| 合宿が終わり、通常の日常が戻ってきた。しかし、それもひと月も続かない。次は大会本番が待っているのだ。 青峰が進級できたことを皆は驚き、勿論、監督すら驚いた。 とにかく、何とか高校2年生のスタートは切れた。 「あのさー、さつき」 各国の代表チームの映像を入手したと桃井が声をかけてきたので、彼女の家でその録画を見ていた。 「なに?」 桃井は、映像を見つつ気になったプレイをメモしながら、「がいたらなー」と時々呟いていた。 「オレ、好きなのか?」 「知らない」 素気無く返された。 「そーか」 青峰自身、答えを期待していなかったので桃井の素っ気無い態度も気にしていない様子だ。 「...好きなんじゃない」 溜息を吐いてそう答え、DVDを一時停止して桃井が視線を青峰に向けた。 「は?」 「だって、大ちゃん。中学の頃、にやたらちょっかい出してんだもん。大ちゃんは、好きな子を苛めるタイプ」 呆れたように桃井が言う。 正直、それもを好きになれなかった要因のひとつだった。何だか青峰を取られた気分だったのだ。 少し前の自分だったら青峰にこんな答えをしなかっただろう。少しヒステリックになって「私が知るわけ無いじゃない!」って答えたと思う。 (大人になったなー...) 自分で自分を褒めてみる。 「けど、オレの好みは巨乳だしなー」 「またそういうことを言う...」 呆れたように桃井が言った。 「てか、だって小さいわけじゃないんだからね」 そう言って後悔した。 「マジか?」 「...もう言わない。怒られる」 スリーサイズも勿論知っているが、それを口外したらきっと笑顔で「さつき?」と名を呼ばれる。 その笑顔は、あの紫原でさえ恐れるものだ。 「第一、大ちゃんって女の子は好きじゃないのに、はやたらと構いたがる。そういうことなんじゃないの?私はそう思ってた」 「そうか...てか、その言い方、誤解されそーでどうかと思うけど。まあ、女子はうるせーよな」 半年くらい前までは、1年でバスケ部のエースというだけで近寄ってくる女子も少なくなかった。 集団でやってきて、キャンキャン高い声で騒ぎ、ベタベタ触ってくる。 「うぜぇ、ブス」といえば、全員が揃って非難。五月蝿いと言ったらない。 勿論、桃井が大抵近くにいるから周囲が勝手に恋人だと思って敬遠してくれていたが、それでも構わないというツワモノもいた。 中学時代の黄瀬の苦労が何となく分かった。今更ほんのり同情する。 中学時代こそ、黄瀬と桃井がいたお陰で色々と面倒くさいのを回避できていた。 とりあえず、現在の青峰の場合は対応の悪さから随分とそういったミーハーな女子は減った。 だが、本当に面倒だった。 そういえば、そういう女子の中に桃井に匹敵するくらいの大きさのおっぱいの持ち主もいたが、どうにもお近づきになりたくない。 やはり、女はグラビアアイドルのマイちゃんに限る。 「で、どうして今更そんなこと聞くのよ」 桃井に問われて、先日の合宿の話をした。 彼女は見る見るうちに目を見開く。 「ちょ、なんてことを...!」 「や、だから拒否られて未遂だって」 「ばか!」 そう言ってリモコンを投げてきた。 「うお!あぶねーな!!には一応謝ったし、あいつ許したし」 避けた青峰は抗議する。 (...許すって聞いたっけ?) 謝って、それに対して苦笑された記憶はある。 「大ちゃんまで灰崎君と同じことしないでよ!」 「灰崎?なんでアイツの名前が出るんだよ...」 青峰の眉間に皺が寄った。 そして桃井から話を聞き終わり、「こんなことなら、痛めつけてやりゃ良かったな...」と呟く。 「つか、何でさつきはその話知ってんだよ。の性格上、ぜってー話さないだろう?」 「アレックスさんがカントクさんに..」 そこまで話して思い出した。 「い、今の聞かなかったことにして!!」 「...なんでだよ」 「これ、は内緒にしたがってたことだった」 怒りに任せて言ってしまった。 (あ、これか...) 年末、彼女の家に泊まった翌日、火神が口を滑らせそうになって周りが慌てていたことがあった。 おそらく、灰崎ともめていたときに黄瀬は火神たちの師匠に初めて会ったのだ。 (そりゃ、隠すわな...) 納得した。 あの時は、色々と面倒くさそうなことになりそうだったから、とっとと黒子に諦めてもらうためにに声をかけたが、そういう内容だったのだ。 「で、どうするの?」 桃井が問う。 「『どうするの?』」 「そう。どうするの?」 「何をだよ」 青峰の言葉に桃井はきょとんとした。 「大ちゃん、の事が好きなんでしょ?」 「らしいな」 「だから、その先。どうにかしたいんじゃないの?」 「んー、まあ」 珍しく歯切れの悪い幼馴染に首を傾げながら、先ほど投げつけたリモコンを回収してDVDの続きを観戦することにした。 |
桜風
13.1.12
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