| 桃井の相談を受けて黄瀬は苦笑した。 (あー、黒子っちが...) 「それで、腹たって..のほっぺ叩いちゃった」 「あ、ビンタっスかー...」 は相当堪えただろう。 「ちゃんにとって、相当な試練だったんスねー」 黄瀬が言う。 「どういうこと?」 「ちゃんは、どうでもいい人は本当にどうでも良いって言う子だと思うんスよね」 「でしょうね」 桃井が頷く。 「けど、どうでも良くない人間にはどう接していいか、わかんないんじゃないスか?」 「え?」 桃井が目を丸くした。距離の取り方が凄く上手だと思っていたのに。 それを黄瀬に言うと 「たぶん、当たり障りのない距離なんじゃないスか?」 と言われて、そうかもと思った。 「きーちゃん凄いね!」 「そりゃ、オレはその距離をぐっと縮めようと奮闘していたっスからね」 (あ...) 気付いた黄瀬は再び苦く笑う。過去のことになってしまっている。 「まあ、まずは。ちゃんに、何が桃っちを怒らせたか教えてあげなきゃっスね」 「ごめんね、きーちゃん」 「いいっスよ。オレ、女の子へのお返しはあんまりっスけど、桃っちとちゃんへのお返しはちゃんをするっスよ」 「お返し?」 「中学の頃からずっとお世話になってるっス」 そう言って黄瀬が笑う。 そして伸びをした。 「桃っち」 「なに?」 「仲直りするにしても、たぶん、ちゃん中々切り出せないと思うスから、そこは、桃っちがリードして仲直りするんスよ」 イタズラっぽく笑って黄瀬が言った。 「...うん」 「女の子達は、仲が良いに越したことはないっスからね。女の子達がギスギスしてたら、オレら男子はどうしていいかわかんないんスよ?」 黄瀬の言葉に桃井はコクリと頷いた。 桃井のそれを見て黄瀬は歩き出す。 (さ、フラレに行くかー) それが彼女の笑顔に繋がるなら、それで良いと思った。 「ちゃん」 ビクリと彼女は肩を竦めた。 部屋の前でウロウロしていたのだ。 桃井が怒った理由がわからない。だから、謝れない。 けど、部屋に戻りたいし... そんなことでグルグルと考え、部屋の前から動けなくなっていたのだ。 黄瀬は苦笑した。 「ちょっと、今いいっスか?」 「え?あ、うん...」 は頷く。 「少し寒いかもしれないっスけど、屋上に行こう」 黄瀬に促されては彼の後を着いて屋上に向かった。 「ね、ちゃん。桃っちと喧嘩したみたいっスね」 「へ?」 目を丸くした。 「いや、さっきの体育館の桃っち見てたら何かあったって誰でも気付くっスよ」 黄瀬は苦笑した。 彼女は体育館の中で「あったまきたー」と怒声を上げたのだ。その後に、を連れて行ったのだから、喧嘩をしたと思っても不思議ではない。 「うん、怒られた...」 シュンとなってが言う。 「何で怒られたっスか?」 「何か、わたしが悪かったみたい」 「何処が悪かったんスか?」 「...わかんない。わたし、そういうの下手だから」 俯いて言うを見て黄瀬は天を仰ぐ。 (...よしっ!) 腹は括った。 「さっき、桃っちに全部聞いたっス。黒子っちに告白されたんスね」 弾かれたようにが顔を上げた。 「桃っちから話を聞いて、オレはやっぱりちゃんが悪いと思ったっスよ」 「ど、どこが?」 縋るようにが言う。 「例えば..そうっスね。ちゃんが黒子っちに告白したとする。けど、黒子っちはオレがちゃんの事が好きなのを知っているから、オレに遠慮してちゃんのことを真剣に考えない。それをオレが知ったら、オレはたぶん、黒子っちを殴ってるっスね」 「何で?」 自分のしたことを立場を置き換えて言われた。 「だって、その場合オレは黒子っちにとって対等じゃない。かわいそうで、惨めだと思われてる気がするっスよ。勝負する価値すらないって言われているみたいっス」 はギュッと自分の服を握る。 「そして、その黒子っちの態度は、ちゃんにも失礼だから。ちゃんのまっすぐな気持ちを見ずに、考えずに勝手に譲ろうとしている。ダメならダメで、それは黒子っちの中で出さなきゃいけない答えっスよ?」 「...あ」 「ね?」 は俯く。 「桃っちは、そこに怒ったんス。ちゃん、こういうの苦手なのをすっかり忘れていたみたいスけどね」 黄瀬は苦く笑う。 「ちゃん」 彼女の目をまっすぐ見た。 「好きだったっス」 も黄瀬をまっすぐ見た。 「ありがとう。けど、ごめん」 はまっすぐ、自分の気持ちを返した。 黄瀬は笑う。 「ごめんね、今まで凄く曖昧で。黄瀬くんは、わたしにとって友達なの」 彼女の言葉に黄瀬は頷いた。 「いいんスよ。オレも、それが居心地良かったし。オレも、やっとケジメをつけれたっスよ。これまでたくさん困らせて、ごめん」 そして、に手を差し出して、握手を求めた。 はそれに応える。 「ちゃん、困ったことがあったら友達として相談してほしいっス。まあ、桃っちがいるから大丈夫かもしれないっスけどね」 「ううん、ありがとう」 「桃っち、たぶん部屋に戻ってるっスよ。ちゃんも部屋に戻ってみたらどうっスか?」 黄瀬が言うとは「ありがとう」と言って踵を返す。 の姿が見えなくなると、黄瀬はその場に座り込んだ。 「ちゃんと、ちゃんの中の『黄瀬くん』だったっスよね...」 俯いて呟いた。 「結構くるもんスね...」 でも、彼女が笑うなら、それでいい。 |
桜風
12.12.30
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