グラデーション 30






(何で...)

空をゆっくり流れる雲を眺めながらは、疑問を口に出せずにぼうっとしていた。

今日は午後から雨だと今朝の天気予報で言っていた。

は今、ストリートバスケット大会の会場にいる。


朝はいつもどおりの時間に目を覚まして、洗濯をしながら朝食をつくり、食べ終わって携帯のメール(黄瀬と緑間から毎日届くおはようメール)を確認し、今日も返信ボタンを押す気になれず、「おはよう」と携帯に向かって返事をして時間があるのでブラウニーをつくり、焼いている間に洗濯物を干して、時間が余ったのでI・Hの結果をチェックした。

ブラウニーが焼けたので、合宿から今日まで録り溜めていたドラマでも消化しようと思っているとインターホンが鳴った。

早い時間だ。

町内会の回覧かな、と思いながら出てみると木吉が立っていた。

「木吉さん?」

「よし、今日は天気もいいし出かけよう」

(やばい、この人もあっち系の人かも...)

人の話を聞かずに自分のしたいことをまっすぐ貫く。

1人で貫くなら全く構わない。寧ろ「がんばれー」だ。

しかし、これは確実に巻き込むタイプの貫く人だ。

「間に合ってます」

新聞の勧誘を断る際の文句を口にしてドアを閉めようとした。

しかし、

「ん?お菓子を作っているのか?持って行ってもいいぞ、みんな喜ぶ。勿論、オレも」

(...カントクに電話して引き取ってもらおうかな)

遠い目をしたは諦めて溜息を吐いた。


木吉に連れて行かれたのはストリートバスケット大会の会場。

待ち合わせしているらしくて、待っていると1年がやってくる。

「先輩達じゃないんですか?」

が問うと

「河原が風邪でな。皆と約束しているのに、空けるわけにはいかないっていうから」

と木吉が言う。

なるほど...

、何でいるんだよ」

「こちらのお方にお聞きください」

火神の言葉には投げやりに答えた。

「お菓子も作ってくれてるぞー」

(自分で全部食べるつもりで作ったのに...)

は深く溜息を吐いた。

「マジか?!」

降旗が歓声を上げた。

「いいんですか?」

黒子が問う。

「いいよ。もう、何か..このノリになれてるから」

遠い目をしていうを黒子は気の毒そうに眺めた。

「エントリーしてくるからここで待ってろ」

そういわれてはとりあえず木陰に腰を下ろした。

先ほどネットでざっと確認したところによると、準決勝からキセキの世代は試合に出ていなかった。

青峰の欠場の理由は何となく想像がつく。

「黄瀬くんは大丈夫かな...」

優勝は、赤司が通っている洛山で、準優勝が青峰の桐皇。洛山と準決勝で当たったのは陽泉で紫原が行っている。対戦を避けたのだろう。

「...キセキの世代を頑張って獲得した各校のスカウトの皆さんの苦労って」

は呟く。

ふと、視界にスポーツバッグが目に入る。『陽泉』と書いてある。

驚いて顔を上げると知らない人だった。

I・Hは昨日終わったばかりだ。

なのに、『陽泉』と書いてあるスポーツバッグ。

(まあ、『陽泉』だからってバスケ部とは限らないよねー)

そう思って視線を外す。

<ちょっといいかな>

頭の上から声がして、それは『陽泉』のスポーツバッグの持ち主だった。

は首を傾げる。

「あ、英語ダメだった?」

「どちらでも。何ですか?」

<ちょっと迷っちゃって。教えてもらえないかな?>

<何処にいきたいんですか?>

会場入り口にあった地図を取り出してが問う。

話を聞いてここからそこへ行く道を教えた。しかし、彼は少し困った様子を見せている。

<一緒に行きましょうか?>

<いいのかい?君の仲間は探さないかい?>

<一報入れておきます>

そう言って携帯を取り出してメールする。

<行きましょう>

そう言っては彼と歩き出す。


彼は『氷室辰也』と名乗った。

<陽泉って、今年I・Hに出ましたよね?氷室さんはバスケ部の方ですよね?>

が問うと

<よく知ってるね。バスケに興味あるの?って、そうか。ここにいるから興味はあるよね>

と彼は笑う。

<表彰式があったでしょうから、昨日終わってそのまま今日ですか?>

<表彰式はサボったよ>

笑って彼が言う。

彼と話しながら頭の中のデータベースを検索する。『氷室辰也』という人物はヒットしない。

元々I・Hへの出場を決めていないので、全国のデータは取っていない。

ただ、英語でずっと話し続けているので火神のように帰国子女かもしれない。だったら、国内での公式戦のプレイは今回のI・H予選が最初だったと言うことになるだろう。

彼を目的地まで連れて行き、その場で別れた。

<ああ、君はどのチームで出るの?応援に行くよ>

氷室が言う。

<わたしも応援できているんです。チームセイリンの>

そう言っては彼らとの待ち合わせ場所に向かっていった。









桜風
12.7.16


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