グラデーション 26





朝、日が昇った頃に目が覚めた。

枕元に置いていた携帯が電話の着信かメールの受信を告げるようにチカチカと光っている。

「何スか...」

昨日は今日のために早めに寝た。

携帯を手にとって、内容を確認すると一気に覚醒する。

電話の着信が数件、そしてメールの受信もあった。

その件数は複数で、家族や学校の友人、学校でメアドの交換をさせられたファンの子とか。

だが、黄瀬を覚醒させたのはただ一通のメールだった。

件名はそのまま『Re』がついだたけのもので、本文に一言だけ「おやすみー。明日、頑張ってー」とあった。

差出人を黄瀬は、『ちゃん』と登録している。

「わ、何スか...え、ちょっと...」

震える指でそのメールを『保護』にした。

にメアドを教えてもらってからは毎日『おはよう』と『おやすみ』のメールは欠かしたことがない。

だが、返事をもらえたのは数えるほどでおはようメールには「おはよー」だけで、おやすみメールには「おやすみー」と本当に、『面倒くさいけど、何となく義理でね』という雰囲気しか伝わってこないものしか貰ったことがない。

ちなみに、黄瀬はそんなメールすら保護してうっかり消してしまわないように気をつけている。

そして、昨日のおやすみメールで明日、つまり今日の準決勝は桐皇学園、つまり青峰と試合することになると書いてみた。

すると、いつもとは全然違う毛色の返信があった。

時間を見ておはようメールを送ろうかと少し躊躇った。少し時間が早い。

だが、メールの利点は都合の良い時に見られる、と言うことのはずなので黄瀬はいつものようにおはようメールを送った。


*********


合宿が終わり、帰宅すると思われた。

「カントク、別行動していいですか?」

の荷物は行きと同じくリコの父が車に積んで持って帰ってくれることになっているのでかなり身軽だ。

「別行動?何処行くの??」

「I・H会場です」

「ああ、今から行くから大丈夫よ」

さらっとリコが言う。

「「「え?!」」」

何も聞いていなかった部員達は声を上げた。

「今日の準々決勝、カード知ってるのね」

「黄瀬くんから昨晩メールがありましたので」

「へー」

リコが少し目を輝かせて相槌を打った。

「というか、彼は毎日メールをしてくるので」

の面倒くさそうな口調に、リコは彼女の顔を覗きこむ。

「...返事してあげてる?」

「たまに」

(数えるほどしかないけど...)

心の中で一言付けたす。

「それなら良いんだけど」

「カントクは、アレだけ楽しんでたのに。どういう風の吹き回しですか?」

呆れたようにが言う。

「うーん。あの子達、あまりに健気だからさ。お姉さん、ちょっと応援したくなって...」

「あははー。わたしにはいい迷惑なので、積極的な応援はやめてくださいねー」

適当にが返した。


バスに揺られて20分。

I・H会場に着いた。

丁度次の試合が目的の海常・桐皇戦だった。

、あれやってみて」

「カロリーの確保ができてません」

リコが隣に座ったにこっそりと声を掛けるとが申し訳なさそうに返す。

「...鉄平。さっき、飴買ってたよね」

「ん?ひとついるか?」

「一袋全部頂戴」

「...いいけど。太るぞ?」

にあげるの」

そう言って木吉から飴の袋をぶんどったリコはにそれを渡す。

「無理はしなくて良いから」

「実戦がいきなりキセキの世代でしかも、どう考えてもスピード勝負になるこのカードって、結構つらそーです」

そういいながらは目を瞑り、試合が始まるのを静かに待った。









桜風
12.7.11


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