グラデーション 27





前半終了のブザーが鳴る。

は深く息を吐いた。

目を瞑って前半を回想する。ちゃんと記録できているだろうか...

、大丈夫?」

「ちょっとお手洗い。ついでに外の空気を吸ってきます」

そう言っては席を外した。

「マネージャーに、何させてんだ?」

木吉が問う。はずっとコートから視線を外していなかった。その分、飴を鬼のように食べていた。既に3/4はなくなっていると思われる。

「女の子同士のヒ・ミ・ツ」

パチンとリコがウィンクした。

「星を飛ばしちゃダメだろう...」

以前どこかで言われた言葉を同じ人から言われた。

リコはとりあえずグッと言葉につまりプイとそっぽを向いた。


お手洗いを済ませて、は売店で飴を買い足していた。

一応、カロリーの補給ができるように準備しておこうと思ったのだ。

しかし、目がシパシパする。何度も瞬きを繰り返しながら

「キツイ...トンデモ同士の試合ってホントに...キセキの世代同士の試合はホントにヤダ」

唸るように呟き、外に出る扉を開けた。

風が気持ちいい。

「あ、」と声が聞こえて振り返るとそこには黄瀬がいた。

「え、控え室。あれ?!」

まさかこんなところで黄瀬に会うとは思わなかった。

ちゃんだ」

黄瀬は静かに微笑む。

「ギュってしていいスか?」

「そういうのってする前に聞くものでしょう?大丈夫??」

「それって、何に対しての『大丈夫』スか?」

「諸々」

いつもどおりのの言葉に黄瀬はどこか安心したように目を伏せる。

「オレ、今凄く楽しいっス。海常の皆とバスケするの、凄く楽しいス」

「そか」

「だから、まだ一緒にプレイしたいんス」

「...出来そうなの?」

が問う。黄瀬がこれからせんとしていることは分かっている。

青峰のコピー。

彼は青峰に憧れてバスケを始めたと聞いている。

憧れている以上、コピーは出来ない。勝つことは出来ない。青峰の強さに対する憧憬がある限り、彼の上には立てない。

しかし、黄瀬は「やるっス」と静かに言う。

「そっか。故障だけには気をつけてね」

「っス」

頷いた黄瀬はを放した。

ちゃん」

「なに?」

「オレが青峰っちに勝ったら、ご褒美が欲しいっス」

「同じベンチの人に言いなさいよ。今はわたしと黄瀬くんはベンチが違う」

呆れたようにが言う。

「...あの人たちに何のご褒美を貰えというんスか」

げんなりしたように黄瀬が言う。

「よしよしって頭を撫でてもらう..とか?」

「いやっス。ちゃんがいいっス。キスしてほしいっス」

「...却下。ねえ、休憩時間の残り、5分きってるよ」

が言う。

「ホントっスか。ちゃん、後半もちゃんとオレを応援するっスよ!」

「しないよ。見て情報収集するだけだよ」

にそう返されて黄瀬は苦笑してみせる。

「じゃあ、また」

そう言って黄瀬は駆けて行った。

「ん?あ、わたしもだ!!」

は慌てて駆け出した。


第3Qが始まる前に何とか着席できた。

「どこ行ってたの。トイレ、そんなに混んでた?」

「あ、いえ。売店にも行ったので」

そう言っては木吉にもらった飴と自分が先ほど購入した飴を膝の上に置く。

目を瞑って少しでも目を休ませる。

(これもリスクのひとつか...)

人間の身体機能の限界。

やはり、疲れ知らずの録画機器のほうが記録には向いているらしい。

だから、機械というのは発達するのだろう。人間の身体機能の限界を補助するために。

(だったら、時代の逆行をしようと思っているわたしのこれは、もしかして意味がないのかな...)

周囲が騒がしくなる。

「選手達、入ってきた」

隣に座るリコが教えてくれた。

ブザーが鳴り、は目を明け、スイッチを入れた。









桜風
12.7.11


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