グラデーション 21





試合終了のブザーを耳にした青峰は相手チームのベンチをチラと見て舌打ちをした。

「...だから、ウチに来いっつってるのに」

(ウチに来たらそんな顔しなくて済むだろうが...!)

弱いチームが強いチームをやっつける。そんな大番狂わせが一番面白いとは言った。

しかし、決勝リーグ初戦の桐皇戦は、ダブルスコアでの敗退となった。

それでも、遅刻の青峰が出てくるまでは10点差だった。

彼が出てきて、誠凛は手も足も出なかった。

火神が負傷した足を庇ってプレイしたため、反対側の足に負担をかけ、途中ベンチに下がり、攻撃力がダウンした。

そして、黒子のバスケも通用せず、そのまま点差は開く一方で、それでもコートの中の選手、ベンチで応援している控えも最後まで諦めなかったが、圧倒的な力の差を数字という形で目の当たりにすることになった。


誠凛は創部2年目の若いチームで、一晩での修正は難しく、結局決勝リーグは昨年と同様に3敗を喫してI・Hの出場を逃した。



決勝リーグ最終戦の翌日、部活後にリコが次の目標を口にする。

全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会、通称ウィンターカップ。

誠凛高校バスケ部は、皆入部前に今年の目標を宣言している。それができなかったら、全裸で好きな子に告白という罰ゲームつきで。

「冬は寒いわよー、全裸」

リコがそういった。

「これでダメだったら、全裸やるぞマジであの女」

日向が部員達に向き直ってそういった。彼らは一様に青くなる。

もする?」

「わたし、自分が望んで入ったわけじゃないし。寧ろ、そんな罰ゲームが付いてきたらあんな条件すら出しません」

真顔で返した。

「それもそうか」

「あ、そうだ。日向君」

リコが日向に声を掛けた。皆がW・CもI・Hと同じくらいのレベルだろうと話していたところだった。

「あ?」

「もうすぐ帰ってくるわよ、鉄平が」

リコのその言葉に日向は顔を歪めた。

「どなたですか?」

リコに問うと「うちのエース」と簡潔に答えられた。

(あれ、火神くんをエースって言っちゃってた...訂正は、......ま、いっか)

肩を竦め、は片づけを始めた。


1週間、火神は部活に顔を見せなかった。

、知ってる?」

「学校には来てるみたいですね。でっかいの目にしますから」

「日向君、見学には来るようにって言ってるみたいなんだけどね」

「来たくないんじゃないですか?」

がすぐさま答える。

「...そんな我侭許されると思う?」

「気持ちの整理の仕方は人それぞれですよ。何も考えないようにして何かに打ち込む人、散々悩んで沈んで沈んで底まで降りてゆっくり上がってくる人。色々とタイプはあるんじゃないですか?」

「火神君が散々悩むタイプってこと?」

「そこは知りません」

「じゃあ、黒子君は?」

体育館の中で練習をしている黒子に視線を向けてリコが問う。

「黒子くんは..気持ちを切り捨てると思います」

「気持ちを?」

「はい」とが頷く。

(わたしと一緒だねー...ただ、黒子くんは、)

「気持ちの整理をつける前に、自分のできること、出来ないことを思い込みで分別して、ポイって」

「それって...」

「たぶん、今のバスケットスタイルもそうやって身に付けたんじゃないですか?出来ることだけを見て、無理かなってことを諦めてそのままできると思ったものだけを伸ばした結果が、今の黒子くん..じゃないでしょうか」

そう言ってリコを見た。

「じゃあ、黒子くんの成長は...難しいってことかしら」

「そこは頷けませんねー」

笑ってが言った。

「どういうこと?」

「カントクは、男子が羨ましいって思ったことないですか?」

「ん?」

首を傾げるリコに

「理屈とかそんなのポイって捨てて、何となく丸く収まるのが男子だと思うんですよねー。いい意味での、ばか」

が笑う。

「...うん、そこには同意するわ。羨ましい」

リコも苦笑して同意した。

「『仲間』がある限り、可能性ってのはあるんじゃないですか?」

はそう言って体育館を出て行った。

ちょっと恥ずかしいことを言ってしまった、と彼女は逃げ出したのだ。

そんなの気持ちに気付いたリコはクスリと笑う。

って結構可愛いところあるんだよねー」

そして、練習をしている部員達に視線を向ける。

まだ少し時間は掛かるかもしれないが、彼らならきっと乗り越えられる。

昨年だってそうだったのだ。

「...そういえば、あの子はどのタイプなのかしら?」

体育館の外に逃げていってしまったのタイプを聞き忘れてふと思う。

「まあ、大丈夫よね。あの子、切り替え早そうだし」

リコはそう呟き、選手への檄を飛ばした。









桜風
12.7.2


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