が整う方がいいので、彼女が多少好きに振舞っても何も言わなかった。 その日の練習が終わり、就寝前の自由時間となった。 「あ、そうだ。火神くん」 が、レクリエーションルームにいる火神を見つけて声を掛ける。 「んだよ」 「無事進級だって。おめでとう。カントク、相当喜んでたよ」 「ふふん、言っただろ?何とかするって」 (危なかったーって顔に書いてある...) そんなことを思ったがはとりあえず突っ込みを入れるのをやめておいた。 「黒子くん、お疲れ。大変だったでしょ、1週間」 「はい、凄く疲れました...」 「オレを労え!」 「ちゃーん」 実渕に呼ばれた。 「はーい」と返事をして彼の元へと駆けていく。 「良かったですね、火神君」 「おー、助かった」 「...いえ、中学のときも似たようなことをしていましたから」 黒子の言葉に火神は室内に居る青峰を見た。 食堂に移動して実渕の持ってきた羊羹を切り分ける。 「お茶淹れますねー」 が湯を沸かしてテキパキと緑茶の準備を始める。 「どうしたの、それ」 声を掛けられて一緒に来た桃井が問う。 「うん、赤司くんから玲央さんが羊羹を持ってきてるって聞いたから。美味しいお茶で食べたいじゃん?」 香り豊かな緑茶と羊羹を前に3人は手を合わせた。 「いただきまーす」 「美味しい...!」 初めて口にする桃井は声を上げた。 「ね、美味しいでしょ。お母さんが赤司くんに吹っかけるだけあるでしょ?」 「え、征ちゃんに2時間以上並ばせたのってちゃんじゃなくて、ちゃんのお母様なの?」 「そうです。まあ、色々ありまして」 先に釘を刺す。詳しいことを聞かないでください、と。 実渕は心得たもので、肩を竦めて応じた。 「けど、こんなに甘いものを食べてたら太っちゃう」 桃井が言う。 「あら、桃ちゃん、もうちょっと太っても良いんじゃない?」 「けど、大ちゃんは『デブ』って言うんですよ」 (うわー、コドモー...) 実渕は心底呆れたような表情を見せた。 そんな実渕の考えが分かったは苦笑した。 「だったら、毎日青峰くんのロードワークに付いて行けば良いじゃん。走るのはまず無理でも、自転車とか」 「んー...」 桃井はどうやら乗り気ではないようだ。 「ロードワークは再開したんでしょ?」 が問うと 「あ、うん。練習は結構マジメになったほうだと思う。は、なんでそうなの?」 「『そう』って?」 「太らないじゃない。お菓子、結構自分で作ってるんでしょ?」 「最近はあんまり作ってないけどね。それにわたし、朝晩走ってるし」 「そうなの?!」 実渕が声を上げた。 「ええ、走ってます。体力が要るんですよ、マネージャーも」 の場合はちょっと違うが『マネージャー』であることには違いない。 「さつきも無理のない程度に運動したらいいじゃない」 「そうしようかなー...」 美味しいものを目の前にしてする会話ではないが、美味しいものが目の前にあるのでその先を考えてしまう。 「実渕さんって全く違和感無いんだけどー...」 食堂入り口でたちを見つけた緑間が足を止め、それに倣って高尾も足を止める。 女子が3人きゃっきゃとお茶をしているように見えなくもない。女子会と言っても誰も否定しそうにない。 「そういや、真ちゃん」 「何なのだよ」 「前に真ちゃんが言ってたの、良く分かったよ。ちゃん、あれすげーわ」 「当然なのだよ」 誇らしげに胸を張って緑間は応えた。 ふと、が気付いた。 「ご一緒に如何?」 「あ、ほんとだ。みどりんと高尾君じゃない」 「そのみどりんというのはいい加減やめるのだよ」 苦々しく言いながらも緑間は彼女たちに近付く。 は立ち上がり、新しいお茶を淹れた。 「この羊羹って京都のっすかー?」 高尾が問う。 「そうよー。ちゃんのために2時間も並んだんだから」 「...ちゃんって何でそんなにモテモテなんすかねー」 高尾が言う。 実渕はクスクスと笑って 「あら、魅力的じゃない?」 そう言って緑間にウィンクを飛ばす。 思わず咽た緑間の背中を桃井が擦り、は不思議そうに振り返った。 高尾は笑うのを必死に堪え、一頻り咽た緑間に睨みつけられた。 |
桜風
12.12.21
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