グラデーション 12





5回戦も何とか勝利を収めて次は準決勝、決勝の2連戦だ。

スカウティングのためにリコが知り合いに貰ったDVDを見る。

「あら、この人知ってますよ」

1年を帰した後、2年が残って対策を立てているところには紛れ込んでいた。

の傍らには、数冊の本が積んである。タイトルには全て『古武術』という文字が入ってる。

それは今日の放課後図書館で借りてきた本で、既に読み終わっていた。

全てを読み終わった様子のにリコが「早くない?」と呆然と呟いた。

「速読は得意なんです」

(そんなレベルの話?!)

リコは心の中で突っ込んだ。

は5冊の本を読んだ。辞書のようなものを3冊に、字の小さい本が1冊。後ひとつは入門書のようなもので、写真やイラストがふんだんに取り入れられているものだ。


「DVDは流していてください」

準決勝で当たる正邦の試合を研究するために視聴覚室をスカウティングの会場としていた中、図書館で借りた本を開いてが言った。

「音とか光とか気にならない?、隣の準備室も借りてるからそこで読んでてもいいのよ?」

「大丈夫です。これを読み終わったらそのまま合流しますから。時間がもったいないでしょう?」

はそう言って開いた本に視線を落とした。

そして、30分もしないうちに、「あら、この人知ってますよ」彼女が発言したのだ。


彼女が合流した時間の早さに驚いたが、気を取り直して「そうなの?」とリコが問う。

「2年のとき、黄瀬くんがマークされて中々得点できなかったんです。黄瀬くんは、あとで赤司くんにヤキをいれられてました」

「...はい?」

今何と言った??

リコが聞き返すが、それには答えず、

「バスケを始めたばかりだったとはいえ、黄瀬くんを止めた人です。たしか、津川くん。ドSなディフェンスをします」

と言う。

「ドSなディフェンス?」

「あとで黄瀬くんに散々愚痴を聞かされたんですけど。津川くん、人が嫌がる顔が大好きだっていい笑顔で言っていたそうです」

「...確かにドSだな」

日向が呟く。

「まあ、とにかく。時間もないことですから」

そう言ってはモニタ画面に集中した。


試合当日、控え室の空気は重かった。

先ほど、アップをしているところに正邦の1年、津川が絡んできた。

それはともかく、西と東の王者と2連戦ということで皆は少なからず緊張しているのだろう。

昨年、トリプルスコアで負けたという嫌な思い出もある。

「ねえねえ」とリコがのジャージの裾を引っ張る。

「はい?」

「空気が重いから、何とかしたいんだけど。協力してくれる?」

「えーと、はい」

(協力できることがあるなら、してもいいけど...)

しかし、リコの考えることだから何となくロクでもないことのように思えて仕方ない。

リコは皆に言う。

気負いすぎだから元気が出るようにひとつご褒美を考えた、と。

(嫌な予感...)

は心の中で盛大な溜息を吐いた。

「次の試合に勝ったら、私とがみんなのほっぺにチューしてあげる!どうだ!」

ウィンクして可愛らしい声でリコが言う。さらに「ウフッ」と笑って見せている。

(帝光時代にカントクがいなくてよかった...)

大騒ぎ確実だ。特に黄瀬と緑間が。

まあ、帝光中学バスケ部に所属していたキセキの世代は固くなるような可愛げなんてものは持ち合わせていなかったから、端からそんな提案はされることがないだろうが...

リコ提案のご褒美に皆は溜息を吐いた。

その反応にリコは甚く傷ついた。

「バカヤロー!はともかく、カントクの心遣いについては義理でも喜べよ!!」

日向が止めを刺す。

「何ではともかくなのよ!」

「や、は普通に女子だし」

「だったら私は何なのよ!てか、ガタガタ言わんとしゃきっとせんかボケー!去年の借りを返すんだろうが!1年分利子ついてえらい額になってんぞ、コラーーーー!!」

リコが切れた。

「どうどう」とが宥める。

((((その宥め方、有りか??))))

周囲はの反応に少し冷や冷やする。

「これでも飲んで落ち着いてください」と言って差し出したドリンクは、リコ好みに作っていたドリンクだ。

「うん、。みんな酷い...」

よしよしとがリコの頭を撫でる。

「わりーわりー、わかってるよ」

苦笑しながら日向が言う。

彼は言う。

昨年正邦との試合の後、バスケを嫌いになった。しかし、今はそれを乗り越えているし、寧ろ喜んでいる。昨年よりも強くなっているのが分かっているから。そして、あとは勝つだけだ、と。

日向はそう言って控え室を後にし、皆がそれに続いた。









桜風
12.6.24


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