| ガララッと引き戸を開けて彼らは店の中に入った。 「あ、」と店の中にいた先客が声を漏らす。 なぜか海常の黄瀬と笠松がいた。 客の入りもまずまずの店に10人以上の団体で入店した誠凛高校バスケ部は、とりあえず詰められるだけ詰めて座り、あぶれた黒子と火神が海常の2人と相席となった。 「あれ、ちゃんは?」 「片づけをしてから合流するって言ってました。この店もさんの指定です。会場に来る前に目に入ってたそうです」 黒子がそう返す。 「何でちゃんひとり置いて来たんスか!あそこのベンチは、全く試合に出てないんスからちゃんの手伝いをすればいいのに!!」 ベンチを温めていた1年たちを指差して黄瀬が言うが 「うるせぇ!」 と目の前の笠松からのゲンコツを食らい、悶絶する。 「けど。じゃあ、ちゃんにはあとで会えるんスね」 黄瀬の声が弾む。気持ちの切り替えが早い。 そして、ふと火神を見た。 「火神っち」 キッと睨む黄瀬に火神は不機嫌に睨み返す。 「オレのちゃんに..」 黄瀬の言葉を遮るようにまたドアが開く。 かと思って振り返った黄瀬は固まった。 なぜか緑間と高尾の2名が店の入り口に立っている。 店内の、もっと言えばバスケ部員達の空気が固まった。 回れ右をした緑間だったが、外は台風かと思うような暴風雨だった。この中を外に出るのはちょっと... そんな感じに躊躇していると高尾が笠松に声を掛けて結局店に居座ることとなった。 正直、祝勝会ムードだったと気を使う誠凛バスケ部に高尾は気にしないと言う。 そして、笠松の抜けた後に緑間が座った。 ((((あの席パネェ!!))) 驚愕する周囲とは別に、ワクワクしている人物が2人。リコと高尾だ。 「...は先に帰ったのか」 店内にの姿が見えなくて緑間が言う。 「片づけをしてくるそうスよ」 「あいつらに手伝わせればいいのに」 緑間は振り返ってベンチを温めていた1年を睨んだ。 「さんは自分のペースで色々やりたい人ですから。他人がいたらあわせなきゃならないのがめんどいって言うんじゃないですか」 黒子の言葉にそれもそうだと緑間は頷いた。 そして、隣に座っている火神を睨んだ。 「何だよ...」 「第3Q終了後の、アレは何だ」 「そうっス!オレもそれが言いたかったっス!!」 黄瀬もその言葉に乗る。 先ほどの秀徳戦の第3Q終了後のことだ。 ベンチに帰ると火神が自分にボールを集めろと言った。 あまりにも熱くなっている火神を宥めるように日向が一度ボールを戻して、という話をしたが、このチームで秀徳と渡り合えるのは自分だけだから、今必要なのはチームプレイではなく自分が点を取ることだと言う。 黒子が火神を殴った。 バスケは1人でするものではない、と。 しかし、火神はみんなで仲良く頑張れば負けてもいいのか、負けたら意味がないと言う。 1人で勝っても意味がない。キセキの世代を倒すと言っていたのに同じ考えでどうすると黒子が返す。 結局負けたら意味がないと言って火神が黒子を殴り返した。 途端、背中にひんやりとしたものが滑り落ちる。 「何すんだ!」 そう言って振り返った。 裏拳を当てるような素振りを見せたが、それはひょいとかわされる。 そして火神は彼女と目があって息を飲んだ。 「クソみたいな面白くもない試合を見せないでくれる?1人で大量点?わたしはそんなチームをサポートするためにここにいるんじゃないのよ」 「な、なんだよ...」 気圧されて1歩後ずさる。 「1人で試合したきゃ1人でコートに戻ればいい。ストリートで1on1でもしてりゃ良い。あんたがしたいのはそれか?」 そう言って言葉を区切り、短く息を吐く。 「...バスケは、『5人』でするもんじゃないの?それに、ひとりで緑間くんに勝つには、その足だと無理でしょ」 指摘されて火神は顔を背けた。その通りだ。 その後、火神の頭も冷え、チームプレイで勝利することが出来た。 「や、氷を背中に入れるから...」 「ちゃんの反射神経がよかったからあれはスルーで終わったスけど。そうじゃなかったらクリーンヒットしてたじゃないスか!!」 「そうだ。俺のを傷つけようなんて許されることではないのだよ」 黄瀬の言葉に緑間が同意する。 しかし、緑間の言葉に引っかかった黄瀬が「緑間っち、今何て言ったスか?」と聞き返す。 「俺のだ」 「何を言ってんスか!ちゃんはオレの奥さんになる人っスよ!!」 そんな口論が始まる。 「、早く来ないかな」 ウキウキしながらリコが呟き、 「お前、鬼だよ」 と日向が溜息を吐く。 ガラッと引き戸が開いた。 「来た!」 弾んだ声でリコが呟く。 「カントクー。わたし、ずぶ濡れになったので帰ります。お店に迷惑掛けちゃいますのでー」 そう言ってドアを閉めようとしたが、閉まらない。 あれ?とドアの脇を見ると黄瀬が立っている。ドアを閉められないように彼が抑えていた。 「あ、黄瀬くん。久しぶりー」 「今日の試合、正邦から見てたんスよ」 「知ってるー」 「これを使え」 ぱさりと頭の上から何かが落ちてきた。 「ちょ、これ使った後とかそんなんじゃないスよね!」 黄瀬が声を上げて 「そんなわけないのだよ」 とムッとした様子で緑間が返す。 は緑間を見上げて「何でいるの?」と問う。 緑間越しに店内を見ても秀徳は高尾だけだ。 「運命なのだよ」 「や、真ちゃんが泣いてる間に先輩達に置いてかれてさ。んで、メシでもーって話をしてこの店に入ったわけ」 「高尾!!」 振り返って緑間が抗議の声を上げる。 「お嬢ちゃん、大丈夫だから入っといで。今このまま外を歩いても危ないだけだし」 店主がそういい、その言葉に甘えては店内に足を踏み入れた。 |
桜風
12.6.25
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