| (うーわー...へったくそ) 緑間を探してホールまでやってくると彼の怒声が聞こえた。 自分にとって珍しくない。ただ、それが向けられている相手を意外には思った。 緑間の想い人で、という他校のちょっと変わった子だ。 嫌いではない。 クラスメイトならそこそこ仲良しが出来そうな気もするが、残念ながらクラスメイトでないため、そこまで仲良しではない。 それなりに悪乗りに付き合ってくれる子だが、正直あまり好きではない。 けれども、相棒の恋は応援している。 「なぜなら面白そうだから」といえば確実に怒られるが、本当に面白いのだ。 不器用な人間が頑張ってるのは不恰好で、まっすぐで、見ていて飽きない。 今回も、楽しく覗き見をしていたのが... 階段の陰に隠れて緑間をやり過ごした高尾はに視線を向けた。 こちらからはそこそこ見えるが、彼女のほうからは見づらい位置。 彼女はひゅんと缶を投げてゴミ箱に入れた。 (え、アレで入るとか...) 缶とほぼ同じ大きさの穴しか空いていないゴミ箱に彼女は投げて缶をそこに入れた。 そして彼女は立ち上がり、歩きにくそうにしながらエレベータに向かった。 「捨てちゃおうか」 かすかに聞こえた彼女の呟きは、空耳かと疑うほどの声音で。 でも、届いてしまった声に高尾は首を傾げた。 (何を捨てんの?まさか!真ちゃんへの恋心...!......ないな) 自分の思考を否定した高尾は、エレベーターのドアが閉まるのを確認して階段を上がっていく。 「どこに行っていたのだよ」 部屋に戻ると緑間が声をかけてきた。 さすがに選手の人数は多く、予算的な問題もあり一人部屋にはしてもらえなかった。 「んー、ちょっと電話」 「ここで掛けても良かったのだよ。さきほど、部屋を空けただろう」 「いやいや、オレが..ね?」 適当に誤魔化すと 「そうか」 と緑間が納得する。 この素直さは美徳でもあり、残念な箇所でもある。 もう少しずるくて良いと思う。 「真ちゃんは?」 「は?」 「真ちゃん、オレが部屋を出る前にいなくなったじゃん」 「...おしるこを飲みに行っていたのだよ」 「ふーん」 高尾は適当に相槌を打って、ベッドに寝転んだ。 「んじゃ、オレはもう寝るわ」 「...珍しく早寝なのだな」 俄かに驚いたように緑間が声を漏らした。 「だって、電気つけっぱだと真ちゃんうるさいじゃん」 そう言って布団を被る。 緑間はこれからストレッチが始まるのだ。 (何捨てたんだろ...) 案外気になっている。 翌朝、朝食のために食堂に行くとが桃井と共に朝食を摂っている姿が目に入る。 緑間は思わず視線を逸らした。 罪悪感が胸に広がる。 それを見た高尾はそっと溜息をつく。 緑間は悪くない。悪いのは、だと彼は思っている。 確かに、高尾は緑間の親友で相棒なので彼に偏った見方になることもあるだろう。 だが、やっぱり彼女は無神経だと思う。 自分の行動で相手がどう思うか。それがどうにもわからないようだ。 朝食のトレイを取って振り返る。 の目の前は実渕が占拠していた。 実渕は彼女を指差して険しい表情をしている。昨日のお説教かもしれない。 緑間はその光景から逃げるように視線を滑らし、別の空いている席を見つけてそこに向かった。 「そういや...」 のそばに『キセキの世代』と呼ばれている彼女の友人達がひとりもいない。 皆、別の場所で食事を摂っている。 (何でだ...?) 高尾は首を傾げ、相棒の座っているテーブルに向かって足を向けた。 |
桜風
13.1.16
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