| ゆっくりと赤司が近付いてくる。 は動けずその様子を見ていた。 「君。消灯時間は守らないと」 「赤司くんだって起きてるじゃない」 言い返すと彼は苦笑した。 「眠れなかったからね、仕方ないよ」 しれっと自分の理由を肯定する。 「さっき、玲央に言われた。君に謝るべきだと」 「謝られても、事実は消えないから別にいいよ」 が言う。 「...ねえ、君」 赤司はそう言って傍にあったブロックに腰を下ろした。 「僕にとって、帝光中時代の、『キセキの世代』と呼ばれる彼らはトクベツなんだ」 「うん、そうでしょうとも」 赤司と共にいた仲間だから。 「勿論、桃井や君もだ」 「ありがとう」 自分は殊更赤司自らその言葉を公言しているので、知らないとはいえない。 「けど、君のトクベツは彼らとは違う」 が赤司に視線を向けた。 腕を伸ばしてきた赤司がの腕を掴み、強く引いた。 「わっ!」 ガクンと膝が崩れて赤司の胸に抱きとめられる。 「君は、トクベツなんだ」 「赤司くん、危ないから...」 離れようとしたが、赤司の腕に力がこもり、逃げることが出来ない。 「痛っ、離して」 「嫌だ」 キッパリと拒絶された。 「何で...」 もがくの目の前に赤司の瞳がある。 「好きだから」 ドクンと心臓が鳴った。 「僕がこの世界で唯一、僕と対等でいても良いと思う人物は他の誰でもない。君だけだ」 「え、と...」 ここは何か言わなくてはならないはず。 そう思ったが言葉が出てこない。 ただ、先ほど浮かびそうで消えてしまったシルエットは、目の前の赤司と重なる気がした。 「僕のものになれ」 赤司の発した言葉には思わず噴出した。 目の前の赤司の瞳は心外だと訴える。 「ごめん」 「なぜ笑うんだ」 不満そうに口にする赤司の言葉にはまた笑う。 「君」 責める赤司の声音に苦笑しつつ、 「赤司くんって、いつもわたしに『君は僕のものだからね』って言ってるじゃない」 と返した。 赤司はきょとんとする。 その表情が意外にもあどけなくて、はまた笑った。 「つまり、君はとっくの昔に僕のものだと言うこと...」 赤司が導き出した答えに 「いいえ」 とが否定した。 「わたしは、わたしのもの」 赤司の眉間に皺が寄る。 もはや、支配者と言うよりはワガママな子供の表情だ。 「ねえ、赤司くん」 「なんだ」 拗ねた声音で言われてまた笑う。しかし、これ以上笑うと本当に機嫌を損ねて二度とご機嫌になってくれそうにないのでそろそろ我慢することにした。 「わたし、灰崎くんにキスされたことがあるの」 「...知っている」 物凄く不機嫌に赤司が返した。思い出しただけでも腹立たしいといったところなのだろう。 「昨日、赤司くんにキスされて、思い出した。凄く気持ち悪くなった」 「...すまない」 赤司が俯く。 「わたし、この先好きな人が出来たときにその人とキスをしてもやっぱりアレを思い出すのかなって、怖くなった」 が言うと赤司は視線を逸らす。 「ねえ、赤司くん」 名を呼ばれて顔を上げると、柔らかな唇を押し当てられた。 「うん...」 唇を離したが頷く。 「君?!」 赤司が困惑気味に彼女の名を呼ぶ。 「大丈夫だった」 「何が..かな」 平たく言うと、好きな子に唇を奪われてしまった赤司はちょっとショックが大きい。 「昨日みたいに嫌じゃなかった」 「君?」 「昨日、キスされたとき。赤司くんも灰崎くんみたいに好きでもないわたしにキスしたのかと思って、同じで、気持ち悪かったの」 「あいつと一緒にするな。僕はいつも君にトクベツだと言っていただろう」 心底不機嫌に赤司が言うが、 「だって、トクベツってどういう意味かわかんないもん。妹とか言われてたし」 と拗ねたようにが返す。 先ほど実渕に指摘されたそのままだ。 「君」 彼女が赤司を見上げる。 「好きだ」 そう言ってキスをする。 くすぐったそうに身をよじらせる彼女の唇を追い、何度も好きと言って、キスを繰り返す。 「君は僕のものだ」 「いいえ、わたしはわたしのものよ」 先ほどの問答が繰り返され、赤司は溜息を吐いた。 「全く、強情な恋人だ」 「あら、お互い様でしょ?」 そう言って少し挑発的に笑った。 膝の上に乗せられていたが降りて赤司が立ち上がる。 「痺れた?」 見上げるに「いや」と赤司が返す。 「意地っ張り」 「僕を誰だと思っているんだ」 そう返されては笑った。 「では、君。4月から洛「洛山に転校はしないから」 赤司の言葉を遮って彼女が言う。 「なぜ」 心底心外に赤司が声を上げた。 「ウチのお母さんの生活力のなさを知ってるでしょ?ムリ!コンビニエンスなストアにばっかりお世話になってたら体壊しちゃう」 不機嫌になった赤司には苦笑した。 「ま、遠距離恋愛なるものを満喫してみませんか?」 覗き込むようにが言うと 「好きなときにキスできないじゃないか」 と拗ねた赤司が唇を落とす。 「たまにだからいいこともあるかもよ?」 「あるもんか」 「第一、約束したじゃない。来年度一杯はわたしを洛山へスカウトしないって」 「...それは、恋人となっても有効なのか」 「当然です」 少し胸を張って言うに赤司は盛大な溜息を吐いて見せた。 「仕方ない。僕は本当、君に甘いね」 そういった赤司にが得意げに「ふふん」顎を上げたので隙の出来た首筋に唇を寄せる。 「あ、こら!」 「僕のものだ」 満足げに微笑んだ赤司は、少しだけいつもより子供のように見えた。 |
桜風
13.2.3
ブラウザバックでお戻りください