| 「そうだ。ちゃんのケー番教えて」 黄瀬がポケットから自分の携帯を取り出して言う。 「ない。人に四六時中拘束されるのがヤだから」 がそう返すと「そうスか」と黄瀬はやっぱりしょんぼりした。 「持ちなさいよ。部活の連絡事項を回すのに凄く不便なのよ。メールなら一斉送信の1回で済むのに」 座敷席からリコが口を挟む。 今は、黒子に連絡をして黒子経由で伝えているか、リコが自宅に電話をしているのだ。 そのとき、誰かの携帯のバイブレーションの音がかすかに聞こえてきた。 黄瀬は、今携帯を手に持っているので自分のではないことは分かる。 「緑間っち?」 「いや、違うようなのだよ」 「僕も違います」 それぞれが自分の携帯を確認して返事する。 近くだと思ったが、と黄瀬が座敷の方を見ようとしたその目の前で「はい」とが携帯を耳に当てていた。しかも今年の春に発売されたばかりの最新モデルのものだ。 ((((ないって言ったのに...!!))) 今までの会話が耳に入っていた全員が心の中で突っ込みを入れる。 「あ、そうなんだ。うん、わかった。じゃあ」 話が終わり、が電話を切って鞄の中に仕舞おうとした。 「ちょ、何で何事もなかったかのように携帯仕舞ってんのよ。持ってんじゃない」 リコが止めると振り返ったはきょとんとしていた。 「これは被扶養者としての子供の義務として持たされました」 「それは携帯でしょ?」 「そうですよ。被扶養者の義務とのことなので、甘んじて受けています」 「教えてよ、番号」 「嫌です」 ヒクリとリコの頬が引きつる。 「じゃあ、メアド教えてください」 黒子が言う。 「いいよ」 「ちょっと!何で黒子君はいいのよ!!」 リコの抗議の声に応えたのは黒子だった。 「さんは、自分の時間を拘束されるのが嫌なんです、きっと。メールは自分の好きなときに確認して返信すれば良いツールです」 「え、返信いるの?」 真顔でが返す。 「できれば...」 黒子が控えめに返した。 「そうか、気が向いたら早めに返すけど。気が向かなきゃ返さないよ、たぶん」 の言葉に黒子は頷き、携帯のメールアドレスの交換をする。 その後、当然黄瀬と緑間ともアドレスの交換をした。 ちなみに、黄瀬と緑間は自分の携帯の番号も教えてに登録させた。普段使わなくても取扱説明書を完読済なのでは迷うことなく登録作業を行っている。 「毎日メールするっスね!」 「迷惑だからやめてー」 黄瀬の言葉にが笑顔で返す。 「俺の生活サイクルを見直さねばならないのだよ」 何かを決心したように緑間も呟いた。 「...あのさ。番号を桃井に聞いたり、しちゃう?あの子、知ってるかもよ?」 リコに対して拒否を示したためか、黄瀬も緑間も番号のことは言わない。それが少し不思議だった。 彼女に聞けば個人情報がダダ漏れになるのは間違いない。 「え、聞かないスよ。ちゃん嫌なんでしょう?」 黄瀬の言葉にはコクリと頷いた。 「これで連絡は着く。わざわざが嫌がることをするまでも無いのだよ。必要になれば、教えてくれるだろうしな」 そう緑間が言う。 「あ、うん。ありがとう」 普段押し捲っている2人だが、不意に引いてみせる。 そんな時、は少しだけ困ってしまう。 雨も上がり、帰ることにした。 「またちゃんと離れ離れっスね」 そう言って黄瀬がを抱きしめる。 「俺のから離れるのだよ」 「けど、会えない時間が2人の愛を大きくするっス!」 「だから、離れるのだよ!」 緑間が黄瀬を引っ張る。 「何で邪魔するんスか!」 「邪魔なのはお前なのだよ!」 「はいはい。黄瀬くん、またね」 軽く手を振ると彼は嬉しそうに笑う。 「火神」 緑間が振り返って火神に声をかける。 東京にいるキセキの世代は緑間ともう1人、青峰だ。彼は火神と同じタイプのプレイヤーだといって忠告した。 良く分からないが、そいつも相当強いのだろう、と黒子を見る。 黒子は、青峰は強いが、彼のバスケは好きではないと少し沈んだ表情で口にした。 それを目にした黄瀬はを見る。彼女は苦笑を返してきた。 先に店を出る緑間に黒子がまた試合をしようというと彼は次は勝つと返す。 緑間は振り返ってを見た。 「またね」と彼女も手を振る。 軽く手を挙げた緑間はそのまま店を出て行った。 |
桜風
12.6.25
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