グラデーション 16





緑間のタオルを借りて髪を拭き、黒子のTシャツを借りてひとまず着替えた。

Tシャツが黒子なのは、サイズの問題だ。

これも緑間が貸すといったが、さすがに大きさに問題があると言うことで黒子が申し出てくれた。

「ごめんね。両方とも洗って返すから」

「ああ、構わないのだよ」

「いいですよ」

「オレも何か貸したい...」

黄瀬が呟く。

の出現で緑間と黄瀬に席を追い立てられた火神は、すごすごと座敷に合流した。

「何でこっちに来るのよ!」

リコに言われて、

「椅子がねぇし..です」

と火神がいう。


「緑間っち、火神っちの席にずれてほしいス」

「嫌なのだよ」

「黒子っち、席変わってほしいっス」

「嫌です」

黄瀬とは斜向かいとなり、一番遠い。

席を立ち、店主の元へと行って戻ったの手には小さなコテがある。

「緑間くん、ずれて」

に言われて渋々緑間は火神が座っていた席にずれた。

自ら自分の前に座ることを選んだと言うことに黄瀬は上機嫌となる。

「黄瀬くん、それちょっと頂戴ね。お腹すいちゃった」

そう言って既に焼けている黄瀬のもんじゃに手を伸ばす。

「いいっスよー。何か、デートみたいスね」

「無駄な敵を増やす気はないから安心してー」

笑顔ではそう返した。

「というか、俺達がいるのだよ」

緑間が抗議の声を上げるが

「ホント、お邪魔虫っスよね」

と黄瀬が言う。

さんは何を食べますか?」

そう言って黒子がメニューを渡す。

「な、ちょっと黒子っち。オレとちゃんの世界に割り込まないでほしいス!」

「そうだなー...」

メニューを開いてが悩み始める。

「俺はこれを頼んだ」

メニューを覗き込んで緑間が言う。

「ちょ、緑間っちも!」

が店主に向かって注文し、やがてそれが運ばれてくる。


お好み焼きを焼きながらが「そういえばさー」と緑間に顔を向けた。

「何なのだ?」

「オールレンジの次って何?」

「次?」

緑間が首を傾げる。

「うん。この間、腕を見せてもらったからたぶんレンジは伸びたなって思ったのよ。黒子くんにもそう言ったんだけどね。けど、オールレンジとは思ってなかった。オールレンジまで行ったら次は何を目指すのかなって」

「ああ、そういうことか。まだ先はあるのだよ」

「何だ、まだ針は振り切ってないのか」

「当然なのだよ」

何となく納得したようにが頷く。

「そういえば、黒子。あれは少し姑息だったのだよ」

「姑息?黒子っち何をしたんスか?」

「あれの提案はさんです」

黒子の言葉に緑間と黄瀬がを見る。

「あれって?」

「ドリンクの話を試合の前に黒子が...」

「ああ、うん。わたし、提案したわ。けど、全然効かなかったじゃん」

「何の話っスか?」

黄瀬一人が見えていない。黒子が説明してやる。試合前に、自分たちはの作ったドリンクを飲んで体力回復を図ったこととあれを飲んで負けたことがなかったと言う思い出話をしたのだ。験担ぎの緑間に効果的だろうとに言われていたので。

「あー、全然だったスね」

黄瀬が苦笑をする。

「ねー、作戦失敗」

そう言っては笑った。

「それはそうと。次は青峰だな。さっき連絡があった。あいつらも決勝リーグだと言っていたのだよ」

緑間が言う。

「仲が良いねー」

が言うと

「桃井がからかいの電話をしてきたのだよ」

と苦々しく言う。

「あの子、意外とデリカシーがないもんね」

が笑って言うが、緑間の視線は黒子に向いていた。

黒子も表情が硬い。

「青峰くんなら、ゴールデンウィークに会ったよ」

「え?何でっスか?」

「カントクが他所の学校のスパイをして来いって言ったから、ゴールデンウィークはずっと外を回ってたの。そしたら、偶然会って、お昼時だったから一緒にご飯食べた」

「な!何スか、その羨ましいシチュエーションは。デートみたいじゃないスか!!」

「黄瀬くん、ちょっとうるさい」

に指摘されて黄瀬はしょんぼりした。

「相変わらずだったか?」

「うん、練習は相変わらずサボってるみたい。桃井が何とか頑張ってるらしいけどね」

「そうか」と緑間は呟く。

「あと、赤司くんにも会った」

の言葉に「「「は?」」」と黒子、黄瀬、緑間が声を漏らす。

「赤司っちは、京都っスよね?」

「うん。入学式の日からわたし1週間ほど奈良・京都に遊びに行ってたから」

が言う。

「は?」

「だから、校内で見かけなかったんですね」

と黒子が納得した。

「そうだね。初めて登校した日が黒子くんに会った日だよ」

「それで、赤司も相変わらずだったのか?」

「転入手続きから逃げるのに凄く大変だった...」

力なくが笑う。お陰で京都観光は殆ど出来なかった。

「親が良く許したな。夏休みとかに一人旅なら分かるが...」

「親がいないからできたに決まってるじゃない。父は今海外赴任だし、母が10日の出張だったからチャンスとばかりにね」

笑ってが言う。

「あの子、自由すぎる」

あの席の会話に聞き耳を立てていたリコが呟く。

「これまでの発言でも、何となくその片鱗はあったけどな」

伊月が頷いた。









桜風
12.6.25


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