| 暫くして「こんばんはー」と体育館入り口から声がした。 「何でお前んとこの体育館..って、さつき!」 「桃井、旦那が迎えに来たよー」 はそういいながら体育館の中に入る。青峰の腕をがっちり両手で掴んでいる。 「だ、旦那って...!」 「、ふざけんなよ!誰が旦那だ!!」 両方から抗議の声が上がるが、は気にせず、逃げようとする青峰をぐいぐいと引っ張るのに必死だ。 「手伝いましょうか?」 黒子が加わった。彼は青峰の背中を押す。 「テツ、ふざけんな!」 「あー、重い。筋肉、本気重い。ダイエットしたら?」 「できるか!つか、は何でさつきがここにいるって分かったんだよ」 抵抗するのを諦めた青峰が問う。 「さっき、電話で黒子くんに聞いたでしょ?カントクが超不機嫌か、って」 「だったら、何でさつきがいるのが分かるんだよ」 「ま、有体に言えば女のカン?」 そう言ってパチンとウィンクする。思わず青峰は言葉に詰まった。 「ねえ、。首の所どうしたの?青くなってる..て、それ歯型?もしかして、ムッ君?」 桃井が問う。 「歯型?!」 が悲鳴のような声を上げ、青峰の手を離して体育館内の鏡を見た。 黒子が小柄と言ってもより確実に大きい体をしている。首の付け根辺りを噛まれたからTシャツの首周りが少し広くなるから余裕で見えるようだ。 「痛いと思った...」 「本当にムッ君が来てたの?」 「うん。昼間にストバスの大会に行ってたの。そこで会ったんだけど紫原くん、I・H出なかったんだってね。赤司くんが出るなって言ったって」 「赤司君も決勝出てないし...」 桃井が呟く。 「躍起になってキセキの世代を獲得しようとしたスカウトの皆さんに、みんな本気で謝ればいいよ」 が言う。 青峰はそっぽを向いた。 「け、けど。青峰君は」 「肘の故障でしょう?黄瀬くんも微妙だろうね」 「そうだね...」 桃井が俯いた。 「つか、さつきも心配しすぎなんだよ!さっきも言ったけど、あれくらい怪我って言わねーんだよ」 「け、けど...!」 桃井が言葉に詰まる。何か言いたいが、これ以上怒らせるのはダメだと思っているようだ。さっきと同じことを繰り返すだけだと分かっている。 「痴話喧嘩は外でやってもらおうか、雨だけど。あと、青峰くんは、バスケしかないんだから。バスケが出来なくなったら、どうやって生きてくの」 茶々を入れるようにが言う。 「何だと...!!」 「勉強は嫌いでしょ?だったら、この先、スポーツで何とかやっていくしかなくて。しかもバスケ以外に興味がないなら、バスケができる体を大事にしなきゃだめでしょ。せっかく大きな才能を持っているんだし。バスケができなくなったらもったいない」 「分かった風に言うな」 低く唸るように青峰が言う。空気が張り詰める。 「チキンのお前に言われたくねぇよ」 「ちょっと、青峰君」 桃井が止めるが、青峰は完全に頭に血が上っている。手を上げないか周りが心配している状態だ。 「自分の行き止まりが怖いから全力が出せない?だから、お前はさつきに劣るんだよ。戦力にならないんだよ。そんなこと言ってる今がもう行き止まりだろうが。ビビッてお前らの大好きな仲良しこよしな『仲間』の足を引っ張ってりゃザマねぇな」 「青峰君、今のは撤回してください!」 黒子が鋭い声音で言う。 「ああ、黒子くん。いいよ、ホントだし」 が静かに言う。 「わたしは、本当に自己都合で諸々に手を抜いてたから」 「...」 リコが声を掛ける。 「桃井、わたしの傘貸してあげる。そこの旦那さんは相合傘を恥ずかしがるでしょうからね」 「え、けど。は...」 「ご存知の通り、我が家はここから徒歩圏内のご近所さんだから。ちょっと濡れてもすぐにシャワーを浴びれる立地条件。いいっしょ?」 「あ..」 言いすぎたと思った青峰が躊躇いがちに名を呼ぶ。 「またね」 はそう言って体育館を出ていった。 「青峰君」 リコが彼の名を呼ぶ。 「あの子が戦力になるかならないかは、ウチが決めることよ。そして、は充分な戦力よ。ウィンターカップでぶっ倒してあげるから、首を洗って待ってなさい!」 ビシッと指差して言った。 それに反応せずに青峰は体育館を後にする。 「あ、あの。ありがとうございました」 ペコリと頭を下げて桃井は青峰の背を追った。 |
桜風
12.7.21
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